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第4話 フェス限SSR

ヒロイン登場回!(笑)

なお作中に出てくるアイドルゲームはデレ○テっぽい何かであり直接関係はありません。

作者はイ○ディヴィと142を推してるキノコ担当ですが作中に出てくるアイドルゲームとは無関係です。

念を押しておかないと怖いのです(笑)


 俺は今、心の底から自分の状況を嘆いている。

 今までは生きる事に必死過ぎて大事な事を忘れていた。

 それを今、思いだしてしまったのだ。

 ああ、何で忘れていたのか、そして何故思い出してしまったのか。

 否、本当は分かっている。それは人間を見てしまったからだ。と言うより女の子を見てしまったからだ。

 こんな悲しい想いをするくらいなら忘れたままでいたかった。


 俺は今、大事な物が欠けてしまっている。

 それは俺が人間だった頃に肌身離さず持ち歩いていた物だ。


 そう……スマホだよ!

 いや、この際スマホである必要は無い、ネットに繋がるタブレット端末が欲しい!


 元の世界に居た頃からの日数を考えるとちょうど今開催中のはずなんだ。某アイドルゲームの…フェスが!フェス限アイドルが追加されているはずなんだ!

 気になって気になって仕方ない。いったい誰が追加されたんだ。

 ネットの予想では俺の担当アイドルの名前が上がっていた。気にならないはずが無い!



 岩陰に持ち込んだアンティークカップをスマホみたいにタップしてみる。

 …何も反応しない。いや分かってる。本当は分かってる。カップをタップしたって良い音が鳴るだけだって分かってる。カップをタップって語呂が良いな、ラップみたい。


 …はぁ、止めよう、虚しい。音なんて鳴らしてたら捕食者に見つかる。

 捕食される…か。人間だった頃は自分の命について考えた事って無かったな。

 食べれるのが当たり前で、食べられないのが当たり前。食材に感謝はしてたけど、本当に生き物として食材と向き合った事なんて無かった気がする。


 そうだよ、今の俺はサワガニなんだから迂闊な行動はよそう。

 一応さっきので位置がバレてないかだけ確認しとこう。



 岩陰から外の様子を慎重にうかがう。鳥も居ないしイノシシも居ない。他の脅威となりそうな生き物も特に見当たらなかった。

 今日も木漏れ日と川のせせらぎが心地良い。強いて言えば巻き貝が居たのが気になったくらいだ。何故こんな場所に巻き貝が?

 海が近くにあるのかもしれない。…だとしても貝がこんなとこまで移動してくるだろうか?

 貝殻を他の動物が運んで来た、とかのが現実的かもしれない。


 何だか気になってしまい、もう一度外の様子を確認してみる。

 ん?んん?あの巻き貝、さっきより近付いて来てないか?

 ……気にし過ぎ、かな?まぁ、流石に貝ごときに負けるとは思えないし、無視して岩陰に引っ込むとしましょう。


 と、見せかけてすかさず振り返ってみた。その早さたるやダルマさんが転んだの鬼なら友達に嫌われる程の超速フェイントなり。


「…」


「…」


 歩いてくる巻き貝と目が合いお互いに固まる。そう、目が有るのだ。目だけでは無い、二本の鋏脚に四本の歩脚。そのどれもが俺の脚よりも大きくて太い。

 あれは…ヤドカリ?何で陸に?あー、天然記念物にオカヤドカリっていうのが居た気がする。きっとあいつがそうなんだろう。

 っていうか絶対俺より強いよな?防御力も攻撃力も向こうのが上だよな?


 どうする?逃げるか?速さなら俺の方が上のはず、走れば普通に逃げれる。

 そう思い体を少し動かしたその時、ヤドカリは俺が動いた事に驚いたのか貝殻を深く被り直して隠れてしまった。


 ほわい?どう考えてもお前のが強いだろ?何故俺にビビるのだ?

 変なヤドカリだなと思い見つめていると向こうも貝殻から少しだけ顔を出してこっちを見てくる。敵意は無さそうだ。と言うか、何か仕草が可愛い。

 向こうの方が強そうなのに不思議と庇護欲をかきたてられるというか、隠れてオドオドしてる感じにどこか既視感を覚えるというか。


 …あ!某アイドルゲームの俺の担当アイドルに似てるんだ!あくまでもイメージだけど!

