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死を見つめる瞳  作者: 自由の梨
8/10

図書館デート

翌日、放課後に百合愛は相鉄本線の横浜行の電車に乗って目的地を目指した。横浜駅に着いたのは16時少し前。丁度良い時間である。

 相鉄西口交番前にはすでに長谷川が待っていた。

「ごめん、待たせちゃったね」

「俺も今来たとこ、行こうぜ」

 そう言うと長谷川はJRの改札に歩いて行った。百合愛も続く。


 中央図書館は横浜駅からJR京浜東北・根岸線に乗って1駅目にある桜木町駅が最寄り駅であった。駅の南口改札を出て右手にある野毛ちかみちと呼ばれる地下道を通って、地下道を抜けたら直進しコンビニ手前を右折した坂の上にある。

「着いたぜ」

 そう言って長谷川が指さす先には巨大な建物がそびえ立っていた。6角形のハチの巣のような形のパーツを組み合わせた創造を超えるものが広がっていた。

百合愛は感嘆の声を出した「すごい!大きいんだね」

 大きいのは見た目だけではなかった。中は地下1階地上5階建て。蔵書量は日本でも5本の指に入るものだと長谷川は説明してくれた。

 自習スペースは地下1階にある。早速2人は向かった。

 着いた先は長方形の広い無機質な空間だった。白い壁に白い長机が等間隔でおかれ、オフィスチェアが並べられている。静かな室内で座っている人は皆一心不乱に勉強していた。


 百合愛と長谷川も2人並んで椅子に座りノートや教科書を出して勉強を始めた。

「わからないことあったら質問しろよ。俺も聞くから」とヒソヒソ声で耳元でささやかれた。

 一瞬顔が耳元まで近づき百合愛はビックリした。頬が熱くなるのを感じる。

「わ、わかった」百合愛もヒソヒソ声で答えた。

 2人は黙々と勉強をした。途中休憩を入れながら、いつの間にか時刻は19時を回っていた。

「疲れてない?無理するなよ」小声で長谷川が言った。

「少し疲れたね、終わりにする?」百合愛も答える。

「そうだな」

 そう言うと長谷川はノート類をカバンにしまった。百合愛も続いて荷物を片付けた。


 帰り道は思い出話で花を咲かせた。小学校から中学校に至るまでの過程を2人で語り合った。

 こんなに楽しく会話したのは何カ月ぶりだろう。百合愛の表情は自然とほころんでいた。

 帰りの相鉄線内でも会話は途切れなかった。しかし、百合愛にまた胸の痛みが襲う。そして、目線はどこかぼーっと遠くを見てしまう。

「天城、大丈夫か?」

「へっ?大丈夫だよ。ちょっと勉強しすぎて疲れちゃった。明日はテスト前日だから家で勉強するね」

「そうか、なら良いんだけど」

 長谷川は不安そうに百合愛を眺めていた。

 


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