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第10話 捕食者と同居生活

更新遅くて申し訳無いです。

ちゃんと書いておりますので安心?してください!


 ああ、なんて良い匂いなんだろう。


 野生動物…ジビエってやつだよね、お肉の焼ける良い匂いだ。人間やめてからずっと嗅いだ事の無かった匂い。食欲をそそる脂の匂いだ。

 ジビエは獣臭いって言われるけどね、なんか肉の匂いとは別にとても爽やかかつちょっと刺激感もあるなんとも言えない…あ、ちょっとだけ湿布みたいな匂いだわ。

 いやいや、湿布っていうと嫌な匂いかも知れないけど、肉の脂の匂いと混じって丁度良くなってるんだよ。たぶんハーブか何かだな。香草焼きってやつかな?


 はぁー、人間様は良いもん食ってんなぁおい。一切れで良いからこっちによこせよー。俺なんて一切れでお腹一杯になれるんだから良いだろぉ、なぁ。



 俺のこの熱い想いは伝わるのだろうか?答えはイエス!キッチンの方からやって来たお姉ちゃんが持っているのは一切れの肉だった。

 否が応にも上がるテンション、この世界に来て一番の高揚感。

 これだよこれ、こういう些細な幸せが堪らなく嬉しいんだよ。

 思えばこの世界に来てから録な事が無かった。これくらいは喜びを噛み締めたって良いだろ?バチ当たらないだろ?


 俺の水槽に投下される瑞々しい輝きを放つお肉様。ちょっと赤っぽい気もするけど今の俺には金色に見える。

 いざ!いざ頂きます!鋏を肉に突き立て、契り、口に運んだ瞬間…何とも言えない芳醇な……いやくっさ!まっず!これいつもの不味い内臓やん!

 いらんねん!こんなオチいらんねん!いや食うけども!食わんと死ぬし食うけども!


 …はぁ、期待が大きかっただけにテンションの急降下に心が耐えられないよ。

 テンションと同時に食欲も急降下、こんなに食えるかなぁ。



 案の定狭い水槽に存在し続ける臭い肉、掃除されない不衛生な汚部屋と化したマイルーム。生き物飼うなら水槽綺麗にしてくだい、お願いします。

 そしてそれを見て痺れを切らす家主様。


「おいカーラ、ちゃんと飼えないみたいだし、もうこんなカニ食ってしまったらどうだ?餌も残してるし、弱ってるんじゃないのか?」


 ひゃあああ!た、食べます!食べますから!弱ってませんよ!弱ってなんかいません!ほーら、こんな臭い上に放置された内臓だってペロリと平らげて…うぇえくっさぁ!無理!ペロリとは無理、ちょっと時間ちょうだい!


 そんな俺の様子を心配そうに見に来た妹ちゃん。確か名前はカーラって言ったっけ?もう君だけが俺の命綱なんだ!カーラ様…どうかお助けください!

 そうだ、土下座だ!土下座ポーズでカーラ様は俺を気に入ってくれたんだった!

 鋏脚を前に出し地に付け、後ろの歩脚で踏ん張り精一杯身体を倒して渾身の土下座ポーズ!決まった…これでどうか1つ…どうか。


「うーん…可愛いけど、確かにちょっと飽きてきたかも」


 はあぁぁああ!?ふざけんなよこら!命を何だと思ってやがる、勝手に飼って飽きたらポイか?上等だくそ!つまり新しいポーズをご所望でございますね!?

 良いだろう、やってやるさ、この子に気に入られないと死ぬからね!


 とはいえ直ぐにそんな奇抜な事……あ!あれなら!

 周りを見渡した俺の目に映ったのは、というか見渡すまでも無くカニの視野なら全部把握可能だけども、ともかく俺の目に映ったのは水容れに使われていた平たい貝殻だった。


 その貝殻を鋏脚で持ち上げ、ひっくり返す。水が水槽内にこぼれるが…まぁ、この際気にしない。というより元々それで問題無い。

 そして持ち上げた貝殻を被ってみせた。そう、これは女子供に人気者のヤドカリの真似だ。ただ背中に被ってみせただけだけど、それなりに可愛いんじゃないか?


