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四話 レベルなんてお飾りだ

 悠馬は今、捕まっている。理由は簡単。大量のナイフを持って町へ入ろうとしたからだ。

 悠馬が袋を担いで出発し、何事もなく道案内で一気に町に着いた所まではいい。しかし門のところで袋の中身を確認したとき門番の目の色が変わった。悠馬は売るためだと言い張ったが門番は一切聞かず、ナイフを袋ごと取り上げ、詰所の中へ引きずり込んだのだ。


「なあ、持ち物返して。お店作ったとき割引してあげるから」

「うるさい。もう一度聞くがこれはお前が作ったんだな?」

「そうだって。加工つかえるから。なあもういいだろ。かーえーせー」

「ふん。そんな若いのに鍛冶スキルを進化させてるわけないだろ。どこで取ってきた」


 門番は悠馬がこのナイフを別の町で盗んできたのだと考えていた。自分でさえも戦士スキルを守護兵に進化させたのは最近なのだ。それがこんなに若く進化させることなど出来ないと考え、嘘をついていると思っているのだ。


「なあカードあるよほら。加工に学者に急所、おまけにね器用まで持ってるの。ほら見て信じて尊敬して」

「な! お前学者だったのか。そこは尊敬する。器用も持ってるのか。学者ならまあ変人でも納得できるな。」

「学者ってすごいの? さあお詫びにおしえるんだ」

「そんなのも知らんのか。学者は物知りの進化スキルだ。王国の研究員ぐらいの知識で進化する。ついでに器用は器用貧乏の進化だ」

「うん知ってる。聞くの面倒くさいから自分で調べた。学者って便利」

 

 悠馬が適当に答え門番が吼えるがちゃんと説明は続けてくれる。門番は善良な人なのだ。


「ぶっ殺すぞ。でもお前結構学者使い込んでるんだな。普通もっと簡単なことしかわからんはずなのに」

「使い込んだらなんかあるの?」

「それも知らんのか。今度は勝手に調べるなよ。いいかまずレベルがありステータスがある。そしてそのステータスを限界まで使うためにスキルがあるんだ」

「ふーん。ステータスにブーストしてるんじゃなく潜在能力を引き出してるんだ」

「さすが学者物分りがいいな。それでだ。ある行動をするとスキルが上がってある一定を越すとスキルの今使える目安としてカードに記載されるってことだ」

「スキルは急に使えるようになったんじゃなく今の使いこなせてる目安と言うことか」

「そうだな。それであってるぞ。だけどまあ普通は自分の職業のスキルを伸ばすな。それは最初からある程度使いこなせるからほとんどの人はそれを伸ばすぞ。わざわざ一から伸ばすのは面倒くさいからな」

「そういうことか。レベル上がって力ついてるのに筋肉つけてるおっさんはそんな理由があったのか」

「筋肉ついててわるかったな。俺はもう限界いっぱいまで力を出せるぜ。お前もレベル以外を鍛えろよ」

「器用でほとんど補正つくから俺ウハウハ。まあやってみる」

「じゃあ町入っていいぞ。疑って悪かったな。お前の店できたら客として行ってやるよ」


 ナイフの入った袋を悠馬に渡した門番は町のほうへ指を差し、早く行けとうながす。

 門番は悠馬を見送ると直ぐに門へと走って行った。

 





 やっと町に入った悠馬は一つの事実に気がつく。お金がない。勝手に露天を開いていいのかもわからない。のでとりあえず、剣と杖が交差している看板の建物に入っていった。


「こんちわー。ここの看板って剣で杖が切れそうだよね。魔法使い涙目」

「お客様ご用件をどうぞ」


 いきなりの失礼な客にも受付は動じない。長年やってきたプロなのだ。


「ここって何できるところ?」

「ここはギルドでございます。ハンター登録や素材買取、土地や商売の権利などを扱っております」

「じゃハンター登録したい。でもその前にこのナイフ全部売りたいんだけど買い取れる?」

「これはまた大量ですね」


 受付の人がナイフを丁寧に確認していく。時折眼光が鋭くなる。受付に配置されるには鑑定のスキルを持っているのが条件なのだ。

 

「大丈夫です。良い出来ですね。合計九万六千Gです」


 金の単位はゴールドである。一ゴールドは大体一円と同等でナイフは一つ八千Gで買い取られた。悠馬の作ったものは高品質で投げナイフや剥ぎ取り用としてさらには戦闘にも十分使えるからだ。


「あ、そうだ。ハンター登録にGかかるなら抜いといて」

「了解しましたではこちらの四万六千Gをお受け取りください。あとカードを貸してください」

「ほいさ。ほれカード」

「ありがとうございます。ではランクの項目を増やしましたのでお返しします」

「ふーんこうするんだ。じゃあランクを上げる説明お願い」

「ランクは依頼達成ごとにポイントを獲得し一定以上になったところで昇級試験を受けると上がります。依頼を受けるときにカードに情報を写し、終了と共にポイントを得ることが出来るという仕組みですね」


 改造されたカードを天井に向けて、何か透けて見えやしないかやってみている悠馬を不思議そうな目で受付は見つめる。不意に悠馬が口を開く。


「じゃあさ店はどうやったら持てるの?」

「露天ならギルドに報告してくれれば出来ます。店舗は家付きで百万Gかかります。権利だけですと十万Gです」

「じゃあお金ためるわ」

「はいがんばってください。それと店を持っても毎月試験がありますので気をつけてください。これは品質保持のためです」

「わかった。じゃあとりあえず敵倒すのお願い」

「討伐と狩猟ですね。討伐は一定数倒し低ランクの数が多い魔物の数を減らすのが目的です。狩猟はターゲットを倒すのが目的です。これには細かい指定がつくことがあります」

「じゃあ狩猟で。後は任せた」


 受付が手元の冊子を開き、ページをめくっていく。その様子をボーっと眺める悠馬。少しして受付の手が止まる。


「これはどうでしょう。ベアマナークの狩猟です。知りたがりのスキル持ちの固体を生け捕りにしてくれとのことです」

「あ、そいつたぶん食った。おいしかったです」

「そ、そうですか。ではこちらは? ブルパルボアの狩猟です」

「了解。それにするわ」

「ではカードをこちらに」

 

 カードを受け取った受付が、何かをつぶやき冊子の開いてあるページにかざす。悠馬には良くわからなかったがこれでカードに依頼を受けたということを認識させたのだ。


「はい。ありがとうございました。カードをお返しします」

「じゃいってきまーす」


 変人の相手は疲れるとつぶやいた受付の声は走り出しもうギルドの外へとでた悠馬の耳には聞こえなかった。







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