カナエと共に
都を見下ろす崖の上。
そこには暇を与えられた少年と少女がいる。
青い髪の少年、ユウタは大きな石に花を添える。
赤い髪の少女、カナエが大きな石に水をかける。
綺麗に並んだ大きな石は三つある。
「ユウタ……最後まで、助けられたね」
「そうだな。俺達、まだまだだ」
都に戻った彼らには莫大な報奨金と長い休暇が与えられた。
ユウタとカナエはこの休暇を使って一度故郷の村に戻ろうと思っている。
でも、ユウタは思う。
外見が大きく変わってしまった自分達を見て、村人は軍の者たちと同じく大きく動揺するかもしれない。化け物扱いするかもしれないと。
「化け物って言われたらどうしよう?」
「まだ気にしてる」
「そりゃ、気にするさ」
都で子供に石を投げられた。
怪物だと言われた。
……大人も同じだ。
「元には戻れないのかな?」
「時間は巻き戻せない」
暇を言い渡されたときの事をユウタは覚えている。
軍令部の連中は、ユウタとカナエを何か奇妙で恐ろしいものを見る目つきで眺めていた。
ユウタは悟る。
──ここに居場所はない。
ユウタの呟きに、カナエの諦めにも似た言葉が続く。
「じゃぁさ、今度生まれ変わったら平和な世界が良いな。そして、こんな酷い目に会わなくて済む人生が送りたい」
「何を夢みたいなこと言ってるの? 生まれ変わるなんてありえない」
「でも俺、前世の記憶があるんだぞ?」
「知ってる。それユウタの得意な嘘」
「嘘じゃないって!」
「……嘘だもん」
ユウタはそんなカナエに意地になる。
「今度もカナエと一緒に転生する!」
「え?」
「俺、好きな子と一緒に転生するんだ! そして今度こそ幸せな人生を送る!」
「今は不幸せ?」
「え?」
カナエがユウタの手をとる。
今度はユウタが驚く番だ。
「今、幸せが良い」
「俺、今幸せかも……」
「良かった」
ユウタはカナエの手を強く握り返す。
「痛いっ……」
「ごめん!」
ユウタはカナエの声に驚いてさっと手を離す。
「これ……」
カナエの掌の上に青と赤に輝く石が一つづつ乗っている。
「カナエ! 聞いてくれ。お前、髪と目が黒い」
「ユウタ……。ユウタの髪と目も黒い……」
「俺達もしかして……」
「元に戻った!」
「戻った!!」
ユウタはカナエの掌から赤い石を取り仕舞う。
カナエは青い石を取り大事に仕舞う。
二人はどちらからとも無く手を差し出す。
二人の手が繋がれる。
「帰ろう。村へ」
「うん。ユウタ。一緒に帰ろう?」
ユウタは頷く。大きく頷く。
「もちろん!」
二人はどちらからともなく駆け出した。
ちょうど、村を出たときのように。
*** 謝辞 ***
応援してくださった皆様、ありがとうございました。
正直応援がなければ筆を進めることもできなかったでしょう。
本当に感謝しています。