【「道具を利用する」達成】

【進化先が追加されました】


 いや、今はおまえどうでも良いから。それよりカーラ様の反応よ。どうよ、可愛いくね?俺今超可愛いくね?


「あははははは、このカニやっぱりおもしろーい。ねぇお父さん、もうちょっとだけ飼いたいな、良いでしょ?」


「ん…んん…まぁ、カーラがそうしたいならもうちょっと様子見るか」


「わーい、ありがとー!」


 わーい!ありがとー!!いやほんとありがとー!

 今1番喜んでるのたぶん俺だからな!わーいわーい!


 喜び貝殻ごと身体を持ち上げた時、身体がパリパリとヒビ割れるのを感じた。

 …あ、脱皮か。これでLサイズになれるな。しかも安全保障済みの水槽内だ、余裕余裕。いつもの様に華麗に古い皮を脱ぎ捨てますとも。


「ん?そいつ脱皮上手すぎないか?」


 ほわ!?お父様が不振がっておられる!?

 嫌だなぁ、普通のカニでごぜぇますよ?魔物なんかじゃねぇですよ?

 念の為もうちょっと脱皮に時間かけとこうかな。


「んんん?気のせい…か?」


 ええ、ええ、気のせいですともー。



【サイズLに成長しました】


【進化条件を満たしました。現段階での進化先を表示します】


 良し!待ってました!せめて大きめなカニがあると良いんだけど。



【通常進化】

【モクズガニ】【ミナミオカガニ】


【特殊進化】

【バンパイアクラブ】【ズワイガニ】【オオホモラ】


【今進化しますか?】



 いやいや!しないよ!?今人間の目の前で進化とかしたら魔物認定されて殺されるやん!?ちょっと保留な!


 さぁて、ズワイガニ以外は知らないぞー。なんか1つめちゃくちゃ気になる名前のやつあるけど今は1つずつ考察してみるか。


 モクズガニ。…藻屑かな?たぶん変なカニだ、却下!


 ミナミオカガニ。陸生なのは間違い無いだろうな。南の方に生息してるんかな?南のカニ、なんか大きそうだな。候補の1つにしとこう。


 バンパイアクラブ。これめっちゃ格好良い名前だよなぁ、バンパイアって言うくらいだから強いはず…だとは思うんだけど、これ観賞用の条件から来てるカニな気がするんだよなぁ。

 明らかに他の奴と違ってオシャレなネーミングだし、ペットを意識して格好良い名前にしてある感バリバリなんよなぁ。

 ペットって事は…多分小型だ。うーん、保留で。


 ズワイガニ。却下!大型ではあっても食われるイメージしか湧かんわ!



 さぁ…最後は…ずっと気になってたアレだな。

 何だよオオホモラって!名前にカニの面影が無いじゃねぇか!むしろ四足歩行で「ホモォ…」って鳴く謎の生命体の面影が脳裏を過ぎるわ!

 俺が思うに…これはカニでは無いと見た。

 おそらくこれは魔物だ!魔物への進化が…開けたんだ。

 名前にオオって付くから大型、ホモラって響きはなんか怪獣っぽい。これは大型の怪獣…つまり魔物!モンスターだ!

 ふ、ふふふ、これはここを抜け出す時の切り札になりそうだ。ここから俺の最強伝説が始まるのだ。ようやく俺の無双物語が開幕するのだあ!

 はぁーっはっはっはっはぁ!その時が待ち遠しいけど今は我慢の時さ!形勢逆転だぜ!人間どもめぇ!ははははは!



 俺の高笑いはただの泡として口から吹き出され、静かに夜が更けていく。



はい、進化先が5つ出ましたね。

主人公のカニ君はオオホモラになろうとしてますけど、気になる人はググってみてください☆

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