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死を見つめる瞳  作者: 自由の梨
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下校デート

「貧血で列車にはねられるなんて洒落になんねぇぜ。気を付けろよ」

 長谷川はあきれたように言い放った。

「ごめん、ごめん。今後ちゃんと気を付けるから」百合愛は答えた。

 二人は幼馴染で家も近い。当然最寄り駅も緑園都市駅だ。

 一緒の電車の中で会話しながら百合愛は長谷川をまじまじと見てしまった。身長は当然伸びていたし、短髪の爽やかなイケメンになっていた。何より驚いたのはすごい筋肉質になっていることだった。男子から男性になったといった感じだ。

「筋肉質になったのは部活のせい?」

 百合愛が興味本位で聞いてみた。すると長谷川は二の腕に力こぶを作り答えた。

「そうだよ。体操部入ったから毎日プロテイン飲んで筋トレしてる」

「すごい!ボディビルダーみたい。あはは!」

「何がおかしいんだよ」

「ごめん、力こぶ作ったのが面白くて」

 久しぶりに再会した幼馴染だけあって会話は自然と弾んだ。百合愛は今まで持っていた死にたい感情も忘れている自分に気が付かなかった。

「そうだメッセージアプリのID教えてくれよ。スマホに機種変して天城のメアド消えちゃったから」

 そう言って長谷川はスマホを出した。

「良いよ、これが私のID」

 百合愛もスマホをカバンから出してID交換を行った。


 そうこうしている間に乗っている列車は緑園都市駅に着いた。

 駅の改札を出た所で最後に長谷川はこう言い残していった。

「まぁ、なんだ。色々天城も1人になっちまって辛いと思うけど俺で良ければいくらでも話し相手になるし、幼馴染なんだから気の知れた仲だ。だから、俺の前では素直でいろよ」

「うん、わかった」

「じゃあな」手を振って長谷川は去っていった。


 自宅に戻る帰り道、何故だか胸が締め付けられるように苦しかった。

「素直でいろか…、昔よりカッコよくなってんじゃん」

 百合愛は会話が弾んだのは高校の友人というよりは中学の同級生のような感覚があったためだと思った。青園高校のことも思い出さなくて良い。長谷川が言った通り気の知れた仲だし。

 でもこの胸の苦しみはなんだろう。やはり罪悪感だろうか?謎の感情を引きずって家に帰った。

 家では母親が心配そうに出迎えてくれた。

「学校大丈夫だった?」との母親の問いかけに百合愛は「大丈夫だったよ」と答えた。

 部屋で着替えていると早速メールが届いた長谷川からだ。

『勉強とかでもわかんなければノート貸すし、色々頼って良いからな』

 百合愛はそのメールをみて思わず笑顔になった。

『ありがとう!これからよろしく』と返信を打った。


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