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第6話 最速?所詮カニだよぉ!

レビューいただけて上機嫌です!

有難い事です。本当にもう、有難い事です。

さて、今回は移動回ですね。うん。次の舞台に行く為の移動回です。…うん。


 誰だよ!最速こそ最強とか自信満々にほざいた奴よぉ!

 知ってるよ、俺だよ!つい数分前のなぁ!

 最速って言ってもカニの中での話さ、結局小さい体じゃあ限界があるのさ。


 どうしてそんな事言って嘆いてるのかって?

 そりゃお前…追われてるからだよぉお!




 茶色い毛皮、黒っぽい目元につぶらな瞳、流線型の細長いボディ、短い手足ながらも体を縦にしならせて走る可愛い獣。イタチにな!


 鳥はな、速いと言っても所詮空の生き物だ。滑空からのファーストアタックだけ気を付ければ良い。てか地面に衝突するリスクのが高いだろうな。そして陸での移動は遅い。今の俺であればそう簡単には捕まるまいて。

 でも獣はダメだろうがよぉー!陸特化の四足歩行は強すぎるだろうがよぉー!


 隠れてた岩の隙間に手ぇ突っ込んできてビビったわ!爪が当たりそうになってチビっ…チビりそうになったわ!チビって無いぞ、決してチビって無い!

 思わず岩陰から飛び出したら追い駆けっこ始まってこの有様ですよ。


 どうすんだよ…おい。確実にイタチの方が速いぞ…おいぃ。

 知ってるよ?俺知ってるよ?イタチって泳げるんだろ?川の水の中に逃げたら死亡フラグだってことくらいは知ってるよ!?


 スナガニが鋭角に走れるカニで良かった。直進しか出来なかったらもうとっくに詰んでる。スナガニに進化して良かった。他の進化候補のカニがどれだけ強かろうとこの局面は打破出来ない。逃げるしか無い。


 人間だった頃に動画配信サイトで見たノコギリガザミとかタスマニアオオガニとかの怪物級のカニなら対抗出来そうだけど、いきなりそんな超進化無理だ!てか俺の進化ルートにその2つは無い気がする。俺は戦うカニじゃねぇしな。

 イノシシに襲われた時に来てくれた姉妹が都合良くイタチ狩りに来てくれないかなぁ。来る訳無いよねぇ。知ってるよちくしょお!



 カニを追いかけ回すイタチ。安全圏から見たらさぞ微笑ましい光景だと思う。

 でも追われてるカニは必死ですからね!?


 鋭い爪でペシペシと押さえ込もうとしてきたり、鋭い牙で一撃必殺してこようとしてきたり。動物の捕食シーンって迫力あるよね。生き餌あげる動画とか人気あるよね。

 でもね、もう一回言わせて?追われてるカニは必死ですからね!?


 岩場に隠れる?もうそれしか無い?でも下手な所に逃げ込んだら詰みそうだ。イタチの力では退けれないサイズの岩を見極める必要がある。

 だと言うのに何故か走れば走るほど周りには小さい岩しか見かけなくなっていく。一寸法師よりも小さな俺から見ても岩と言うよりかは石に見えてくる。それでも俺よりは大きいけど、イタチ相手では心許ない。

 もしかして、けっこう下流まで来てる?いっそのこと砂なら潜れるだろうに。まぁ、急造で新しい巣穴掘ったってそんな浅い穴じゃ掘りおこされて詰みだろうけどね。



 毎回都合良く助かったりなんかしないんだ。流石に心が折れそうになる。

 木に登ってみる?イタチって木登り出来る?…まぁ、スナガニよりは木登り上手いだろうなぁ。イタチの被害で家の天井が腐ったりってのを聞いた事がある。きっと高所にも強い。



 なんだよもー、イタチ最強じゃねぇか。ストレスで脚が禿げそうになるわ!


 …ん?脚?脚か。やってみる価値はあるか?お腹が空いてるならくれてやれば良い。

 食べ応えがあって、逃走に支障をきたさない脚、それは鋏脚だ。

 何故か俺の右手の鋏が大きいんだよ。シオマネキ以外でも片方の鋏だけ大きかったりとかするんだな。このサイズならそれなりに目立つだろう。



 俺は思い切って右手の鋏脚を自ら切り離すと地面に置き去りにした。

 あぁ、大きい方を捨てる事になるとは、なんかショックだ。大きいだけで使いにくいけど、なんかショックだ。正直小さい方が便利だけど、なんかショックだ。

 でも小さい方を捨ててもイタチの気を引けない気がするし、致し方無い。



 案の定イタチは立ち止まると鋏の匂いを嗅いだ後、口に咥えて噛み砕いてしまった。

 さよなら、俺の鋏。そしてさよならだ、極悪イタチよ。


 俺は隙をついて川の中の岩陰に潜伏中。隠れた所はバレていないはず。その証拠にイタチは鼻をヒクヒクさせて周りの匂いを嗅ぎ始めるが諦めて上流の方へと帰っていった。

 匂いでバレるかもと思い水中に隠れたのは正解だったようだ。




 ふ、ふふ。勝利!勝利だ!人間の頭脳舐めんなよこのやろー!

 鋏脚を一本失ったのは痛いがどうたいには変えられん。やむ無しだ。


 さて、とは言ったものの、まだイタチ居るかもしれないし上流には帰れないな。しばらくは下流で暮らすか。どこか隠れられそうな場所を見つけて仮住まいを…ん?


 周りを見渡した時、視界の中に妙な生き物が映ってしまった。

 俺の10倍は有りそうな厳つい体躯。硬質でやや緑色がかったボディからは10本の手足。そのうちの2本は立派な鋏になっており、ふさふさとした黒っぽい毛が生えている。


 ………カニだああ!!どう見てもカニだあれ!

 格上!どう見ても格上!名前知らないけど絶対格上!

 マジかよ…ここってあのカニの縄張りだったりする?なんか藻をむしって噛ってるけど、俺も食われたりしちゃう系?

 今はこっちに興味無さげだけど、一戦交えたら俺なんて一捻りにされそうだ。



 ここは…ダメだな。明らかにアウェイ。むしろ死地。

 でも上流に帰るのも怖い。…このまま下って海、砂浜に出よう。砂浜ならスナガニのホームグラウンドだ。有利な生活圏のはず。

 良し!そうと決まれば善は急げだな。あのでっけぇカニこええし!



「カニの王者!」「銀色のやつ!」

…いや、何でも無いですよ?


ちなみに、最後に出てきた大きなカニはモクズガニと言います。

甲幅7~8cmくらいの大きなカニです。味噌が美味しいらしいですよ?食べたこと無いけど。

鋏に生えた毛が手袋のように見える事からミトンクラブなんて可愛い異名を持ちます。

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