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第13話 開幕

机の下に隠れてるからもり〇ぼかと思ってたら本質はま〇だった的な。あ、いえ、何でも無いし本編にも関係ございません。


「私のカニさん…連れて行っちゃうの?」


 巨大ヤドカリが俺を持ち上げて去ろうとした時だった。

 今まで恐怖で固まっていた妹ちゃん、カーラが口を開く。

 俺があのスナガニだと理解して少し寂しそうにポツリと呟いたのだ。

 進化の場に居たしな、カーラにも俺が魔物だとバレているだろう。


 何だ…あんな雑な飼い方でも愛情はあったんだな。こんな俺でも別れるのを惜しんでくれているというのは…その…正直嬉しい。

 お姉ちゃんと違ってキモかわというジャンルに理解がある様だ。

 うん、キモくない。キモかわだから、ね?キモかわだよ?


 でも…流石にもう、ね。魔物バレした時点で一緒にはいられないかな。

 それに、この巨大ヤドカリがねぇ…、カーラが口を開いた途端不機嫌になったというか、なんか体をギチギチ鳴らして殺気混じりな気配が漂ってるというか。

 もう…子供相手に大人気ねぇなぁ。このヤドカリも悪いやつじゃ無さそうだし、てかわざわざ俺を助けに来たのか?突然のモテ期?しょうがないねぇ、俺が仲介しますかねぇ。


 巨大ヤドカリの甲殻を撫でるように優しく擦ると次第に緊張感が薄れて行くのを感じた。んむ、こいつ意外とチョロいな。

 すぐには無理でもいつかは和解してくれよー。ほら、あれだ。俺の為に争わないで!ってな。わははははは、…はぁ、人間だった時に言いたかったわ。



 それにしても、このヤドカリ…、初めてあった時は臆病な引っ込み思案かと思ってたのに、キレたら何するか分からない狂気を感じるよ。

 それでも俺に対しては敵意も無さそうだし、こいつに委ねるしか無いかもなぁ、というか、俺今歩脚ボロボロだし、てかほぼダルマだし、連れて行かれても抵抗出来ねぇ。

 残りは鋏脚二本と後ろ脚二本…か?歩く為の脚が無いんだよなぁ…。

 カーラの父親から奪った銃は離さず持ったままだけどな!

 せっかく道具が使える種族に進化したんだからもらっておかない手は無いってものさ!使い方知らねぇけどな!



 おっと、流石にそろそろ逃げねぇとヤバいぞ?周りの家からも武装した人達が出てきた。このヤドカリがいくら強くても村一つ丸ごと相手にするのは部が悪かろう。

 ヤドカリの甲殻をコンコンと叩いて合図する。まぁ、これは流石に意図を理解してくれたようだ。というか、俺が言うまでも無い事だしな。

 カーラの父親も血塗れではあるが深い傷は無い様に見える。早く手当してやればまだ間に合うだろう。全てにおいて今が頃合というものさ。


 ヤドカリも村人達を警戒しながら森の中へと後ずさっていく。

 村人達はというと魔物の再来に慌てふためきながらも負傷者であるカーラ父の救助を優先しようとしているみたいだし、その隙に逃げ出す事ができそうだ。

 さようなら、カーラ。俺の元飼い主様よ。君の事は忘れないさ。




 ……と、ここで一旦区切りにする事が出来ていたら。


 ……元飼い主との別れを惜しむだけのシーンであれば。


 どんなに……良かった事か。




 突然空から降ってきた真っ赤な炎。それは火の着いた大きな枯れ枝だった。松明と呼ぶにはやや大きなソレは狙いすました様に民家に火を着ける。


 空を見上げる間も無く放火犯は地面へと降り立った。

 降り立ったその足は一見か細く見えるが硬質な皮膚で覆われ、その足先には鋭利な鉤爪が付いており、あろうことかその鉤爪はカーラの父親を押さえ付けて離さない。

 自分の存在を鼓舞する様に巨大な翼を威風堂々と見せ付けたその生き物は、人間と同じくらいの背丈の鳥だった。茶色と灰色に色付く羽毛は猛禽類を思わせる。


 何故人間を襲ったのかはすぐに分かった。血塗れになっているカーラの父親を更に締め上げ、溢れ出る血液を…飲んでいるのだ。

 血の匂いに誘われて来た、という事なのだろう。鳥のくせに吸血するとか、どんな悪趣味なやつだよ。そんな鳥知らねぇよ。




「この!父さんから…離れろぉおおお!!」


 お姉ちゃんは弓を構え、渾身の力で矢を放つがその矢は怪鳥には届かなかった。

 避けた訳では無い。単純に矢を嘴で捕まえたのだ。カニである俺には見えていたが、人間であるお姉ちゃんには矢が突然軌道から消えた様に見えていた事だろう。


 しかし驚くのはそこでは無かった。

 その怪鳥が咥えた矢に火が灯り、松明の様に燃え盛る。

 お姉ちゃんがやったのか?…いや、お姉ちゃんも驚いてるな。あの鳥は咥えた物に火を着ける能力でもあるのだろうか。


 その燃え盛る矢を他の民家へと投げ捨て、更に火事は大きくなっていった。

 炎に燻り出された村人達が次々と民家から逃げ出し、村を放棄して森へと逃げようとするがいつの間にか村の周りは火で囲まれてしまっていた。

 あらかじめ火種を撒いていたのだろう。奴も魔物なら元になった鳥がいるはず。こんな器用に火を使う鳥が居るなんて思いもしなかった。


 と、言うか!鳥とかズルくないですかね!?もうスタートから勝ち組じゃねぇか!

 こちとらカニですよ!?しかもサワガニから始まってるんですけど!



 うむぅ、それでも文句ばかりも言っていられない。逃げ惑う村人達を見て内心焦る。それはけっして他人事では無いからだ。

 俺はカニだ。直接火の粉がかからずとも乾燥するだけでかなりしんどい。正直呼吸がしづらくなってきている。

 それはヤドカリである相棒も同じだとは思うのだが、どうやら俺よりは余裕がありそうだ。甲殻類ではあるが陸への適応能力が高いのかもしれない。

 俺もアカテガニとかミナミオカガニとか選んでおくべきだったのかねぇ。


 ……いや、関係無いな。元々無理ゲーだ。

 制空権取られて火を扱う時点で勝ち目が無さすぎる。相性悪いにも程がある。

 あの鳥が俺らを無視してるのも自信の現れだろう。この世界来てから負け知らずなんだろうな。…俺も鳥が良かったなぁ、何でカニなんですかねぇ。


 ヤドカリさんもそう思うでしょ?ね?ヤドカリさん?…ヤドカリさん?



鳥さんはカニさんとは違う思考の異世界エンジョイ勢。

鳥は制空権を有した優秀な捕食者です。強キャラ転生しちゃって調子乗ってる感じですね。

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