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死を見つめる瞳  作者: 自由の梨
3/10

不安と焦燥

「お母さん、今のニュース!」

 百合愛は泣きそうになりながら、共にテレビを観ていた母親に言った。

「た、大変よね。とにかく学校に連絡してみるわ」

 そう言ってポケットからスマホを取りだす。

 しばらくして母親は「だめ、話し中でつながらない」と焦りをにじませながら答えた。

 百合愛の脳裏に死というキーワードがよぎるが、必死でその考えを振り払う。

「(まだ墜落したと決まった訳じゃないきっと皆生きている)」


 夕方のニュースもこの話題で持ち切りだった。

 百合愛の期待とは裏腹に太平洋上で航空機の破片が見つかり、国土交通省の事故調査委員会は墜落した恐れが高くブラックボックスの回収を急いでいるとニュースキャスターが読み上げていた。

 そして、追い打ちをかけるように乗員乗客の生存は絶望的とも話していた。

「(死んだ…。マユも楓も、担任の先生もクラスの皆も…)」

 百合愛は絶望に打ちひしがれた。希望が全てついえた気がした。


 夜の18時頃家に学校から電話が入った。母親がそれに応じる。

「もしもし、天城(あまぎ)ですが。はい、はい、わかりました本人に伝えておきます」

 電話の後母親が百合愛の部屋をノックした。

「学校から連絡が入ったわよ。部屋入って良い?」

 返答はない。母親が部屋に入った。

 百合愛は部屋で一人泣いていた。母親が言葉を発する。

「学校は今対策を協議している最中なんだって。でね、スクールカウンセラーを置くから辛かったら電話してって。授業は無期限で休みになるわ。家でゆっくり休んで、あまり思いつめないでね」

 そう言って母親は去っていった。

 百合愛は言葉を発することができなかった。


 そうして自宅で過ごすことになったが、自宅で過ごす間も普段の休日と生活はあまり変わらなかった。9時頃起きて朝食を食べ、本を読んだりゲームをしたり。気分が沈んでいるような気がしたら散歩に出かけた。勉強も休んでいる分、教科書ガイドを買ってまだ習っていないところまで自宅で学習した。

 百合愛は成績は良かったし、運動も苦手ではなかった。容姿も悪くはなく、男子から告白されたこともあったが、恋愛には奥手で断ってしまった。特別好きな男子もいなかった。

 中学生までは幼馴染の男子がいて仲が良く淡い恋心を抱いていたが、高校で別々になってしまった。

「今何してるのかな…」勉強しながら呟いてみた。

 メアドは知っているけど連絡はしてない。突然連絡しても迷惑だろう。そんなことを考えていた。

 そんな百合愛に転機が訪れたのは夏休み目前の7月の初めのことだった。


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