第20話 「良い人キャンペーン」
村人達との1stコンタクトから数日後、
人々は発見されたお宝を換金する事で結構な利益を得たらしい
欲に目が眩んだせいなのか村人達も渋々といった形ではあるがゾンビ(俺)を認めたようだ
子供達はそんな大人達の思惑など意に介さず連日我が家(旧廃屋)を訪ねては様々な質問をぶつけてきていた
「ねぇねぇ、ゾンビさん、ゾンビさんは人を襲わないの?」
「お母ちゃんはゾンビは腐ってるから臭いんだよって言ってたけど全然臭くないねっ!」
子供は実に正直だ
時にド直球過ぎて心に刺さる質問でもお構い無しに投げ掛けてくる
「う~ん…他のゾンビは分からないけどお兄さん(強調)はお腹が減らないから人なんか襲わないかな」
「へ、へぇ~…そうなんだ?「お兄さん」は腐ってないし臭いなんかしないだろ?」
実は自分がゾンビだと分かった段階で先ず対処したのは(臭い対策)だった
自分で気付かなくてももしかしたら臭うかも知れない
オヤジ臭ならただ避けられるだけだが腐敗臭ともなればこれは大問題だ
ソコで廃屋の修繕や墓地の整備の合間に近くに生えていた野草の中で良い香りがするモノから香水モドキを作成してつけていたのだ
親(村人)が我が子の無防備な接近に初めは明らかな敵意をもって連れ戻しに来ていたが
次第に俺という存在は無害なのだと実感し、今では珍獣でも見に来た感じで一緒にお茶を啜っている
食欲も一切ない俺としてはお茶や茶菓子も必要はないのだがこうして訪問してくれるお客様用に
無害&良い人アピールの一環として常に切らさない様にしていた
無収入なのにどこからお茶&茶菓子代が出てくるのか?と言った質問も寄せられたが
これには正直に
「このお茶も茶菓子も森の中で採取したモノから作っています」
と説明したところ主に主婦の方々から驚きの声と一緒にその材料と作り方を熱心に聞かれた
茶葉に関しては廃屋に残っていたモノから推測して森の中で似た植物を探して焙煎
茶菓子も森に自生している植物や木の実等をブレンドして調理していると話したら
その材料を良かったら分けてくれとお願いをされた
今までは村にくる商人や少し遠くの街迄買い出しに行っていたらしく
もし森でタダで手に入るのなら家計も大助かりだわ☆との事である
こうして俺は少しずつではあるが村民達に正式に認められていったのだった




