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第22話 スマイルストーカー

さぁ、新たな敵の登場です。

少々不穏な空気から始まりますよー。



 二人は一つミスを冒していた。

 筆談はもっと慎重に扱うべきだった。

 書けば残る、当たり前の事だ。

 消しておけば要らぬ争いも起きなかっただろう。


 筆談を読んだ者がどう思うか。

 その現場を目撃した者がいたとしたら、情報を書き足す事もあるだろう。

 至る所にその情報を書き記す事だってあるだろう。



 二人の男子を除き、クラスメイトは犯人を誤認している。

 その一人は真犯人の男子、そしてもう一人は事件当時に爆睡していた男子。

 その二人以外は皆が思っている。「犯人はあの根暗な女子だ」と。皆の共通認識では犯人は女子なのだ。決して男子では無い。

 ならば筆談を見ていた者はこう思うだろう。「あのヤドカリが犯人だ」と。


 いったい誰が筆談を盗み見していたのだろうか。

 目の良い甲殻類の二人にもバレる事無く…。



『ハンニン ← ヤドカリ』


 そんな薄っぺらい情報一つでも、行動に出る者は少なくない。

 安全な家に帰る為。家族に会う為。友達に会う為。恋人に会う為。

 一人のクラスメイトを食い殺すだけで、その全てが帰ってくる。たとえそのどれか一つであっても、本人にとってはかけがえのないものなのだから。




 ───────────────





 はてさてどうしたものか。

 ロベリアと一緒に川沿いを上流に向かってはいるのだが、川の中に明らかに異質な物が…いや、者が居る。というか付いて来る。

 あれは隠れているつもりなのだろうか、気付かれていないつもりなのだろうか。ロベリア並みのサイズの生き物、明らかに魔物だ。

 大き過ぎて川に収まり切れていない。


 色こそ濃いグレーで岩に同化してはいるものの、ずんぐりとしたボディに短い足、突起物の様なエラ、つぶらな瞳に大きな口。

 何より特徴的なのはその口だ。口角が上がりまるで笑っているように見える。あの愛されスマイルフェイスには覚えがあった。

 ペットショップで見た両生類、ウーパールーパーの顔にそっくりだ。

 とは言えウーパールーパーは真っ白だった様に思うし、あれはその系統の生き物から進化した魔物という事で合ってると思う。…サンショウウオ、かな?

 オオサンショウウオの魔物か?オオサンショウウオってあんな愛嬌のあるスマイルフェイスだったかなぁ。

 まぁ、奴も魔物だというのならサンショウウオ系統の生き物が色々と合わさっているのだろう。そして魔物だというのなら警戒が必要だ。

 いくらマヌケな追跡でマヌケな顔だったとしても危険な奴かもしれない。


 もちろんロベリアだってその巨大なサンショウウオには気付いている。俺の身体を頻繁に小突き「あれどうするの?」と言わんばかりに指示を仰いでくる。

 カニの視野なら視線を送るまでもなくサンショウウオを観察出来るため、あえて気付いていないていでサンショウウオの動きを観察しているのだが…どうするべきか。


 そもそもサンショウウオって強いの?そりゃあいつのサイズ考えたら強そうだけども。

 ううむ…どうしたものか。毎度の事ではあるけどロベリア置いて俺だけ逃げれば追手なんて簡単に撒けるんだけども。そういう事はもう言いっ子無しですかねぇ。

 自分に惚れてる…かもしれない女の子は大事にせなあかんのですよ。いやぁ、モテる男はツラいっすねぇ。…はぁ、これも毎度の事だけど人間の時に言いたいわ。


『ふひ…ひひひひ、わ…私も主の事、す…好きだぞ』


 おおう、ありがとなーテルマー。はぁ…だから人間の時に…まぁいいや。


『ふひぃ…ふひひ。で、あいつ…どうするんだぁ?』


 うむ、俺も水場に近付けないのは困るし、追い払おう。クラスメイトかもだしなるべく殺したくは無いけど、いざとなればやむ無しだ。

 流石に俺も散々命のやり取りしたからな、おそらくあいつだってそうだろう。相手の命を狙うなら自分も殺される覚悟くらいあるはずだ。

 とはいえクラスメイトだと思うと情も湧く、殺す覚悟はあっても殺したくはないし、和解で済むならそれに越した事は無い。


 和解かぁ…うーん、ここはカニらしくシオマネキでも見習って踊ってみせよう。

 某ピクシー映画でお馴染みのファインディングメモでもカニ踊ってたしな!ここは天下のネズミー式と洒落こもう。

 確かこう、鋏を上に掲げて…いや、片方タコ足だけども。

 で、左右にシャカシャカ動きながら徐々にサンショウウオに近付いて…。


 ヘイヘイヘイ ヘイヘイヘイィ

 ヘイヘイヘイ ヘイヘイヘイィ


 なんか挑発してるみたいにも見えるかもだが俺はピクシー映画を信じるぞぉ!

 いや、映画の内容よく覚えてないけども、これ本当に挑発してる時のやつだったかもしれないなんて今更思い出しかけてるけど気にしないぞぉ!


『あ…あるじぃ、サンショウウオも近付いてくるぞぉ』


 お、サンショウウオの奴良い笑顔じゃないか、これはもう一押しだな。


 ヘイヘイヘイ ヘイヘイヘイィ

 ヘイヘイヘイ ヘイヘイヘイィ


『あるじぃ…あいつの顔元々あんなんじゃなかったかぁ?』


 はうあ!そういえばそうだった!愛されウーパールーパーフェイスだったわ!

 そのにこやかマウスが大きく開いて…あ、歯がヤスリみたいで意外と凶悪だなぁ…これ俺狙ってんなぁ。って悠長にしてる場合じゃないわ!退避!退避ぃ!


 うおあ!捕食行動は意外と俊敏だ、タコ足噛まれた!

 って力つえぇぇ!離してくれねぇ!和解なんてしようとするんじゃなかった!くっそ、タコ足パージだ!自切…いや、これ鎧だったわ。

 鋏で自分のタコ鎧の触手を切り離してその場を離れ距離をとる。インファイトは危険だ、あいつ力強いぞ。


『ふひひ、あるじぃ…こうなると思ってたし弾は装填済みだぞぉ』


 ぅぅ…、寄生虫の方が判断能力高いってどういう事なの。

 まぁ良い!テルマ、反撃だ!


『ふひひひひ、ひぃやっはぁー!ふぁいあー!』



 テルマの掛け声とともに発射された弾丸はサンショウウオへと向かって飛んで行く。距離も近いし外す事は有り得ず、テルマの狙いには躊躇ちゅうちょが無い。

 カニ戦車である俺の砲塔から放たれた弾丸はサンショウウオのつぶらな瞳をいとも容易く貫いた。そう、いとも容易く。

 それもそのはず、サンショウウオの回避速度では避ける事も出来ず、俺の砲撃を防ぐほどの防御力も無い。しかも狙ったのは眼球だ、テルマもなかなかにエグい事をする。


 片目を潰されたサンショウウオは大きく怯み、のたうち回って痛がる。

 流石に罪悪感にかられたが、次の瞬間その罪悪感は恐怖感に塗り替えられてしまった。


 何故かって?…サンショウウオが俺を睨んだからだ。

 ………両方の瞳で。



はい、今回の敵はサンショウウオです。

メキシコサラマンダーを経由して進化した魔物になります。

ウーパールーパーの成体の事ですね。

実はメキシコサラマンダーにはヤバい能力があるのです。

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