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第五話 様子見

”急いては事を仕損じる”です!

準備ができたので、異世界に転移してきた。

懸案だった肉体の時間経過だが、見た目はそのままで若返ることが、データシートの設定で可能だと分かったので調整した。

見た目も若返ることは可能だが、それは日本での生活に支障が出るからな。

日本では、怪しまれない程度に特殊能力は使うことにしたよ。食費とか農業用の肥料とか燃料を節約する程度でね。

何事もほどほどが、一番揉め事が無い。

静かに暮らす、俺みたいな小市民を奴隷にするような屑どもは、成敗しないといかん!

日本で色々確認して、分かったこともあるしな。

それは、今考えることでは無いが。


紙 「さて、あまり時間がかかると不審に思った連中が、ドアをぶち破って入ってきそうだから、さっさとやろう。」


お面 「特殊能力の効果範囲が、半径100mになりやしたぜ。旦那。」


次元転移門で移動した影響か。この効果範囲というのは、データシートを改変可能な範囲だ。改変してしまえば、距離は関係ない。それと紙変換などが可能な射程範囲と言ったところだ。範囲が広がるのはいいが、体に負担になりそうだな。それは後で確認するとして、出入口のドアは鍵が掛かってるな。勇者召喚は、本来禁止されているからだろう。多少は時間が稼げるか。


紙 「先に魔法陣を処理しよう。データシート改変…。よし!事前に改変内容を作っていたものを、転写しただけだから、一瞬で終わったな。一応確認してと…。OKだ。」


お面 「人攫いどもも一括で改変しやしょう。」


お面に言われた通り、処理した。

さて、どう出るか分からんが、攻撃などに対応できるよう準備をして、屑どもの紙変換の取り消しをするとしよう。


紙 「これより、お面との会話は念話で行う。サポートを頼むぞ。」


お面 『了解です。旦那。』


取り消し実行!!


屑ども 「くせえー!!」「何これえーーー!!」「ぎゃー!うんこだぁー!」「汚ねぇー!!」「ふざけんな!!」「嫌ぁーー!!」「誰だ!上に乗ってるのは、降りろ!」「重い!臭い!」「潰れる!降りろー!」


阿鼻叫喚である。チリ紙重ねていたから、ああなるんだな。潰れた人間ピラミッドみたい。組体操と違って怪我人はいないようだが…。

見ていると、屑どもは、我先に出入口に殺到して出て行った。…女もいたけどタフだな。

いきなり怒り狂って、向かってくるかと思ったが、パニックを起こして俺に気付かなかったようだ。部屋に便が落ちているので、臭い。

どうしよう。不衛生だから日本に戻ろうかな?

魔法陣を改変し、召喚できないようにしたから、取り合えず安心だから。

そんなことを考えていたら、部屋の外から人の気配がする。今、日本に戻るのは、不味いな。


紙 『お面よ。データシートに設定したが、大丈夫なんだよな?』


お面 『大丈夫ですぜ。旦那は、想定通りに。』


そう言って、身構える。


? 「全く、禁忌とされている勇者召喚などを行うから、想定外のことが起こるのだ。」


? 「歴代で三人ほど緊急事態で召喚しましたが、全員が人攫いである我々を信用しなかった関係で、他国に亡命された歴史をどう考えているのでしょうね…。」


? 「想定外の事態が起きたようですが、異世界から勇者様は召喚できたのでしょうか?」


? 「失礼の無いようにしないとな。相手からしたら、我らは人攫いでしかない。」


? 「歴代の勇者を消耗品の奴隷として扱って、しっぺ返しを食らいましたからね。」


? 「ああ。国土の西側を見れば分かるだろうに…。無理矢理召喚するために、国内の魔石は、底をついたぞ。」


? 「兎に角、我らは、勇者に助力をお願いする立場だ。異世界に戻れないことを良いことに、奴隷とするなど、我らの方が余程下等な生命体だよ。」


声からすると三人程度か。

既に効果範囲なので、データシートの自動改変で隷属している。俺が命令するか、俺に対して有害行動を行おうとして、平伏する事態にならない限り、隷属されたのを認識しない設定にしてある。

なので、発言は自由だが、俺に対して攻撃は出来ないよう制限している。まあ、言動によっては、攻撃と判断されるようにしているけど。(拘束命令や攻撃指示などはね。)

外の連中も部屋に入るのは、警戒しているようだな。当たり前か。


紙 『お面よ。外の連中は、良識があるような会話をしているが、懐柔策要員の可能性もあるな。』


お面 『十分考えられますぜ。データシートの改変は自動ですが、内容の確認は悠長にやってられませんからね。警戒してくだせえ。』


紙 『ああ。これ見よがしに、聞こえるように話すとか、怪しすぎる。』


身構えたまま待つと、俺と同じ背丈(175cm)程度で中肉中背の男二名と160cm程度の女一名が、掃除道具を持ったメイドのような感じの服を着た者を三人伴って、部屋に入ってきた。

