第28話 物語の真相は?
ロベリアが最初に語ったのは、自分達は地球という星の日本という島に住むただの人間だということ。もちろん見た目もこの世界の人達と大差は無いという事も付け足した。
嘘発見器として機能しているプルメリアが反応しない事でラフロイグも静かに話を聞いている。…が、その顔はやや苦々しい。
無理も無い、今まで人間を助ける為に魔物を殺してきた勇者だ。そんな自分が殺していたものもまた人間だったと言われれば思うところもあるだろう。
ラフロイグは自分の持つ真っ白い骨の剣を見つめたまま静かに息を吐く。
それを見て「なるほどな」と理解した。ラフロイグが身に付けている装備はおそらく魔物の骨を加工したものなのだろう。
どういった経緯があったのかは知らないが、魔物を憎む勇者が身に付けているのだから、まぁ…それなりのエピソードでもあったに違いない。
…俺には興味ねぇけどな。
次に語ったのは魔王は巨大なデブ猫の姿をしており、勇者に封印された振りをして異世界に、つまり俺たちの元いた世界に旅行に来ていたということ。
…あれか?俺が昼寝しそうになってた時にぼんやりと見えたあの猫の事か?
「間違いないようだな。そいつが食の魔王、ヤマネコだ。千年は解けない封印のはずだったんだがな。…そう言ったよな?リベット」
「…何?私のせいだと…言いたいのかしら?」
「…いや、言葉のあやだ。あの時はお互いに死力を尽くした。責める道理は無い」
「そう…ね。やれるだけの事はやれたはずだわ。私の計算が正しければ確かに千年は封じれるだけの魔道具だったわ。…建造型の大型魔道具、山猫軒にね」
「だが…封印出来ていなかったのは事実だ」
「山猫軒は魔王を封じる為だけに建築した魔道具。次元の狭間に建てられた魔道具よ。内側から出る事も、外側から開けてもらうのも不可能…の、はずだったのだけどね」
「ヤマネコは封印された振りをした、と言ったな。レジストされていた可能性は?」
「……否定は、出来ないわ。山猫軒を次元渡りの道具として使われたと考えれば異世界に移動していたのも頷けるもの」
「それなら…今の魔物たちは俺らが巻き込んだ被害者…なんじゃないのか?」
「いえ…山猫軒をレジスト出来ていたと過程するなら…初めからヤマネコには次元に関係する力があったと考えるべきよ。前回の魔物騒ぎの時、魔物達との意思疎通が出来なかったのがその裏付けよ。この世界の人間を魔物化させていたのなら…対話も可能だったはずだもの」
「前回の魔物達も異世界の人間だった…と?」
「ええ、おそらく…ね」
ラフロイグとリベットが会話に区切りを付けた後、ロベリアが次の情報を提供したのだが、正直…これは俺も知りたく無い事だった。
猫魔王は最初は食べ物を粗末にした人間たちに罰を与える…的なノリで話しかけてきたにも関わらず、こちらの世界に送られてきた生徒達は結果的には巨大で強靭なモンスターとして進化しており、元の人間だった頃よりも遥かに強い存在になってしまっているのだ。
それなら強い配下が欲しかったのか?と思うところなのだが、猫魔王は俺らを元の世界に返す方法は生徒たちによる同士討ちのバトルロワイヤルだと言ったらしい。
まぁ、実際には猫魔王に目を付けられた生徒一人を食い殺すだけで良い…という話ではあるようだが、それでも辻褄は合わない。
犯人の生徒が誰か分からない時点でそれはもうただの殺し合いなわけで、確実に数が減るし、上手く犯人を見つければ残りは元の世界に返すというのだ。
返してくれるってのが本当かどうかはさておき、返してしまうのであれば配下にもならない。これでは猫魔王は何がしたいのか分からない。
ただハッキリしてる事は一つ、元の世界に帰りたければクラスメイト達を殺して廻れ、という事だ。…俺に、そこまでして帰りたい理由はあっただろうか?
…家に帰りたい?
そんなのは当然だ。今思えば外敵に怯えなくて良い実家は正に桃源郷だと言える。それに…やはり家族には会いたい。せめて両親には俺が生きてる事くらいは伝えたい。
…ソシャゲがやりたい?
当たり前だろう。俺の心を震わすアイドルたちがスマホの中でプロデューサーの帰りを待っているんだ。俺がプロデュースしないでどうするんだ。
…彼女が欲しい?
…うむ……欲しいな。二次元で満たされてはいても…ねぇ?そこはほら…別腹だろぉ?ロベリア…本名はアヤメだっけ?元の世界に帰れたら付き合ってくれねぇかなぁ。
…友達に会いたい?
それも至極当然だ、昔から付き合いのあるあのイケメンの面も長らく目にしてないと寂しいものだ。…あれ?あいつも同じクラスだし、ここに来てるって事になるよな?
……生きてるかな、リョウ。
実家が厳しい家みたいだし、この世界に飛ばされて案外のびのびやってたりしてな。
はてさて、色々想いは馳せてみたものの、俺はどうするべきなんだろうな?
家…は、いずれ出ていくんだし、それが早まっただけだと割り切ろう。この世界でだって安住の地を見つけてカニライフを送る事は出来る。
…そう考えちゃう俺の適応力半端ないな、自分でびっくりだわ。
じゃあソシャゲ?いやいや、流石にクラスメイト殺してまでやりたくはないわ。
それなら彼女?ロベリア…は今ヤドカリってかヤシガニだしなぁ。俺の心は人間だし、流石に性的な目で見るのキツいけど…時間が解決してくれないだろうか?…って、その頃には心まで人間やめてそうで怖いわ。んー、でもまぁ、クラスメイト殺してまでは…なぁ。
そう考えると友達?いやぁ、それこそこっちの世界でも会えるかもしれんしな。
…んん?俺そこまで元の世界に帰る理由無くね?
あれだ、俺はスタンス変える必要無いわ。降り掛かる火の粉だけ払って生きていこう。
そして探すんだ、人間と関わらずに平和に生きていける安住の地を!
主人公神経図太いなぁ、太過ぎて羨ましい限りです。
はてさて、猫魔王はアレのオマージュでした。
著作権は期限切れのはずだし、大丈夫ですよね、ね。




