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第8話 無邪気で無慈悲

引き続き砂浜編です。

いやぁ、このカニある意味最強かもです。


 ……… …… …



 砂浜に穴を掘る。そう、それだけならただのカニだ。

 だが俺は違う。違うのだよ。俺は元人間だからね、もっと頭を使う。


 最初は試しにただ単に掘ってみたさ。それで少しだけ暮らしてみたけど割と快適で、意外にも食べ物にも困らない。

 カニが砂拾って食べてるの見た事ある?実は海辺の砂って生き物の死骸とか染み付いてて食えるとこあるんだよ。海水で洗われて塩味も付いてるし、お日様で天日干しされてるからけっこう悪くない。

 なんて思っちゃうあたり俺もだいぶ逞しくなったものだ。


 で、1回脱皮も済ませてサイズMになったからちょっと巣穴をリフォームしようという考えに至ったのだ。




 で、出来上がったのがこちらになります。


 まぁ素敵、1つしか無かった出入口がなんと2つに。これでいざという時どっちからでも逃げれるよ。

 そしてその深さなんと50センチ!いや、測って無いから適当だけど。前の巣穴の倍は掘ったかな、前の巣穴でも鳥のクチバシより深く作ったけど、もっと長いクチバシの奴とかもいるかもしれないしね。用心に越した事は無い。

 2つの出入口を繋ぐ渡り廊下が居住スペースだ!廊下状に作ったから軽い運動まで出来ちゃうぞ!


 …はぁ、暗いし寂しいけどな。サワガニの時の方が爽やかな生活送れてた気がするよ。スナガニはジメジメ系だよ。

 でもそんな巣穴の方が落ち着いてしまうのはスナガニゆえの本能だろうか、悔しいけどめっちゃ快適。



 あとはもう逃げの姿勢ですよ。隠れて過ごして次の進化を待つのみですよ。特殊進化は無さそうだけど、もう…ね。ぶっちゃけ外の世界は怖いです。はい。

 このマイホーム周辺から離れる気は更々ございません。


 もっと大きなカニになりたい。もうドラゴンだとか夢みたいなことほざかないから、せめて、もうちょっと安全に生きれるカニになりたいです。

 ええ、ええ、そりゃ心も折れますよ。小型生物に人間の思考能力なんて付けちゃダメですよ。恐怖に耐え切れずに発狂したって何も不思議に思わないですよ。



 でもね、もう良いの、俺はもう誰にも見つからず穴の中で生きていくのだから。巣穴の圧倒的安心感はサワガニ時代の岩陰の比では無いのだよ。

 知ってる?スナガニの目って普段は飛び出てるけど収納可能なんだよ?

 穴に潜る時目が当たるの怖いなぁ思って目を倒してみたらそのまま甲羅にフィットしてなんか幸せな気分になったよ。ここに友達が居たら自慢げに話したいね。


「おい見てみコレ、甲羅に目をしまうための窪みがあるんだぜ!凄くね!?」


 ってね。…あー、友達は今頃どうしてるかねぇ。俺が居なくなった事ちょっとは話題になってるんかねぇ?俺はそれなりに生きてますよーって伝えれたら良いんだが。

 そういえば俺がこの世界来たのって教室からだったよな?実はクラスの奴らもこっち来てたりしてな?もしそうなら友達くらいは見つけたいものだ。




 なんて巣穴で感傷に浸っていた俺だったが、瞬時に現実に引き戻される事件が発生してしまい警戒態勢へと移行することとなる。

 何でこんなに災難ばかり訪れるのか、日頃の行いは悪くない方だと自負しているだけに困惑だわほんと。


 その事件とは砂浜、つまり地上から伝わってくる振動だ。それは何か大きな生き物が砂浜を歩いているという事を表す。

 確認するべきか?いやいや、触らぬ神に祟り無し。どうせ俺がどこに居るかなんて分からないんだ。やり過ごす方が良いに決まってる。

 俺が居る場所を示す物なんて砂上に開いた小さな穴くらいな物だ。まぁ…出入口は2つ作ったから少々目立つかもだけど?


 それでも穴に違和感を覚える程色彩豊かな視力を持ってる動物なんてそうそう居ない。ましてや砂浜の穴=巣穴だなんて認識するほど知識豊富な動物なんてそうそう居ない。決定的なのは奥深くまで巣穴に潜った生き物を捕らえる知能と技術を有した動物なんてそうそう居ない。


 つまり、俺はここに居るのが1番安全だということは確定的明らか!

 どんな動物が来ようとも我が城を攻略する事は不可能なのだ!


 はーっはっはっはっはぁ!

 はっはっはっ……はぁ!!?



 その時、突如として強い振動が俺の巣穴を襲った。じ、地震か!?あ…すぐ治まった。今の地震で上に居る動物も逃げ帰ってくれると嬉しいんだけど、どうやらそうも上手くはいかないようだ。逃げ出すような足音はしなかった。


 ………?