全員データ保存と隷属済みだ。

今の所、こいつら以外の気配はない。

警戒を緩めず、様子を見る。


? 「異世界の者よ。我らの都合で召喚という名の拉致を行ってしまい、申し訳ない。」


白髪頭で、俺より年上と思われる男が、頭を下げた。

他の者は、掃除の指示をしている。俺は、部屋の中央の魔法陣の中心にいるので、便が転がっている部屋の隅と出入口からは、離れている。

部屋は30m四方なので、特殊能力を使うのに問題は無い。

相手の言葉に反応しないで、見るだけにする。

俺を警戒しているのと、警戒心を持たれない為だろう。相手は、ある程度距離を取っている。部屋の中心にいる俺からは、10m程度か。

情報が少ない状態で話すのは、愚の骨頂だ。相手に情報を与えることにもつながるからな。


・・・・・・・・・・・。


沈黙が流れる。


まだ、様子見だ。

左右や後ろに回り込まれないように、注意しないといかん。

糞まみれの屑どもも、その内来るだろうしな。


紙 『お面よ。部屋の壁に背を付けるようにした方が、良いだろうか?』


お面 『それは、やらねー方が良いと思いやす。特殊能力の効果範囲もありやすからね。』


紙 『そうだな。では、想定通り言葉が通じないふりをして、様子を見よう。』


お面 『それが良いかと。現状は、魔法陣のデータシートの情報確度が高くなった程度でやすから。』


紙 『ああ。掃除が終わってメイドっぽい奴らは出て行ったが、他の連中に動きが無い。糞まみれの屑どもを待ってるのかもな。』


お面 『恐らくは。召喚を実行したのは連中でしょうから。』


膠着状態だが、仕方がない。

部屋にいる連中を観察しておこう。


一人は、先ほど頭を下げた白髪頭の男だ。60代ぐらいか。目は、日本人と同じ黒というか茶色の虹彩だ。明治時代の陸軍の軍服みたいな上着を着ている。ボタンじゃなくて、組み紐が服の前についていて、引っ掻けて止める感じだ。服も紐も色は黒い。ズボンも黒だ。

もう一人の男は、金髪碧眼で、20代後半から30代前半か。服装は、白髪男と同じデザインだが、色は茶色だ。

女は、まだ10代みたいだな。14,5歳と言ったところか。ベージュ色の服装だ。女物の服装は良く分からんが、シンプルなドレスみたいな感じだ。長袖で、スカートはロングって言うのか?足首までの丈だ。

靴は全員ブーツ履いてる。ジョドパー・ブーツみたいなやつ。

見た感じ、武装はしていないが、ここは異世界だ。俺の知らないような武器や攻撃方法があっても不思議じゃない。何せ、勇者召喚魔法陣という魔法がある位だからな。


しかし、白髪頭以外謝らねーけど、何考えてやがる。

警戒しつつ待つと、感覚で30分程度経った頃、バタバタと人が来る気配がする。


…俺を召喚した屑どもだ。人数は増えていないし、変わっていない。髪の毛を洗ったんだろう。ペタッとしている。


白髪頭 「異世界からの勇者殿をほったらかしで、何をしておる!」


屑女 「将軍、無礼であろう!私は、この国の第一王女であるぞ!」


金髪男 「姫様。将軍は、陛下より、治安維持の全権を得ています。姫様であろうと治安を乱す行為は、捕縛する許可を得ています。」


女 「姉上、兄上不在時に、このような勝手を行うとは、どういうことですか!」


屑女 「うるさい!この緊急時に対応するには、これしかないであろう!」


何か勝手に揉めてる。

他の連中は、遠巻きに見てるな。

俺の後ろに回り込むようなことはしてこないが、どうなるか。

屑女は武装していないが、10人ほどは帯剣している。何かゲームに出てくる中世の騎士っぽい格好だ。他の9人は、ローブって言うのか?フードの付いた服を着ている。ゲームとか映画に出てくる、魔法使いとか修道士みたいな感じだ。

こう言う格好だと、中に何を隠しているか分からんな。


様子を見ていると屑女が、こちらに気付いた。


屑女 「異世界からの勇者よ!我が召喚によくぞ応えた!我に従い力を貸せ!」


おいおい。いきなり命令かよ。魔法陣のデータシートにあった通りだな。冗談じゃないぜ。


白髪頭 「馬鹿者が!何を命令しておる!勇者殿に、失礼なことをするでないわ!」


屑女 「ふん!高貴な私の為に、下等な異世界人が働けるのだ。名誉に思っても失礼などあるか!」


女 「姉上!何を言っているのか理解しているのですか!勇者様からすれば、我らは人攫いなのですよ!」


屑女 「何を申すか!異世界の存在を知らず、召喚方法も持たぬ者達を、下等な存在として扱うのが何が悪い!」


あーあ。ペラペラとまあ、色々喋ってくれるよ。白髪頭どもが、歴代の召喚勇者に仕返しされたようなことを話していたが、これじゃあな。

芝居かと思ったが、王族のようだし、権威を落とす芝居はしないだろう。


紙 『お面よ。こりゃあ、想定より、大分馬鹿だぞ。こいつら。』


お面 『驚きやしたね。禁忌とされてるものを行ったので、問題ある連中とは想定しましたが、絵に描いたような馬鹿でやす。旦那、そろそろ動きやしょう。』


紙 『了解だ!』


息を吐いて、深呼吸してから行動開始だ!

馬鹿の相手は、疲れるが仕方がない。

やれやれだぜ。



段取りは十分です!


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