恋心
「セーラー服着てるってことは、あんたが天城さんね。最近、長谷川君と仲良いじゃないどういう関係?」
いきなりやって来て突然質問された。期末テストも終わり秋休み前日の放課後のことだった。しばらくのんびりできるなと考えていた矢先の質問である。
「どうってただの友達だけど…」百合愛は答えた。
質問してきたのは他クラスの女子生徒で面識はなく名前も知らなかった。
「ただの友達にしては仲良いじゃない。一緒に帰ってる姿も何回も見てるし」
「幼馴染だから仲良いだけだよ。長谷川君とはホントに友達だから」
そう言いながら百合愛は心がズキンと痛むのを感じた。
「ふーん、なら良いけど。言っとくけどあんた何かと長谷川君はつり合わない。悲劇のヒロイン演じて気を引こうとかしないでよね」
言うだけ言い放って女子生徒は去っていった。
悲劇のヒロインというのが飛行機事故のことを指すのは明白で、百合愛は思い出したくない記憶を呼び覚ましてしまい泣きそうになりながら速足で校舎を出た。
鶴ヶ峰駅に着き列車を待つ。すると。
「天城じゃん偶然だな、一緒に帰ろう」と長谷川から声をかけられた。
「長谷川君…、今日は1人で帰らせて」
「何かあったのか?目、充血してるぞ」
「何でもない、放っておいて」
そう言っている間に列車が到着したので2人で乗り込んだ。乗っている間会話はなかった。
緑園都市駅で降りる。改札を出て百合愛はあいさつもせずに行こうとすると長谷川に腕を掴まれた。
「何かあったんだろ、言ってみろって。言っただろう俺の前では素直になれって」
百合愛は泣き出した。長谷川の優しい言葉にせきを切った様に泣き出してしまった。
「優しくしないで、辛くなるだけだから」言葉を紡ぎだすのがやっとだった。
すると突然長谷川に抱きしめられた。
百合愛は抗わなかった。いや、抗えなかった。長谷川のたくましい胸板に顔を埋め泣き続けた。
「良いんだ辛くたって。誰だって辛い時はある。天城のこと全部理解できている訳じゃないけど、俺で良ければいくらでも辛さを共有するから。だから、もっと俺を頼れ」
「うん、うん、ありがとう、グスッ」百合愛はやっと涙が止まった。
長谷川から体を放す。百合愛は頬の熱さを感じていた。
「じゃあ、今日は帰ってゆっくり休め。秋休み2人でどこか出かけよう」
そう言って長谷川は去っていった。百合愛も家路についた。
百合愛は夢うつつな状態で家に帰っていった。