八話 もっともっと鍛えよう
ある日の一日、悠馬の店はしまっていた。理由はとても簡単だ。悠馬自身のレベル上げのためである。
取り合えず自分用にと今までであまった素材などの切れ端を集めておいたのをつなげ、継ぎ接ぎのマントを作る。それを羽織り、ギルドへと向かった。
「とりあえず、討伐依頼を頼む大量にいる奴だ。」
「ほいほい。これはどうです。大量ってもんです」
エマが取り出したのは、ゴブリンの討伐依頼だ。
ゴブリンは定期的に巣をつくりそこで繁殖する。それを一気に討伐してくるのが今回の依頼だ。
「じゃあそれでいい。行ってくる」
「あ、そういえば先に受けた人もいるから。がんばるってもんです」
討伐依頼は大量の数を相手にするため、受ける人は何人でもいい。払われる報酬は人数が増えようと一定なので問題は無い。
こうして悠馬は道案内を使いゴブリンへと向かっていったのであった。
ゴブリンのいるほうへ道案内でやってきた悠馬は先に来た人が戦っていることに気がつく。
鉄の折れた剣を持って何とかゴブリンの包囲から逃げようとしているところだが。それを見た悠馬は走り出す。今まで通ってきたのは森。その中なかの一本の木を強化を使い蹴りとばす。そしてその加速により一気にゴブリンへと突っ込む。
ゴブリンは追い詰めている獲物に注意がいっているため悠馬には気がつくのが遅れた。
悠馬は最初の一匹にドロップキックを叩き込みそのままの勢いで二匹、三匹となぎ倒す。そして五匹目を蹴り飛ばした勢いで空中に飛び上がり、逃げている最中の先客の背後に降り立つ。
「助けは要る? 百Gね」
「悪い。頼む」
そう簡潔な受け答え。悠馬は折れた剣を奪い取り加工で直ぐに修理をして返す。そして襲い掛かるゴブリンに掌底を叩き込む。後ろの何匹かを巻き込み吹き飛んだゴブリンを視界から外し回し蹴りで周囲のゴブリンをなぎ払う。そして学者にゴブリンと自分とでは二十ぐらいレベルが違うことを確認する。もちろん悠馬のほうが上だ。
そして悠馬は弱点が人間と大体同じだと言うことも確認する。
そして取った行動は両手を広げ刃を使い強化を自分の体にかける。そこからの突撃だった。
伸びた両腕にかけた刃がいい働きをし強化によっての突進でゴブリンの頭が飛んでいく。血の噴水を作りながら悠馬は駆け抜ける。駆け抜けたあとには血の道だ。
こうして悠馬は時々スキップやその場で回転などを加えまるで踊るかのようにゴブリンを片付けたのだった。
「百Gには修理代も込みだから」
「おう。安いな。あと、ありがとな」
悠馬は助けた人と談笑していた。かってに百Gと命とを比べられ怒っていたが、剣の修理だけでも儲けたとわかったとたんその怒りは収まった。絶対に助けがいる状態で問答無用で金を出せなどまともな人はいわない。
「俺はゴイルだ。また何かあったらよろしく頼む」
「了解。俺は悠馬。店やってるから今度来たら割引してあげる」
「そうか。ありがとな」
そう男は言い依頼は完了したかのように見えた。が突如咆哮が辺りに響き渡る。
「やべえ。キングゴブリンだ。お前レベル何ぼだ。俺は八十だ」
「あーと百三十だ」
「じゃあいけるか? あいつの適正は百二十だ」
「いくらだす?」
「二百G」
「了解」
悠馬はゴブリンは倒したのだ。キングゴブリンなど倒さなくても依頼は完了となる。だがゴイルに倒せそうだと言われたとたん交渉に入る。明らかに安値だが問題は無い。ここで印象を良くしておけば顧客が増えるかもしれないのだ。なら金を取るなと言いたいところだが冒険者は見返りなしに依頼は受けないのだ。
そうしているうちにゴブリンどもの死体が一斉に起き上がる。そうしてそれらがまるで引き寄せられるかのように血が肉が集まり団子状になっていく。そして突如それらが萎び崩れ落ちる。そこから二メートルほどの巨体で頭には一本の角。筋肉質の両腕には棍棒を一本ずつ持ったキングゴブリンが現れた。
「うっは強そう。お前どうする? にげとく?」
「ああ。おれじゃあ瞬殺だ。遠くから見学させてもらうぜ」
そういいゴイルがにげていく。悠馬はゴイルにキングゴブリンが行かないようにする。がキングゴブリンはゴブリンの萎びた死体をあたりに撒き散らすだけで何もしない。
悠馬は学者を発動する。
キングゴブリン 弱点 火
配下のゴブリンの元へ転移できる。死体でも。
そしていつも身体強化と障壁で体を守っているため上級者でもキツイ。
「おお強そう『火の玉』」
悠馬が牽制に放った握り拳一つ分の大きさの火の玉はキングゴブリンの棍棒一振りによってかき消された。そして不意にキングゴブリンの姿が消える。とっさに悠馬は後ろに体をひねり蹴りを繰り出す。そしてその蹴りはキングゴブリンによって振り下ろされた棍棒とぶつかりそのままの勢いで両者共に二歩後ろへ下がる。悠馬はすぐに体制を整え一歩踏み出し右腕で掌底を放つ。そしてキングゴブリンが消える。が右腕の掌底を振りぬいた勢いで回転し振り向き、背後に回っていたキングゴブリンに左手で目潰しを突き刺す。
「痛って。障壁やめろよ。目を狙って突き指って痛いんだから」
悠馬の軽口にたいしてキングゴブリンは棍棒を振るうことで答えを返した。
右腕でのすばやい棍棒の振りから左腕の痛烈な一撃。先ほどに散らしたゴブリンの死体へ転移し、一気に悠馬を攻め立てる。あるときは正面に現れ左腕の痛烈な一撃を。またあるときは背後に現れ右腕の連撃から蹴り。対して悠馬も果敢に攻める。殴り蹴りつけキングゴブリンが消えれば周囲に蹴りを放ち裏拳で牽制し両者一歩も譲らない。
そしてついに決着の時がくる。
「『火の海』」
あたり一面に炎を巡らせゴブリンの死体を焼くと同時にキングゴブリンの顔面に炎をつける。一瞬キングゴブリンの注意が悠馬から外れる。その隙を悠馬は捉えた。それは偶然だったかもしれない。だが確実に捕らえたのだ。悠馬の右腕の掌底がキングゴブリンの腹へと突き刺さりそのまま顔が左フックの餌食となる。そして悠馬は地面に落ちようとする顔面に膝を叩き込む。そして棍棒を落としだらんと下がった両腕、生気のないぐちゃぐちゃの顔。それらが浮き上がり目の前に現る。それを渾身の蹴りを繰り出し無防備な体へ叩き込む。
吹っ飛ぶキングゴブリン。地面にぶつかり舞い上がる土煙。だが悠馬はその土煙に向かって走り出す。
ゴブリンは燃やした。もう逃げ場は無い。だが安心は出来ない。土煙の中倒れているキングゴブリンへと近づいた悠馬は振脚を繰り出し頭を障壁ごと砕き踏み抜いた。
「ふう。いい仕事したぜ」
遠くで見ていたゴイルは語った。悠馬はそこらの魔物よりおっかないと。
こうして討伐を終えた悠馬は当初の目論見どおりレベルを上げることに成功しギルドに寄り依頼を完了したあとご機嫌で店へと帰っていった。




