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その三

 次の授業も、その次の授業も、そのまた次の授業も、ひたすら竜の生態についての講義が続きこの頃になると疑惑の目が向くようになってきていた。

 授業内容や教え方事態は問題ない、上手い訳ではないし親身で各生徒に合わせた訳でもないが評価としては並より上。

問題はそれ以外の部分だ。例えば歩き方や咄嗟の反応、確かに日常的に気を張っているような奴は居ないが剣術科にしろ武術科にしろ、それらの教授は隙がほとんどないし所作にも無駄がない、だがアルフレッド・カラスにそう言った、言わば強者の持つ雰囲気や、達人の所作を持たず、駆け出しの冒険者や見習いの騎士の方がまだ優れていそうな雰囲気を持つという程に脆く弱く薄く浅い。

例えば剣術、空き時間を潰すためか剣術や基礎体力科に顔を出して生徒に混じっていろいろとやっているが基礎体力はともかくとして剣術は素人よりマシというレベルでともすれば入学仕立ての生徒と同程度でしかない、ならスラッシュ等の戦技はと言うとこれまた同じくでダブルエッジまでは使えるらしいがそれ以上を使っている所を見た者は居ないし、授業で教わっていても習得に時間が掛かっている。


 そのため疑惑が生まれ、噂が飛び交ったのは必然であった、すなわち『偽者ではないか』と、或いは『竜を殺してなんていなくて同族に殺された死体を殺したと言った』と、もしくは『何かしらの方法で本物そっくりの偽物を用意した』と、そんな風な噂が飛び、週が明けて7回目の授業もまた懲りずに飽きずにひたすら竜の生態について。

 確かに詳しいし細かな特徴やブレスを吐く前の予備動作、鳴き声から考えられる状態等の教科書には乗っていない、生物学科の教員でも教えていない事を教えている。

そして10回目の授業でとうとう言った言葉が『えー今日からは今まで学んだ事を念頭に如何に出会わないか、出会ったとしてどう逃げ切り隠れれば良いかを教える』ともはや倒し方や殺し方から大きく外れた事を言い出した。


 この頃になると授業を受ける生徒も少しずつ減り、立ち見が僅かにいる程度だったが、その日を境に一気に半分以下に、回を重ねる毎に座れる場所がないという程に混雑していた筈の教室は数人がチラホラいる程度にまで減っていた。

 そんな事には頓着しないとでも言うように相変わらず竜からの逃げ方や身の潜め方、万が一見付かった時の対処法等をまるで見てきたかのように言う、もはや詐欺師かなにかにしか見えない英雄をそれでも見続け学ばんとする奇特な生徒も、その理由は打算でしかない、とりあえず単位が欲しいから、とりあえず試験を受けて満点は無理でもテストの点が欲しいから。

卒業に必要な単位数とテスト結果に不安のある生徒の行き着く先、そんな風に竜殺科が揶揄されるようになったのは僅か半年足らずの事だった。


 さらに1年が過ぎ、その頃になると新入生が数度受けて来なくなるというのが基本で、やむにやまれず受講する生徒がいる程度、試験まで受けたのは1年で20人程度、大半が国内外の王族から王命を受けた貴族か、授業料が払える目処が建たず卒業を早めた生徒が僅かにでも単位と点数を求めてというのが少し。

 試験まで進んだ生徒は口を揃えて詐欺師に近いという評価しかしない、確かに実技試験は竜の皮で作ったとされる盾を見せられ、その名に恥じない強度と能力を持ってはいたが、彼の言うようにクリアできた生徒はいなかった。

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