 うんうん、すぐに隠れたり逃げたりするくせにそれでも本当は頑張りたい感じが可愛いんだよなぁ。あー、思い出したらゲームやりたくなってきたー!

 そう思ったらあのヤドカリも可愛く見えてきてしまった、もう末期かもしれない。


 …ううむ、だとしたらあのヤドカリも何か頑張ろうとして俺に接近してきたのかな?

 ヤドカリがわざわざサワガニの俺に?…あ!アレか?


 俺は岩陰に置いておいたアンティークカップを持ってきてみた。

 ヤドカリは自分の宿となる殻を吟味し、執着心を持つらしい。このカップが気になってるに違いない。どうせ俺が持ってても意味は無い。あげてしまっても問題は無いな。


 カップをヤドカリの方へと差し出し、俺は岩陰へと帰る事にした。

 気に入ったなら勝手に持って行けば良い。人間から得た戦利品ではあるけど、何か可愛いヤドカリだったし、プレゼントしちゃっても悪い気はしない。



 それはそれとして、ヤドカリが宿を乗り換えるとこって気にならない?見てみたいと思うよね?どうやって乗り換えるのか、ヤドカリの中がどうなってるのか。

 刺激しないようにソーッと覗いてみましょうか。ふふふ。



 どうやらちょうどお着替え中みたいですね。

 ほうほう、カール気味の腹部に、四本の短い脚、なるほどなるほど、あれで宿となる殻を抱えてる訳ですな。

 花柄のカップを担いだ姿はさながら晴れ着姿の女の子。うんうん、なかなかに可愛いんじゃないでしょうかね?


 あ、またこっちに歩いて来て…って、何で巻き貝振り上げてるんですかね?

 その巻き貝を?俺の頭上に…ってうおーい!いってぇぇええ!

 叩きやがったなこのヤドカリめー!


 ん?何か…この反応って、着替えを覗かれた人間の女の子みたい…な。

 ん?んんんん?こいつもしかして俺と同じ?こいつは思わぬ激レアキャラ引き当てちゃったんじゃないですかね?



 どうやら向こうも俺がサワガニらしからぬ行動をしている事に興味を持っているご様子だし、これは間違い無い気がする。

 何とかして意思の疎通を図りたいが発声出来ない事はブラザーで経験済みだ、俺の口からは泡しか出ない。魔法のある世界なんだから念話くらいさせてほしい。


 喋れないなら…文字だな。地面に鋏で文字を書けないだろうか。…いや、地面は岩だったわ。文字なんて書けないわ。鋏が削れるだけだわ。

 それなら…文字数がだいぶ少なくなっちゃうけどコレしかないな。


 近くの小石を拾って並べ直して文字を作る。問題は何て書くか、だ。

 本当は「あなたは誰ですか?元人間ですか?今の状況について教えてください」とでも書きたい所だが、極力短くする必要があるだろう。小石が足りないし、何より疲れる。


 じゃあ…こうだな。短く簡潔に。


『  ダ  レ  ?  』



 よし、これで最低限の事は伝わるかな。少なくとも俺が元人間だと分かるはずだ。

 何なら握手でもしてみせようか、敵意が無い事も伝えなければならないしな。


 そう思い差し出した俺の手は、相手にへし折られて無惨にも地面に転がった。

 元々大した強度の無い鋏脚だ、オカヤドカリの頑丈な鋏に敵うはずも無い。



 う、うああああ!何だよこいつ、狂暴じゃねぇか!可愛いと思ったのに!元人間だろ?何で着替え覗いた時より握手求めた時の方がガチギレしてんの!?

 プレゼントまでしたのに、恩を仇で返すなんて、こいつ絶対性格悪いだろ!


 まぁ、何はともあれ逃げる以外の選択肢は無くなったわけだ。サワガニの速度には付いてこれまい!…って、付いてくる気配は無いな。

 元人間なら速度の差くらいは分かるだろうし、無駄な体力使うのを避けたんだな?…はぁ、やはり他の生き物に気を許すべきでは無い。


 残りの俺の足は鋏脚一本と歩脚七本、次の脱皮まで隠れてジッとしていよう。



実はけっこう重要な回です。

そのうちヤドカリさん視点もやりますのでその時に主人公達の状況がちょっと分かります。


関係無いですがサワガニの担当は目線の合わないあの子です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ふお?! いい感じかと思いきや、まさかのバイオレンス対応?!! ((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル [一言] カップをタップは技アリですね! (〃∇〃)
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