第三話 データシート改変
急展開です。
いきなり出現した”お面”に驚いたが、特に攻撃その他をすることも無い。
害は無いって事か?
会話できるようなので、話してみるか。
紙 「あー。私は、紙 創平と言います。言葉は通じますでしょうか?」
お面 「旦那、何で畏まっているんですかい?あっしは、旦那の能力の一つ。アシスタントのマスクと言いやす。」
民芸品のお面の癖に、アシスタントで”マスク”とな?
しかも俺の能力だって?
紙 「えーっと、じゃあ、普通に話して良いのかな?堅苦しいの苦手だから、その方がありがたいけど。」
お面 「ええ。そうしてくだせえ。」
紙 「マスクって言うのか?お面じゃなくて。アシスタントって言ったが、何ができるんだ?」
お面 「”お面”でもかまいやせんが。お面もマスクの一種ですし。あっしは、能力の解説と旦那のサポートでやす。ただ、直接的な防御や攻撃は出来やせん。アドバイスは出来やすぜ。」
紙 「なるほど。ただ、お面と話しているのを見られるのは、不味いと思うんだ。ウインドウとかもさ。あとデータシートも。」
お面 「心配いらねーです。旦那の能力で他の者が見ることが可能なのは、あそこの尻を拭いた紙のように、変換したものでやす。あっしとの会話も聞こえません。旦那が口をパクパクさせているようにしか見えやせん。データシートも他の者には、見えませんし、触れません。」
他の者に見えないのは良いのだが、一人で口をパクパクしてると言うのも嫌だぞ。
紙 「そうなのか。それなら良いが、口パクパクするのも不味いぞ。読唇術が使える者に見られると問題だ。」
お面 「それはありやすね。では、旦那自身のデータシートを参照してくだせえ。改変機能を使って、念話できるようにしやしょう。」
俺自身のデータシートを参照できるのか?さらに、改変機能で能力も追加できるの?
紙 「そんなことできるの?」
お面 「できやす。『本人データシート参照』って思ってくだせえ。」
言われた通りにやってみる。
手に書類が現れた。
どれどれ…。
『紙 創平 データシート』
表紙は表題だけだ。
めくってみると少し書いてあるな。
魔法陣の時より内容が少ない。
内容は、こんな感じだ。
名前:紙 創平
年齢:40歳
性別:男
種族:人間(異世界人)
特殊能力:紙
…ナニコレ?
これだけなの?
書類は、表紙と中身の2枚しかない。
紙 「お面よ。データシート見たけど、『特殊能力:紙』ってあるだけなんだけど…。」
お面 「旦那の特殊能力は、全ての事象・物質・存在を紙として扱うものでやす。人攫いどもをチリ紙にしたでしょ?旦那は、人の尊厳を失って、まさに無敵でやすよ。先ずは、念話できるようにしやしょう。『データシート改変』て思ったら、『念話』追加と思ってみてくだせえ。」
言われた通りにしてみると、特殊能力に『念話』が追加された。
紙 「これで、お面と念話できるの?」
お面 『旦那聞こえやすか?これが念話ですぜ。』
紙 『おお!わかる。聞こえるというより、頭に情報が伝達されるって感じだ。お面は、どうだ?』
お面 『感度良好でやす。』
これで人前で能力を使っても大丈夫か。
今の所、外部から人は来ていないようだが、いつ来るかわからん。
取り合えず、自宅の便所に戻る能力が追加できないか確認しよう。
紙 「お面よ。元の世界に戻る能力は、追加できないか?」
お面 「可能でやすよ。戻るだけではなく、行き来できる能力になりやすが。」
紙 「本当か?」
お面 「嘘言っても仕方ありやせん。『次元転移門』って能力でやす。勇者召喚魔法陣をデータ化して、保存しやしたからね。ここは、メソポ王国のネンドバーンって場所のようですが、この地の地脈の力を根こそぎ奪いやした。旦那が特殊能力を追加すれば、魔力とかその他の条件を一切無視して、移動出来やすぜ。」
紙 「そうなのか。戻るにしても、こちらの病原菌などを持ち帰るわけにいかんだろう。対策できるか?」
お面 「可能でやすよ。次元転移門の設定に、日本に戻る時は、病原体完全無効化を追加すれば良いんでやすよ。」
紙 「なるほどな。人攫いするような連中の世界に、気を使う必要は無いが、日本発祥のパンデミックとか避けたいからな。」
お面 「取り合えず、一度日本に戻りやしょう。あっしら特殊能力が、無くなるかもしれやせんが、奴隷はごめんでやす。」
そうだな。言われたように『次元転移門』の能力を追加し、起動して日本に帰ってきた。
…場所は、召喚された自宅の便所だ。便も残ってる。さっさと流そう。
◆◇◆◇◆◇
さて、あっけなく戻ってこれたが、勇者召喚魔法陣は破壊した方が良いな。
日本には、年間何人もの行方不明者がいるようだが、そのうちの何人かは、俺のように奴隷として、異世界に攫われる奴がいるのだろう。
再度、俺が召喚される可能性が無いわけじゃない。
そんなのは、ハッキリ言って迷惑だ。
今日は、仕事しないで、色々と確認とかした方が良さそうだ。
さて、どうしたもんか。
・・・・・・・。
刺激が強すぎたせいか、考えがまとまらない。
今日の所は、休むとしよう。
次元転移門も時間軸調整ってのを設定したから、それぞれの世界で転移した一瞬後に戻るようにしてあるからな。
今の所、問題は無いだろう。
向こうの世界と時間の流れ方の違いがあるかは不明だが…。
問題対応は、焦ると失敗するからな。
特殊能力が使えるのか分からんが、お面を呼んでみよう。
紙 「お面よ。出て来れるか?」
お面 「何でげしょ?旦那。」
紙 「おお!良かった。特殊能力は使用できるみたいだな。」
お面 「大丈夫ですぜ。あっちにいた時より強化されましたよ。次元転移門で、世界の狭間を通った影響のようでげす。」
紙 「そうか。お前には、日本に戻るのに、世話になったからな。礼が言いたかったんだ。有難う。」
お面 「よしてくだせえ。あっしは、旦那の一部ですぜ。自分に、礼を言うのはおかしいでげしょ?」
紙 「それはそうだが、お前は自我があるようだからな。礼は言っておきたい。」
お面 「気にしないでくだせえ。今日は休んだ方が良いですぜ。それなりに、体の負担になってますよ。」
紙 「ああ。確かにだるい。」
お面 「次元転移門は、かなり体力を消耗するようですぜ。勇者召喚魔法陣よりは、ずっと省エネですがね。」
紙 「だけど、これだと向こうに戻って、魔法陣を破壊する体力が残ってるかだよな。」
お面 「旦那自身のデータシートに、体力瞬間回復とか追加すれば大丈夫でげしょ?」
紙 「そうだな。こっちでも改変できるのか?」
お面 「出来やすよ。」
紙 「そうか。まあ、後でやろう。焦って失敗するの嫌だし。」
お面 「そうしてくだせえ。あっしも消えます。」
お面と話して、休むことにした。
この辺は、自営業ならではだな。
きっちり休んでから、対応しよう。
取り合えず、日本に戻りました。