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死を見つめる瞳  作者: 自由の梨
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初日の授業

 あいさつを済ませると百合愛は指示された席に移動した。机の側面にカバンを引っ掛け真新しい教科書を取り出す。

 転校するにあたって買いそろえた新しい教科書だ。青園高校とは使っている教科書が違うのだ。

 1時限目の授業は数学。勉強していた甲斐もあって何とか授業にはついていけた。

 そうして4時限目までこなし昼休みとなった。購買部に行くもの、仲間内で集まって弁当を広げるもの、コンビニで買ってきたであろうサンドイッチを袋から出すもの、青園高校と同じ光景が目の前には広がっていた。

 それだけに百合愛には辛い光景だった。何気ない日常を見ると青園高校の頃を思い出す。涙が出そうになったので慌ててトイレに向かう。向かう途中も制服が違うので好奇の視線にさらされる。トイレにたどり着き個室に入って鍵をかけ声を押し殺して泣いた。

「(自分も死んでしまえば良かったのに)」そう思いながら百合愛は泣き続けた。


 昼休みのお弁当は結局食べられず、そのまま6時限目の授業まで何とか過ごした。ホームルームが終わると百合愛は荷物をまとめ即行で学校を出た。

 旭山高校の最寄り駅は相鉄本線鶴ヶ峰駅だ。百合愛は速足で駅まで向かった。自宅まではわずか3駅だが百合愛はなぜか駅に着くとすぐには帰りたくなくなってしまった。

 駅の自販機でジュースを買い、飲みながら列車が過ぎていくのを何本も見届けた。再び昼休みの光景が脳裏をよぎる。

「(列車に飛び込めば楽になれるのかな?)」心の中でそんな考えが浮かんだ。

『2番線を電車が通過します。黄色い点字ブロックの内側までお下がりください』とアナウンスが流れた。

 ゆっくりと百合愛は黄色い点字ブロックに近づく。そのまま列車が来るのを見計らって体を線路側に傾けていった。

 列車から凄まじい音の警笛が鳴らされる。接触まであと数メートルになったところで「危ない!」と男の人の声が聞こえたかと思うと腕を掴まれホームに引き戻された。

 轟音と共に列車は通過していった。

「死にたいのかバカ!」

 男の人は旭山高校の制服を着ていた。

 百合愛はとっさに「ごめんなさい、貧血気味で」と目を見て謝っていた。

 するとその男子生徒は「お前、天城じゃないか?」と言った。

 百合愛もどこかで見覚えのある顔を見て「長谷川君?」と答えた。

「天城!久しぶりだな中学校以来か」

 そう言って笑顔で語りかけてきたのは小中学校と一緒だった幼馴染の長谷川 京太だった。

「久しぶりだね、随分たくましくなったね」長谷川の姿を見て百合愛も答えた。

「せっかくだし一緒に帰ろうぜ駅同じだろ?」

「う、うん。良いけど」

 とっさの申し出だったが百合愛は了承して、二人は一緒に帰ることになった。


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