第16話 BT-42
主人公の進化回です!脱雑魚ガニ!…に、なると良いですが。
食事シーンは悩みましたがガチグロはカットの方向にしました。
お、おうふ…。いや、流石に…これは。
ロ、ロベリアさん。…まだ心の準備が…ですねぇ…。
いやぁ!入んない!こんなの入んないぃ!!
流石に人間食べるのは抵抗があるのおぉぉぉおお!!
…え?何事かって?
生きていれば腹が減る。腹が減れば当然食べる。
そして仕留めた獲物も無駄にしたくない。
分かるよね?うちらが…っていうか、ロベリアが最近仕留めた獲物。
そう、人間だよぉ!騎士だよぉ!
硬い甲冑を剥いで中の肉食べるとか、ちょっとしたカニ感覚じゃん!
元人間のカニが甲冑着込んだ人間をカニ感覚で食べるとかもう意味不明過ぎてサイコパスなんですけど!?
何でロベリア普通に食べてんの!?そんで何で俺にお裾分けすんの!?ロベリアも元人間だよね!?何、サイコパスなの!?
…はぁー、はぁー、……ふぅー。
いや、分かる、分かるよ?むしろ食べない事の方が自然の摂理に反するし、仕留めた獲物に対しての冒涜行為だよね。それは…分かるんだけどさー。
『あるじぃ…』
おお、テルマか、どうしたん?
『にんげん…さいしゅうやどぬし……ふひ、ひひひ、おいし…そう』
お前もかい!てかウェステルマン肺吸虫の最終宿主って人間なのかよ!
『た…たべ…たべよう…よ。ふひ、ふひひひひ、はい、ハイ?…肺!…ふひひひひ、言えた、言えたよぉー、ひひひひひひひひ、肺が欲しいよぉー』
喋りが上手くなってきて嬉しいけど正直複雑だよ!怖いよ!
てか寄生虫だろ?死んだ人間でも良いのか?
『あ…ある…あるじぃー。それはそれ…これはこれ…だよぉ…』
人間を求めるのはもはや本能なのね。…俺も元人間なんだけどなぁ。
『それはそれ…これはこれ…なんだよぉー。…ひひひひ』
ん…んん!?あ、あれ?なんか人間が少し美味しそうに思えてきたぞ?何で急に?
『ひひ、ふひひ、きせ…きせいち…寄生虫…は、あるじに…えいきょ…影響?…をおよぼす…もの…だから、ひひ、ふひひひひひ、ごめんよぉ…あるじぃ』
いやお前のせいかぁい!!
俺が食べないとテルマも食べれないからな、意思を少し誘導されとるやんけ。
そうこうしているうちに食事を終えたロベリアが近付いて来る。そして俺の分の人間から腕を鎧ごと鋏で切り離して俺の口元に押し付けて来た。
だからカニ感覚かっつーの!別に食べにくくて躊躇してた訳じゃねーっつーの!いや、確かにある意味食べにくかったけども!
『あ…あぁぁああ…あるじいぃぃ』
分かったよ!食べるよ!何で俺に寄ってくる女こんなのばっかなんだよ!
───── ─── ── ─
食事中 見せられないよ☆
───── ─── ── ─
『ふひ、ひひ、ひひひ、ふひひひひ』
あ、なんか満足そう、よおござんしたねぇ。これはアレだな、テルマにとって人間は食料としてじゃなく…猫がマタタビ欲しがるのと似た様な現象だな。
俺は…なんかもう味なんて分からないくらい頭真っ白だわ。…うぇっぷ。
【摂取した魔力が現在の貴方の容量を超えました】
【一段階特殊成長します】
【サイズLに成長しました】
あ、はい。多分ほかっといてもそろそろ時間経過で成長してたと思うけどね。
【人間一人分の魔力を取り込みました】
【現在の貴方の小さな器では魔力を受け取り切れません】
【溢れた魔力を眷属が受け取りました】
『ふひひひ、あるじぃ、あるじぃー』
ほわ!?軽快に喋っとる!?
『い、今なら…何でもやれそおだよおぉー、ふひひひひひひ』
お、おう、それはまぁ、頼もしいことで。
『ふひ、ひひひひひひひ、ひぃゃっはぁああ!』
は、はうああ!?人間だった頃にやってた某アイドルゲームにこんなの居た気がするぅ!って、思いださせんなよぉ!スマホが恋しくなるだろうがぁ!
『ふひぃ!?…ご…ごめんよ、あるじぃ』
【進化条件を満たしました。下位の過程を統合して上位の魔物へ進化します】
え?これってもしかしてモンスター化!?
ってかこれ強制?カニのまま平和に暮らしたいんですけどぉ!?
うわぁ!体が光り始めたぁ!問答無用だこれぇ!
俺の足元に鈍く輝く魔法陣が出現した。普通のカニの時はただの丸いサークルだったのに、モンスター化ともなるとけっこう本格的なのが出てきた。
魔法陣に描かれていたのは、大昔の壁画を思わせるテイストの3つのカニの絵、サワガニ、スナガニ、オオホモラ。俺が今まで進化してきたカニだ。
それらの絵が混ざり合うようにグルグルと回転すると俺の体がより強く輝いた。
おおー!体が大きくなっていく!サイズ感的にはロベリアの3分の1って所かな。
高さはロベリアの半分くらいだけど、ロベリアは鋏合わせた全長がけっこうあるからなぁ。それでも俺だってけっこうな大きさだ。オオホモラが大型のカニだったおかげかも。
ふむふむ、それで?…お、身体の形状はサワガニベースだ!これでキモくない!もうキモいだなんて言わせない!赤と黒のボディは正にサワガニだ!愛されボディだ!
