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第19話 水底の旧支配者

永らくお待たせしました!

ブクマしてくださってる方々、ちゃんと書いておりますのでどうか寛大なお心でお待ちいただけると有難く存じます!

あ、いえ、私が早く書けば良いだけですよね、すみません。


 カマキリ戦以降少しだけ気になっている事がある。

 まぁ、気にした所で何も変わりはしないのだけど。


 はてさて…カオリ?そんな名前の女子がクラスに居たようなそうでないような?

 まぁ、どっちにしろ俺に女子との接点などあろうはずも無いので興味は無いし、名前が同じというだけでクラスメイトだと断定するほど俺は浅はかなカニでは無い。


 よって気にした所で何も変わりはしない。…の、だけども。

 それでもやはり少しだけ気になってしまうのは隣にロベリアが居るからだ。もしかしたらロベリアもクラスメイトなのでは?そう思うと少し緊張してしまう。

 何故かって?そりゃお前、あれだよ。…ロベリアはどう考えても俺に固執してるだろ?つまり…俺に惚れてるかもしれないクラスの女子かもって事だろ?

 くふ、くふふふふ。もしかして春?春来ちゃった?初彼女かこれ?

 そう思うと巨大なヤシガニの化け物であるロベリアもちょっと可愛く……あー、うん、ギロチンみたいな鋏見てたら急に冷静になってきた。…こえぇわ。



 やっぱりデカい奴は強いんだよなぁ、質量イズジャスティスだわ。

 最強の動物とか調べた事あるけど、陸はアフリカゾウで海はシロナガスクジラって書いてあったもん。デカいイコール最強だわ。

 デカければ毒なんかも効きづらいしな。そう考えると巨大化繰り返して進化した奴が一番強いんじゃねぇのかな?

 ロベリアだってただでさえ巨大なヤシガニがアホみたいなサイズになってる訳だし。そりゃ強いわ、強者だわ。

 それに引き換えスピードと装備を得た俺の進化は失敗だったんじゃ?快速カニ戦車だひゃっほーう!とか思ってたけど、これ弱いんじゃ?

 …いや、でも俺は別に争いたい訳じゃないしな。逃げ足速くて遠くから砲撃で牽制出来るのは俺好みだ、問題無しさ。



 …なんて、思ってたんだけどね。これから起こる惨事はそんな甘い考えでは乗り切れない出来事となる。強くならないと、生き残れない。



 ……… …… …

 …… …

 …



 森の木々の隙間から潮の匂いが吹き付けた事で海が近い事を理解した。そして程なくして海岸が広がり、太陽の光を反射した大海原がキラキラと輝きを放つ。


 海岸はスナガニ時代にお世話になったホームだが正直怖い想いをしてばかりだった気がする。鳥に襲われ、人間の女の子に連れ去られ、そして森を抜けてあの村に着いた。

 今はその道を戻りこうして海岸へと舞い戻った訳だが、カニとヤドカリのコンビとしては正しい棲息地だと言えるのではないだろうか?

 昔は恐怖の対象だったはずの海鳥も今の俺には近寄ろうとすらしない。…まぁ、隣にロベリアいるしな、近寄ろうとする生き物なんておるまいよ。



 これなら海岸に拠点を置くのも有りかもしれない、なんて思いながら砂浜を歩いていた時、そんな考えは自分自身に否定されるような出来事が起きてしまった。


 海岸沿いを飛んでいた海鳥が岩礁地帯で旋回し高度を下げていく。おそらく岩に着地してそこに棲息する生き物でも捕まえて食べようという魂胆だったのだろう。

 しかしその海鳥が着陸する事は無かった。空中にて捕らえられ、海へと引き摺り込まれて消えてしまったのだ。いったい何に捕まったのか?

