その十
全てが終わっても長い絶望は明けない、壊れた建物は学院だけだが死傷者は数多く、生き残った者の心に影を落として圧倒的な恐怖とトラウマだけが残っている。
それでも人の営みというのは凄まじく3ヶ月程度で壊れた部分の補習を終え、内装が整い授業が再開できるまでになった。
だが生徒達の半数近くは耐えきれずに自主退学していく、机を共にした友人が死んだ者、死した者を見てしまった者、或いは卒業後の進路は大抵が騎士団か冒険者で命のやり取りをすると今さら気付いた者、様々な理由でトラウマと凄惨な記憶が彼らを学舎から去らせた。
その分だけ変わりに別の生徒が入って来るだけだがそれでもやはり数は減っているしやる気もかなり減ってしまっている、魔法が一切通じなかった教師達は皆一様に名の知れた魔導師であり一流と言って良い実力者、その彼らの魔法はそよ風程度にもならなかった、ならば才能で劣る自分達は無風だろう。
勇敢に立ち向かい食われて死んだ剣術科の教師は、やはり名の知れた剣豪で、その一撃が赤子の一撃に劣るなら自分達は蚊の一刺しに劣る。
あの事件を経て残る決意をした生徒ですらその大半は自らを卑下して上を目指す事を止めて淡々と授業を受けるだけになってしまい、新入生もまた大事件の残り香を受けて自粛ムードが漂う中で上を目指す気概は消えてしまう。
教師もそれを良しとして喪に服す意味でも派手な行動を控え上昇思考を持てと指導する事もない、そんな負のスパイラルの中でも一部、ほんの一握りの生徒と教師だけは気概に溢れ燃えていた、或いは復讐の炎に、或いは動けなかった自らの弱さと浅ましさを越えるために、或いはそのフリをする事で心の平穏を保とうとして、或いは恐怖に立ち向かうために。
教師が3名と生徒が37名、合計で40名が王都の報告の後に討伐に向かった竜殺しの授業を今か今かと待ちに待ち、ようやく再開された授業を受ける。




