第71話 「治療革命」
魔物の襲撃で多数の怪我人が出た
カズヤ達は神父の指示により教会へと受傷者を運んだがその光景に焦りを覚えた
神父(らしき人)と弟子達が必死に治癒魔法をかけているが人数的に(間に合わない)と感じた為だ
軽傷者は依頼主達が包帯などを巻いているので大丈夫だとは思うが
重傷者の5名の中には内臓破裂や手足が千切れている者もいる
失血死する程の出血は素人のカズヤが見てもかなり危険な状態だ
(何とか助けなきゃ!)
カズヤが行ったのは自身の「超回復能力」を発現させる為の道具を具現化する事だった
「神父さん、重傷者をこちらに!」
カズヤは重傷者を一纏めに集めさせると手に持った棒(空港等で見掛ける手持ちの金属探知機の形状)の様なモノで怪我人の体表にかざし始めた
(シュウゥゥゥ…)
カズヤが棒を翳した途端その部位は音を立てながら修復されていく
驚いた事に欠損した指や手足さえもまるで生えてきたかの様に再生されていった
神父達はその奇跡に呆然としそうになるが他の受傷者達の治療もしなくてはならない為に気を引き締め直して治療に専念する
「よし、これで大丈夫かな?」
カズヤは治療を終えホッとする
その光景を見ていた人達は治療もそっちのけで顎を外している
治療行為の手段までは何とか耐えられたがそのスピードに呆然とせざるを得なかったのだ
「あ、神父さんっ‼何休んでるんですかっ⁉早く治療しないと‼」
カズヤは慌てて軽傷者の元へと走り寄ると謎の棒で治療を始めた
軽傷者の傷は謎の棒の光を浴びてたちまち治っていく
少し深い裂傷程度はほんの一瞬で痕すら残らず消えていく
「か、神の御業だ…」
神父とその弟子はカズヤの所業に膝を折り手を組んで祈りを捧げる
それを見た依頼主達も同じく祈りだした
「皆さん!何やってるんですか‼早く他の人達を連れてきて下さい‼」
我に返った神父達はカズヤの元に受傷者を連れていった
討伐後小一時間程で全ての受傷者の治療が終了した
重傷者は流石に極度の貧血で絶対安静を余儀なくされていたが中~軽傷者達は既に健康体まで治療されていたのでカズヤに一斉にお礼を言い出した
「アンタのその魔法、初めて見たよ!」
「俺も死ぬ!と思ったのに傷1つないよ⁉どうやったんだ?」
「ありがたやありがたや…」
「神様…(?)」
緊張の糸が解れたのか教会の中は悲喜こもごも状態のカオスになっている
「(何でも屋)さん、本当にありがとうございました」
依頼主の女性達が改めて頭を下げる
「いえ、亡くなった方もいらっしゃるので…頭を上げて下さい」
「そんな…(何でも屋)さんが来てくれなかったら主人達は全員魔物に食べられていました。それに町への被害も確実に出ていた筈です。
それを防いで頂いただけでも感謝してもしきれません」
そうか、襲われていた人だけで被害が収まる可能性はなかったかも知れないのか…
想像よりも深刻だった事態にカズヤはゴクリと唾を呑み込んだ
「それにしても…貴方のその「馬堀海岸具」は素晴らしい逸品なのですね?」
神父は信仰の対象にでもしそうな視線をカズヤに向けて質問した
「あ⁉いや…これはその…そう!ある有名な魔導師様に頂いたモノなんです!」
カズヤは盛大なその場しのぎを放った。嘘がバレバレである
「…分かりました。その様な神の御業にも等しい能力を付与された品ですから言えない事情もある事でしょう。深くは問いません。今回は助けて頂き感謝致します」
神父さんは良い方向に誤解してくれてそう理解を示してくれた
(この道具、量産可能で材料費0とか言ったらショック死しそうだな…)
カズヤはその秘密を墓まで持っていく事を誓った