そしてこの黄褐色の頑丈な脚はスナガニの脚。走るのに特化したあの脚が帰ってきた!これで全力疾走出来る!走っても脚がもげたりはしないはずだ。
いやぁ、良いねぇ、この3対6本の歩脚でこの世界を縦横無尽に駆け回りたいねぇ。
……3対6本?いやいや、カニの歩脚って普通は4対8本だろ?
ま…さ…か?うわぁぁ!オオホモラ要素ここかぁ!後ろの脚が上に上がってるぅ!……って、あれ?上に上がった後2本ある脚が1本に纏まってませんかね?っていうか、これ脚じゃ無くない?戦車の砲塔みたいになってません?
【オオホモラ特性、道具装備による変種進化】
【上位進化時に所持していた道具を使用可能な状態で同化させ進化しました】
なんと!オオホモラ大当たりじゃないですか!これもうほとんど戦車ですよ!
しかもどうやらそれだけでは終わらないようだ。
カニの甲殻の上から金属の甲殻が徐々に構築されていく。騎士が着ていた鎧と同じ材質である事は見た目で何となく理解した。
本来のカニの装甲の上に銀色の鎧の装甲を纏った状態だ。銀というよりは灰色に近いくすんだ色だが、まぁ、ギラギラしてるよりは目立たなくて良い。
そうか、さっき食べて鎧の上に居座ってたからな。俺が所持しているって判定になったのか。背中には砲塔、体には金属の装甲。
これもう完璧に戦車じゃないですか、しかもスナガニの移動速度が加わって正に快速戦車ですよ!天下のクリスティ式ですよ!
俺もう最強なんじゃないですかね!?
…いや、まぁ、ロベリアはこの鎧破壊してたけどな。
【鎧、及び弾丸の形成が完了しました】
ところで、鎧壊れたりしたらどうなんの?弾丸って魔力あれば無限?
【修復や再生成には材料が必要となります。弾丸はストック可能です】
【弾丸装填数:30mm砲弾、最大5発】
【現在の弾数:劣化ミスリル合金の徹甲弾1発】
ほほう、後で騎士達の鎧を回収しとこう。弾数は最大値にしておきたい。つか、5発は少なくね?…んで、どうやって取り込めば良いんだ?
【特性が一部アクティブ化、後ろ脚が銃と合成され砲塔化した為道具装備の特性が破綻。鎧生成と弾丸生成に変化。所有者の居ない素材に対してスキルの発動で取り込み可能】
スキル?スキルねぇ…なんかファンタジーぽくなってきたじゃないですか!?正直嫌いじゃ無いですよぉー!むしろ好きだ!ビバファンタジー!
いやはや、しかし今俺どうなってんの?スキルとか把握しときたいんだけど。
【カニ型の上位魔物 サイズS】
【人間の装備を取り込んで進化した特殊個体】
【上位魔物には同一種族が居ないため種族名は無い】
【進化の過程で得た下位魔物の特性と味を引継ぐ】
【特性】
【淡水適応】
【海水適応】
【深海適応】
【陸上適応(要水分補給)】
【生命力上昇】
【高速移動】
【危険察知】
【脱皮回復】
【視界拡大】
【アクティブスキル】
【鎧生成】
【所有者の居ない素材を取り込み鎧を生成する。修復や再生成にも素材を必要とする】
【装備中の鎧:劣化ミスリル合金の薄い鎧】
【弾丸生成】
【所有者の居ない素材を取り込み弾丸を生成する。爆発物を取り込めば榴弾となる。最大装填数を超える生成は出来ない】
【装填中の弾丸:劣化ミスリル合金の徹甲弾1発】
【所有者の居ない素材とは】
【自然に生成された命の無い物質】
【切り離された生き物の身体の一部】
【所有者が自分の意思で動かせない状態の物質】
ほほーう、随分と親切な説明文になったもんだ。
つまり…だ、特性は常時発動してる感じの生き物としての能力、ゲームで言うとこのパッシブスキルだな。
で、このアクティブスキルってのが任意で発動させるタイプの能力だな。まさにアクティブスキル、これはゲームでよくある設定だ。
劣化ミスリル合金…か。ミスリルって確かゲームとかだと魔力の媒体になる銀みたいな金属として扱われる事が多いやつだな。
ファンタジーの王道金属、かなり良いやつだったはず。
とはいえ…劣化でしかも合金?質の悪いミスリルに他の金属混ぜた粗悪品ってこと?
まぁ、あんな新兵騎士が着けてるんだ。致し方あるまい。
いくら粗悪品だとしてもそこら辺に転がってる鉱石よりは良い物なはずだ。有難く他の鎧も回収させてもらうとしよう。
そうして俺の装備は…【劣化ミスリル合金の鎧】と【劣化ミスリル合金の徹甲弾5発】となった。たくさん取り込めば劣化か合金が無くなるかもしれないと思っていた俺の希望は儚く消え去ったのだ。
天下のクリスティ式をなめ(略)
はい、これがやりたいが為の進化ルートでした(笑)
快速カニ戦車!
あ、一般的に合金は悪い物では無いですよ?
主人公のベートカ君はファンタジーへの憧れから純ミスリル銀が良かったみたいですが(笑)