 俺の記憶が確かなら、海鳥を捕まえたソレは岩礁地帯にあった岩の一部だったように思う。海側に位置し、半分海に沈んだような何の変哲もない岩だ。

 その岩が突然波打つように柔らかく動き、海面から長大なムチの様なものが飛び出たかと思うと素早く海鳥を捕えてしまったのだ。


 そいつの正体はすぐに理解した。岩に擬態し、長い触手を操る海の悪魔。そう…タコだ。その中でも有名所であるミズダコに非常に酷似していた。

 ただ明らかに違うのはそのサイズ、先程見せた触手だけでもロベリアの全長を超える長さであった事は明白だ。

 6…7…いや、下手したら触手一本だけで10メートルはあるのかもしれない。確か大型のタコの場合触手では無く腕って呼ぶんだったかな。まぁ、今はどうでもいいか。

 巨大化を繰り返して進化した魔物にしたってデカ過ぎだ。もしかしたら成長してサイズアップした個体ではなかろうか。

 自然界のダイオウイカを上回るサイズのミズダコ、それは伝説上のクラーケンを思わせる。正にモンスターと呼ぶに相応しい海の悪魔だ。



 その大ミズダコは海鳥を海中へと引き込んだ後、自らも海中へと姿を消した。

 だがあんな大きなタコが鳥一羽で満足するはずも無いだろう。タコの好物と言えば甲殻類だ、そして甲殻類と言えば。

 …はい!俺ですよね!いや、俺だけじゃなくロベリアだってヤバい。あの体格差じゃ流石のロベリアもパワー負けするに決まっている。


 見逃してくれるとは考え辛い、ここは逃げるが勝ちというやつだ。幸いにもタコは海の生き物、陸での活動は俺達に分がある。内陸に逃げれば追ってはこまい。

 そう思い海岸から離脱した俺の考えは正しかった。俺達が居た近くの海面が隆起し、海坊主かと見間違う程の巨大なタコの頭部が現れたかと思うと、長大なタコの触手が砂浜に叩き付けられた。


 危ない危ない…あと一瞬判断が遅れていたら捕まっていたなこれ。

 …うん?俺の足の速さで間に合ったって事は?


 ………ロベリアァァァァア!?

 うおおおおい!ロベリア捕まっとるがな!

 昔の偉い人が言ってたけど、厚い皮膚より速い足って本当なんだなぁおい。

 機動力大事!攻撃力よりも防御力よりもやっぱ機動力だよ!


 なんて言ってる場合では無い、大ダコの触手に捕まったロベリアは被っていた民家の屋根製のヤドを粉砕され、その下の甲殻を締め付けられてギチギチと音を立てている。

 それでも流石の防御力と言うべきか、ロベリアの甲殻は触手が巻き付いた程度では割れる事は無かった。懸命けんめいに鋏を振り回し何とかして触手を掴もうとしている。


 しかし程なくしてロベリアは鋏での反撃を諦めて砂浜に鋏脚を突き刺した。

 大ダコがロベリアを海中に引きずり込もうとしているようだ。タコのクチバシは甲殻類や貝類を破壊する必殺の凶器、海中では勝ち目が無い。

 ロベリアもそれだけは阻止しようと必死に地面に縋り付く。



 …俺はどうするべきなんだ?ロベリアを見捨てれば俺だけは安全に逃げれる。元々ロベリアとは別れるつもりだったじゃないか、今ならタコからもロベリアからも逃げれる。

 うん、今ベストタイミングなんじゃね?逃げて、逃げて、逃げ隠れてまたスローライフなカニ生活に戻っちゃっても良いんじゃね?


 …良い…よね?…なぁ、テルマ、聴こえてるか?おまえはどう思う?


『あ…あるじぃ?わ…私は…寄生虫であり…主の…眷族だから…判断は…』


 そう…か。俺は…どうしたら良いのかなぁ。


『で…でも…ふひ、ふひひひひひひ!照準は合わせといたぜぇ!奴の眉間によぉ!ひゃぁっはぁあー!おあつらえ向きに硬芯徹甲弾なんてありやがるじゃねぇかぁ!』


 ふ、ふふ、ふふふふふ、ふはははは!だよなぁ!やっぱりそうだよなぁ!俺に惚れてるかもしれない女子の前だぜぇ!?格好付けなきゃ男じゃねぇわなぁ!


『そうだぜぇ!それでこそ私の惚れ込んだ主様よぉ!』


 カオリの硬芯徹甲弾、装填!砲手はテルマに任せた!俺より命中率良いだろ!


『あいあいさー!任せろあるじぃ!』


 3……2……1……。


『ふぁいあぁああ!!』



はい、今回の敵はタコさんです。

いやぁ、やはりカニの天敵といえばタコですからね!

次回、タコ戦です。

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― 新着の感想 ―
[一言] タコに喧嘩売るカニとか初めて見ました( ◜ᴗ◝) 勝てるんですかねぇ…
[一言] カニなのに…ヤドカリなのになぜか気になってしまうのです。 続きを期待\(^o^)/
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