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ヤドカリ少女 4

今回少々残酷なシーン入ります。

そしてヤドカリさんパートはやはり毎度の事ながらダイジェスト気味にお送りいたします。



 ◆  ■  ◆  ■



 私は…頑張ったよ。

 頑張って、君に会いに来たんだよ。

 君が連れて行かれたあの日から、あの人間の女の子を追い掛けて、村を見付けた。


 私はこんなに大きくなったけど、君は私に気付いてくれるのかな?

 君にもらったアンティークカップは進化した時に消えてしまったけど、それでも君は私に気付いてくれるのかな?


 こんな…大きなモンスターみたいになってしまった私に…君は……ううん、もう、関係無いの。私が、君を、助けたい。理由なんてそれだけあれば良い。



 君がどの家に連れて行かれたのか分からない。

 もし、どこにも居なかったら?もう食べられてしまっていたら……嫌だ!それは絶対に嫌だ!…見つからなかったら…もう…ここに居る人達…全員…。


 君は…どこに居るのかな…。どこ…かな…。



 家を一つ壊してみた。地面を掘り起こし、家を傾けて、薙ぎ倒す。

 私…こんな事出来るようになったんだね。家なんて簡単に壊せるよ。

 あ、この家の屋根の部分、丁度いいサイズかも。私のヤドとして借りて行くね。

 ヤドカリだもの。こんなサイズになっても本能は残ってるものなんだね。



 さて、この家に君は居なかったね。

 …あ!しまった、こんな壊し方じゃ君ごと潰してしまいかねない。

 壁を剥がすように、側面から破壊して探そう。…次はあの家だ。



 次の家を破壊して、穴を広げる。まだよく見えないけど、中から女の子の声が聞こえる。…この家…かな?もっと、壁の穴を広げよう。


 …痛っ!なんか今…撃たれた?銃みたいな武器でもあるのかな?

 ちょっと怖いかも…一旦下がろう。


 家から出てきたおじさんが私に銃口を向ける。

 怖いから銃を払い除けようとした。でも私は自分の手の長さをまだ把握出来ていなかったみたいだ。私の鋏脚はおじさんの体を引き裂いてしまった。

 血が飛び散る、殺してしまっただろうか?…いや、思っていたより傷は浅いみたいだ。抵抗しないのならもう攻撃はしないでおこう。



 君を見付けたのはそんな時だった。

 さっき壊した家の近くで進化の光を放つカニが居たんだ。

 良かった、生きてた。元気そうだ。これでこの村には用は無い。家を二つ程壊してしまったけど、一人も殺さずに済んで良かった。


 一緒に行こう、もう見守るだけじゃない。私が守るよ。私は君を守れるくらい強くなったよ。…だから、私と一緒に居てよ。



 ………



 彼と一緒に村を出よう。そう思った矢先に事件は起きた。

 大きな鳥が村に火を放ったのだ。炎に囲まれた村で私は考えていた。

 突然村に火を放ったこの鳥は私と同じ様にモンスター化したクラスメイトのはず、何でこんなにも簡単に人を傷付けれるのだろう。…殺せるのだろう。


 そもそも、何故人を狙っているのだろうか?狙うのなら私のはず。

 クラスメイトの中に異世界転生の元凶となった犯人が居る。そいつを殺す事で元の世界に帰れるのだからクラスメイトを狙うべきなのだ。

 犯人以外のクラスメイトを殺す事に躊躇いがある?…んーん、違う。そんな優しい奴が村人を殺したりなんてするものか。

 もしかして、帰りたく…無い…とか?この世界を楽しんでいる?

 それなら人間を狙う理由は?



 私は…どうするべきなの?

 村人を守れば良いの?あの鳥を殺せば良いの?

 分からない…分からないよ!



「くそ!このヤドカリの魔物が鳥の魔物を呼んだに違いねぇ!」

「ふざけんな!この化け物が!」


 村人の悪意が私に向けられた時、唐突に理解した。

 理解…してしまった。


 ああ…こいつらも同じなんだ。あのクラスメイト達と。

 私をこの異世界転生の犯人に仕立て上げて、冤罪の私を責め立てたあいつらと。


 やっぱり…私の味方はこのカニしか居ないんだ。

 クラスメイトも…この世界の人間も…皆…敵なんだ。


 それなら守る理由なんて無いよね。

 殺しちゃいけない理由も無い。


 このままこの村に居たらカニである彼は焼けて干からびちゃうかもしれない。

  陸に進化した私はまだ大丈夫だけど、彼はそろそろ水が必要かもしれない。


 水…見当たらないな。…水。…水が…欲しいな。


「くそ!鳥に弾が当たらねぇ!」

「そこのヤドカリから殺せ!」


 うるさいなぁ……あ、あるじゃん。水。

 このうるさい奴らの中に、赤い水が…。


 鋏でバツン!吹き出た赤い水を彼に掛けてあげましょう。

 ふふ、これで彼は死なないね。…良かった、一安心。


「うわあああぁぁぁあ!こ、こいつ!やりやがったな!」


 自分達だって私を殺すつもりだったくせに…何言ってるの?

 人間て自己中心的…嫌になる。

 こいつもバツン!一撃で切断して吹き出る赤い水で火を消しましょう。

 森へと続く逃げ道を確保したらもうここには用は無いの。



 飛び散った赤い水、それが何滴か口に入った時、あの鳥が人間を襲う理由が少しだけ分かった気がした。

 自分の身体の中に何か…良く分からないエネルギーみたいなのがあって、それがほんの僅かに増えた気がしたんだ。

 あの鳥はこれを溜めてるに違いない。何の為に?


 まぁ、関係無い…よね。

 あの鳥が私達を狙わないというのなら、気が変わらないうちにここを去るべきだから。もう…私には関係無いんだ。

 あの鳥が元の世界に帰りたい奴じゃなくて良かった。

 私も、別に帰りたいとは思わない。

 私の味方はここに居るカニだけだから。



 私には、この村がどうなっても関係無い。



 ■  ◆  ■  ◆


ヤドカリさん覚醒☆(ダメな方向に)

今回は鳥とのバトルはありません。モンスターバトルを期待していた方おりましたら申し訳ないです。

鳥との決着はいずれ!


そしてやはりヤドカリさんパートは重いですね。

カニくんを見習って欲しいものですね。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヤドカリさんとカニくん、素の性格が違いすぎますね() いやぁ、めちゃくちゃに重い性格してますな、ヤドカリさん。 カニくん人(カニ)生楽しそうだなぁ()
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