 ちょっとだけ砂浜の様子確認してみようかな?いや、なんかね?上手く言えないんだけど、妙な違和感というか、変な浮遊感というか、そうそう、ハンモック、ハンモックに乗ってるみたいな緩やかな浮遊感があるんだよ。

 流石にこれは異常だ、危険を冒してでも現状を把握するべきだと思う。


 さて、ちょっとだけ…砂上の様子を…あれ?

 おかしいな、出口に繋がる通路が塞がってる?さっきの地震で砂が崩れた?いやいや、それにしてはこの通路を塞いでる物体やけにツルツルヒンヤリしてて、金属みたいな人工物感あるんだよなぁ。


 んー、まぁ良いか。出口2つあるしな!2つ作っておいて良かった。俺の勘もなかなか冴えてたな。建築の匠とは俺の事だわ。

 ……あれ?もう1個の出口方向も同じ物体で塞がれてんぞ?




「んっふふー。何か捕れてるかなぁー」


 ほわい?近くから女の子の声?……え!人間!?

 もしかして俺人間の捕獲道具で捕まった系!?

 さっきのは地震じゃなくて掘り出されて地上まで持ち上げられてた系?そりゃ浮遊感あるわ!実際に浮いてんだろ今よぉ!

 くっそ!人間はズルいわ!目も良くて知識も技術もあるやん!そうそう居ないと思った条件の動物がジャストで来ちゃったよ!



 いや待て、パニックになってはいけない。冷静に考えるんだ。情報を分析するんだ。この捕獲道具の形状を分析しよう。逃げ道があるかもしれない。

 廊下の様に作った巣穴の通路が両方塞がれていたという事は横方向は壁になっている可能性が高い。つまり箱状?いや筒かな?

 材質は金属だと思われる。そして地中深くまでそれが突き刺さるという事は…パイプだ!


 そうか、パイプを地面に深く差し込んで砂も土もまとめて掘り出す道具だな!

 よし!それなら逃げ道は…下だ!土ごと吸い上げられてパイプに収まり空中に持ち上げられている。そう仮定した場合下に抜ける事が出来れば砂浜に出られる!


 そうと決まればひたすら下に掘り進む。掘るのはもうお手の物さ!

 そして地面に着地出来たら走って逃げるんだ。大丈夫、人間はカニを捕まえようと思ったら1回しゃがむ必要があるからな。そんなとろくさい動作で捕まる俺ではない。



 よし!思った通りだ!下に掘り続けたら穴が開いたぞ!

 明るい!俺は自由だ!自由を取り戻したんだ!

 ひゃっほーい、砂浜目掛けて勝利の自由落下だー!


 あーいきゃーんふらーい!



「あれ?あー!カニ捕れてたー!わーい、今から土ごと出そうと思ってたのに、自分からふるいの上に落ちてきたー、可愛いー」



 ……ほわい?…え?なんか地面がやけにメッシュなんだが?

 走って逃げ…あれ?なんか金属の壁で囲まれてんな?

 そっかそっかなるほどね。篩かー、俺篩の中に着地したんだな?

 …あ!この子あれだ、イノシシの時の姉妹の妹ちゃんだ!

 いやぁ、あの時は助けていただきありがとうございましたー。

 はははは、あの時はサワガニ大量に捕まえてましたよね?今日はビーチでカニ捕りですか?精が出ますねぇ。はははは。

 はは…は…。



 …いやあああああああああ!おぉぉまいがぁっっ!あかんやつ!これあかんやつ!詰んだ!完全に詰んだ!


「うろたえてるー、可愛いー」


 はああぁぁぁああ!?こっちは死の宣告喰らったも同然やぞ!?それで狼狽うろたえてる姿見て可愛いだぁ!?お前サイコパスかよ!


「なんか踊ってるみたいな動きしてるー、おもしろーい」


 ちゃうわ!抗議してんだよ!お前のサイコパスっぷりによぉ!身振り手振りで抗議してんだよお!それを踊ってるみたいだとお!


「この子可愛いなぁー、食べるの可哀想になってきたし飼ってみようかな」


 ……ん?あー、なるほど?はいはい、飼う?俺を?

 つまり…安全な場所で餌もらって…女の子に可愛がられながらキャッキャウフフな生活が送れると、そういうアレか?



 この子天使かよぉ!よろしくお願いしまぁっす!!


「あははははー、なんか土下座みたいなポーズしてるー」



慈悲は…ありましたね!

はい、重要な話は次回になりそうです。

捕獲シーン書くの楽しくなっちゃって1話使う事にしてしまったので(笑)


この女の子の名前はカーラ。前のイノシシ事件の時の妹の方ですね。

今回カーラちゃんが使った道具はただ単に軽い金属で作られただけの普通の道具です。

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