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無数の屍の上にて
※この作品で使われる「戦犯」は実際のものとは異なることがあるのであらかじめご了承ください。また、ご要望等あればなんなりと。
眼前に広がるはすでに肉塊と化した
夥しい数の兵士の群れ。
嫌悪感を呼び覚ますこの臭い。
己の嗅覚を執拗に刺激するその正体は
死の臭いに他ならなかった。
―何度経験しようとこればかりは慣れることはないだろうな。
戦場で一人佇む少年は胸の内に葛藤を抱え、
しばらく身動き一つ取れなかった。
―みんなを…。俺がこの手で…。
俺もここで果ててしまおうか。
そうすれば、もう…。
罪悪感と絶望と苦痛を練り合わせたような
そんな気持ちが沸き上がる。
自然と手に持った小刀を胸に突き立てていた。
あとほんの一瞬この手を引き込むだけでいい。
たったそれだけでこの苦痛から解放されるのだ。
迷うことはない。死ぬ覚悟は初めからできていたのだから。
『トーリ!』
頭の中で愛しい声が響く。
「だめだ、まだ、死ねない。彼女を…。」
そう呟くと彼は前方にそびえ立つ鉄の巨城を見据え歩き出した。