第5話 「悩んでいても仕方ない」
。。。ん?
ぼんやり意識を取り戻すとソコは例の姿見の前だった
(夢じゃなかったんだ…)
さっきまでの悪夢はあまりにも現実離れしていて心の中で(夢であってくれ)と願ったが
その願いは儚くも散った様だ…
さっきは朝だと思ったが既に西日が差している
(丸1日気絶してたのか…)
のっそりと体を起こして姿見を見るが己の影でもう見えなくなっている
(明かり…明かりを探さなきゃ…)
夜になる前に明かりを探さないと闇に包まれてしまう
こんな姿?で真っ暗なんてまっぴらゴメンだ
とにかく明かりになる様なモノを探すと隣のキッチンで蝋燭を発見
マッチかライターを探すが見つからず昔取った杵柄で火起こしをしてようやく蝋燭の芯に火を灯した
埃っぽいソファーに腰掛け努めて冷静に思考を巡らすと
この廃屋の古さに先ず気付いた
部屋の中には電化製品の類いは一切なく、テーブルには燭台しか置いてなかった
(そういえばキッチンには釜戸しかなかったな…)
現代的なガスレンジ等も冷蔵庫もない
文化水準が低い地域だと仮定してもその様式は全て日本のモノではなかった
(悩んでいても埒があかないし今はここを根城にするしかないもんな…)
あれ?
土中から脱出して丸1日は経過しているのにそういえば腹も減っていない、
喉も渇いていない、それどころか眠気すら感じない(気絶はしたが)
生きてる人間なら当然訪れる体からの欲求が全て抜け落ちている事に気付いて
本当にゾンビになっちゃったんだなぁ…と静かに受け入れた
頬を伝う筈の涙すら枯れ果てている事を思い知らされて更に絶望を味わった