第四話 想定
短めです。
一晩休んですっきりした所で、異世界対応をどうするか相談しよう。
まあ、親兄弟が既にいないから、天涯孤独の俺は、相談すると言ってもお面とだが。結婚もしていないしな。身内がいても相談するのは、マズイけど。
先ずは、お面を呼びだして、特殊能力の確認をするのが良いだろう。
異世界にいた時は、日本に戻るのを優先したからな。
勇者召喚魔法陣は呼び出し専用だし、俺の次元転移門なら、戻った一瞬後に転移可能だから、時間は気にする必要は無いだろう。
…俺の肉体の時間経過は、問題か。
それは、後で考えるとして、『特殊能力:紙』について確認しよう。
紙 「お面よ。出てきてくれ。」
お面 「お早うごぜえやす。旦那。」
紙 「お早う。お前に頼ってばかりで悪いが、行動指針としては、準備ができたら、あっちに転移して、魔法陣を改変しようと思ってる。召喚しようとしたら爆発して、木っ端みじんになるようにな。その方が魔法陣を破壊するより、良いと思う。それと大量虐殺をして、召喚何ぞしようと思わないようにするのが、良いと思う。下等な異世界人を召喚するのではなく、天災のような存在を呼び出す魔法陣だと認識させるために。それに知的生命体を完全に絶滅させるのは、困難だろう。可能なら、その方が良いと思うが、必ず生き残りが出るはずだ。」
お面 「頼るのは気にしないでくだせえ。そうでやすね。旦那を攫ったやつらは、どんな三文芝居をするか分かりやせんが、色々想定しときやすか?」
紙 「そうだな。魔法陣のデータシートによると、洗脳メインのようだからな。『勇者様!お助け下さい!』とかベタな芝居しそうだ。今時そんなのに騙されるアホいるのかね?」
お面 「旅先で気分が高揚して、判断力が低下するせいで、不要なゴミを買っちまうってのもありやすから、精神的成熟度が低い青少年なら、美女に泣きつかれて騙されるのは、あるんじゃねーですかい?」
紙 「あー、それはあるかもな。だが、向こうに行ったら、人攫いどもは、紙変換を取り消すと糞まみれだからな。あの時の便は、快便ではあったが、半練り状だったから。チリ紙が20枚ほどだったが、拭き取れるかギリだったし。」
お面 「奴らの保存したデータも20人分ですからね。これは、あっしの私見ですが、人攫いどもを元に戻したら、旦那を無視して、一度体を洗いに部屋から出るんじゃねーですかい?魔法陣が一方通行なのは知ってるでしょうから、旦那は逃げれないと考えるでしょう。旦那の特殊能力は、想定していないものでしょうし。」
紙 「そうかもしれんな。尻剥き出しなのは、見られてるだろうから、糞まみれにしたのが俺だと判断して、激怒して暴力に訴え、捕まえようとするか、『命が惜しければ、奴隷として従え。』とか言い出しそうだな。俺は、青少年じゃなくて、おっさんだし。」
お面 「そうでげすね。でも先に奴らのデータシートを改変して、旦那に隷属するようにしておけば問題ねーですぜ。」
紙 「紙変換した状態でも出来るのか?」
お面 「出来やすよ。今は、半径50m以内の者なら一括で改変出来やすよ。データシートは、本体と別ですから。」
紙 「そうなんだ。あ、俺の特殊能力について、詳しく教えてくれ。物質・事象・存在を紙として扱うって言われてもピンと来なくてさ。」
お面 「わかりやした。能力を把握してないと問題ですしね。」
そう言って、お面に説明してもらう。
紙変換は、紙にするのは見たから分かるけど、データ保存とかは、紙と関係ないと思ったら、コピー機とかスキャナで紙から画像データとして、取り出したり、プリンターで紙にデータを出力するので、紙に関係する能力として扱われるそうだ。
念話とかは、会話の一種としてデータの改変で作れるそう。
出来ないのは、元になる存在が無いものだそう。
面白いのは、データ保存してもデータ元は、そのままあるということだ。データさえあれば、複製して紙出力し、”還元”という処理をすると人でも物でも存在を複製できる。分かりやすく言うと人をコピーできると言うことだ。
データを保存したりする容量は、制限は無いそうだ。今の所負担になる特殊能力は、次元転移門のみ。次元転移門も勇者召喚魔法陣のデータを複製して、改変で作成したものだ。ネーミングセンスがどうかと思うが、異世界物小説を参考にしている為だそう。名称変更は可能だが、使用に問題無いので気にしないでおく。
特殊能力の説明を受けて、食糧その他をデータ化し、攻撃や防御対策などをデータシートに設定して、異世界対応準備を行った。
さあ、勇者召喚という人攫いを何故行ったのか、御託を聞こうじゃねーか。
三文芝居その他は、想定済みだぜ。待ってろよ屑ども。