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第17話 偽花の魔王

更新遅くて申し訳ないです。

タイトルで分かっちゃう人は今回の登場キャラが分かってしまうやもしれません。



 カニ戦車と化した俺はもうロベリアに助けてもらうような立場では無いだろう。

 ではどうするか?ロベリア置いて一人でどこか行っちゃうか?…否だ。流石にそこまで恩知らずでは無い。少なくとも恩は返してから去りたいものだ。


 え?何でロベリアから離れたいのかって?

 …いやぁ…怖いっしょ?純粋にさぁ…怖いっしょ?

 今は俺に好意みたいなの抱いてるみたいだけど、女心と秋の空ってやつですよ。

 心変わりしちゃったら俺なんて瞬殺されるでしょ。あの巨大な鋏で俺の鎧ごとグシャッと潰されてカニ味噌パラダイスですよ。



 さてさて、怖い想像は置いておいて、次にどこへ向かうか、だが。

 人里へ降りてみるか?なんて…ちょっとは考えてみたがやはり答えは一つだった。

 …人里へ降りるメリットが無い。むしろ離れるべきだ。


 人里へ降りても俺の元飼い主姉妹の安否確認くらいしか出来ない。流石に命の危険を冒してまで見に行くような間柄では無いのだ。

 それよりも熟練の騎士に遭遇してしまうほうが不味い。前回のような未熟者ばかりでは無いはずだ。近衛騎士的な猛者が居るかもしれない。



 騎士達が逃げていった方角とは反対に歩き出すとロベリアも俺の意思を理解してくれたようだ、俺の少し後ろを付いてくる。

 ロベリアは別に虐殺を好んでいる訳では無い、生きる為の狩り以外はしていない。人里に攻め込んでやろうなんていう気持ちは無いようだ。

 思えば初めて会った時からロベリアは臆病な気質だったように思う。あまり過度に怖がる事は無い…のかな?少々腫れ物扱いが過ぎただろうか。


 人里とは反対方向に森を抜けるということは位置関係的には海岸へ戻る形になる。

 以前は渡り鳥にボコボコにされたが…今の俺のサイズを考えれば襲ってくるような鳥はいないだろう。あの化け鳥…ナパームはしばらく動けないだろうしな。



 そうしてしばらく歩くと木々は疎らになり、広い草原の様な場所に出た。

 草花が生い茂り、陽光の射し込むそこはちょっとした植物公園を思わせる。…いや、流石に雑草多すぎるけど。それでも逞しく生えた花々の美しさはどの世界でも同じだ。

 中には人間の半分程の高さの草花も点在している。人間の半分程といえばちょうど俺と同じくらいの高さだ。背の高い草花は俺の世界にも多数あった。特に珍しくも無い。


 …なんて、巨大化して安心していた俺は警戒心が薄れていた。

 それでもソレに気付けたのはカニならではの視界の広さと危険察知の力によるものだろう。…気付かなければ死んでいたかもしれない。


 ソレは背の高い草だった。緑と白に色付けされた鮮やかな草で、幅の広い豊かな葉を付け、白をベースに黒と赤に染まった慎ましやかな花を高く掲げていた。二つに枝分かれした花弁を高く、高く掲げていた。


 その花弁の一つが突然動き出し、俺の目を狙って振り抜かれたのだ。

 悪意を持って振り抜かれたソレを察知し、咄嗟に身を躱して事なきを得ると急いでその草の傍から離脱した。

 スナガニの走力は小型生物最速、それを今の脚の長さで体現する俺の移動速度は全力で走れば瞬間移動したようにも見えるはず。

 人間が振るう剣程度なら振った軌道を見てからでも余裕で回避出来る自信がある。

 それでも、その花弁を回避出来たのは奇跡とも思える程にギリギリだった。


 花弁だと思われたソレにはノコギリ状の刃が付いており、鋭角で鋭く、硬質な鎌を思わせる。そんな鎌を二つ携え、植物に擬態して獲物を狩る生き物。

 一度認識すればもう間違えない、そこに居たのは紛れも無くカマキリだった。

 人間の半分もの高さを持つ巨大なカマキリ。間違いなく魔物だ。



 あっぶねぇなクソぉ!人間だったら冷や汗が滝の様に流れてるとこだぞ!カニだから出ねぇけどな!…って、前も言ったなこれ。

 さておき、いきなり目を狙ってきたって事は甲殻類の装甲を抜ける自信はねぇって事だな。そして甲殻類の弱点でもある目を狙うって事は知性と知識を持っているって事だ。

 つまり…奴も元人間に違いない!


 もー…何だよもー…、元人間同士もっと協力しようぜー。

 何かこー、元の世界に帰る方法とかよー、一緒に考えようぜー。

 こうして距離をとってしまえば俺が圧倒的に有利だから初撃躱した時点で俺の勝ちは確定してるだろ?諦めろよー。


 スピードでは俺のが上、体格ではロベリアのが上。

 このカマキリが俺らに勝つ為には機動力のある俺を先に潰す必要がある。

 カマキリは攻撃速度は速くても移動速度は並以下、ロベリアを振り切りつつ俺に攻撃をしかける様な走力は持ち合わせていないはず。



 …と、思ったのが二つ目の油断だったりする。


 気が付いたら…カマキリは俺の目の前に移動していた。

 飛んだわけでも無ければ跳んだわけでも無い。

 純粋に走ってきたのだ。…そうか、このカマキリも色んなカマキリの能力を持って進化しているんだ。足の早いカマキリなんて知らないけどな。


 移動速度は俺の方が圧倒的に早い。だが、攻撃速度はカマキリの方が圧倒的に速い。

 近付かれた時点でほぼ必中、一か八かまた避けるか?いや、目をガードした方がリスクが少ないはずだ。

 そう判断し、咄嗟に鋏脚を上げて目を守る。ボクサーのガードと同じポーズ。

 俺は早いだけじゃ無く硬い。甲殻の上に金属の鎧まで纏った鉄壁のカニだ。カマキリの攻撃なんて貫通しようはずも無い。


 しかしこれも悪手だった。

 カマキリの鎌は突き刺す為の物じゃない。カニの鋏と同じ、掴む為の物だ。

 カマキリは俺の鋏脚の関節を掴むとノコギリの様な刃で締め上げて切り落とそうとしてきた。関節が傷付き体液が垂れ落ちる。

 関節は甲殻が薄く、鎧の隙間でもある。関節が弱いのもカニの弱点だ。


 俺は進化の過程で力の強いカニを経由していない。腕力で振り払う事が出来ない。このままではガードの為の鋏脚を落とされる。

 不味い、そう思った瞬間カマキリは俺から離れて距離を取り直した。

 何故か?カマキリの背後に迫っていた力の権化、ロベリアから逃げる為だ。


 流石にロベリアとてそこまで遅いわけでは無い。取っ組み合いなんてしてたら追い付くのは当然の事だった。

 近接パワー型のロベリア、遠距離スピード型のベートカ。俺らけっこう良い組み合わせなんじゃないですかね?


 さぁ、仕切り直して後半戦といきますか!


まだ魔物も進化したばかりの者が多くてサイズSばかりですね。

小さい生き物に転生させたはずの生徒達を大きな魔物に進化させていく。猫魔王の思惑やいかに。


そして今回のカマキリもちゃんと実在するカマキリを混ぜて造られています。

特徴的なカマキリが2つ程入ってますね。1つは見た目、もう1つは足の早さ。

あ、ハナカマキリではありませんよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえば猫魔王さんでしたね、転生させたの() カニ戦車くんもどうなる事やら() カニ戦車とヤドカリってすごい組み合わせですねー。
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