003 ユニークモンスター
「……っ!?何だ!?」
そう辺りを見回すと、自分の知らないmobと、数人の女性プレイヤーが戦っているのが見えた。おそらく、先程の悲鳴は彼女達から出されたものだろう。
「あれは……彼女達には悪いけど、負けるな。でも、あんなmobuいたかな?」
と、目を細めて見てみると、
[マッシュトレント Lv.19]
の文字が浮かび上がった。
「っっっ!?Lv.19!?なんでこんなところにあんな高レベルな敵がいるんだよ!」
そして、彼女達を見てみると、
SERA Lv.6
HARUKA Lv.2
MIMI Lv.8
REI Lv.4
と表示される。
「こんなにレベル差があるんだったら、負けるのが当然だな。それにしても、レベルのばらつきが目立つな……野良か?」
野良とは、決められた固定パーティではなく、その時に応じてだけ、組むことのあるパーティーである。
「でも、なんで諦めないんだろう?」
そう、そこが疑問に思っていた。あれが新しいボスにしても、またレベルを上げてから挑戦したらいいのだ。何も、無茶してまで倒すメリットがない。その時、女性パーティーの誰かが叫んだ。
「ねぇ!このモンスターって本当に倒さなきゃいけない相手なの?」
「そうだよ!このモンスターはユニークモンスターだからね!」
(ん?ユニーク…モンスター?そんなものはβ版では無かったぞ?どうしよう……このまま戦闘に参加すれば教えてくれるかな?)
と思い、1人の女性プレイヤーに声を掛けた。
「ねぇ!そこのきみ!僕もパーティーに入れてもらってもいいかな?」
そう、俺はゲームの中では一人称が「僕」になる。無意識に、染み付いてしまっているものだから、こればっかりはしょうがない。
すると、パーティーリーダーらしき女性が、
「……いいわよ!私たちにはこのモンスターは少し厳しいし、猫の手も借りたいぐらいだわ!」
と、あっさり了承してくれた。
「ありがとう!で、このモンスターは一体何なの?こんなモンスターはいなかったと思うけど……」
「このモンスターはユニークモンスターといって、出現方法、出現地、共に不明なモンスターよ。結構強いんだけど、レアドロップがとてもいいらしいわ!」
と答えてくれた。
(ふむ……だからこのモンスターにこだわっていたのか…確かに、出現する方法がないんじゃ倒そうと躍起にもなるか)
「じゃあ、これから僕が言う事を聞いて動いてね!」
と、叫んで、指示を出す。
「セラはトレントの後ろに回って攻撃!ミミとハルカは両側、レイは僕と一緒にトレントの前で回避に集中!」
「「「「了解!」」」」
と、各プレイヤーが配置に着き、戦闘すること5分、[マッシュトレント]のHPバーが消え、その巨体が倒れた。
「「「「「や……やったぁ!」」」」」
それぞれが喜び、叫び、ドロップ品を確認する。
「うーん……私は[トレントの胞子]だった…ハズレかな。」
「私も~。」
「私は[トレントの枝]ね、これもハズレかしら。」
「私も同じね。ちぇっ。やっぱり、レアドロップは出にくいからレアドロップなのよね……そういえば、途中参加のあなたはどうだったの?」
と聞いてきた。
(……どうしよう。これはレアドロップなのか?いや、性能的に完全に壊れてるよな…… マジでどうしよう。)
と、ドロップした防具の詳細を見ていた。
[トレントブーツ]
スキル・・・俊敏(素早さup)
空中歩行(空中を歩けるようになる、歩数制限あり)
風の加護(遠距離攻撃弱体)
他人譲渡不可(他人に渡すことが出来ない)
「……うん、[トレントの胞子]だったよ。」
と、嘘をついておく。恨まれても嫌だしな。
「そう、じゃあ、このパーティー解散!お疲れ様でした!」
「「「「お疲れ様でしたっ!」」」」
そうして、俺はユニーク防具を手に入れ、ユニークモンスターの事も知ることが出来た。結果的にはとても+だったと思う。
俺がホクホク顔で歩いていると、不意に声をかけられた。
「おーい、そこの君!ものすごく戦闘うまかったよな!俺にも教えてくれないか?」
そう言われ振り向いてみると、
KAITO Lv.8
の表示と共に、どこかで会ったような顔が見えた。
そう、声をかけてきたのは親友で、このゲームでは絶対に合わないようにしようと誓っていた、快人だったのだ。