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アルバム

作者: 伝助No.32



 卒業。


 三年間通った高校。それを今日卒業した。


 式へ入場数分前。

 緊張する人も居れば、めんどくさそうにする人。どの顔もいつも通りで、今日が特別な日という雰囲気が出ない。

 いや、出したくないのかも。ボクもその一人だから。


 体育館に列をなして入る。在校生や保護者の間を通る。見知った顔があると、少し恥ずかしくなった。


 クラスメイトの名前が呼ばれていく。はいと返事して立ち上がる。中にはふざけた事をしたりするやつも。先生は渋いする顔をするが、みんなは笑っていた。ボクも笑った。

 自分の名前を呼ばれる。返事をして立ち上がるけど、声が少し小さくて恥ずかしかった。


 式がおわって教室へ。

 泣いてる人がいて、それを励ます人もいる。

 ボクはそれを見て、口元が緩む。仲の良さに心が暖かくなる。


 クラスメイトと最後の雑談。

 最後なのにいつもの雰囲気、それでいていつもよりも盛り上がっていた。

 ボクも仲の良いのと話す。とても楽しかったけど、少し胸が痛んだ。


 みんなでペンを手にして、アルバムにいろいろ書き込む。

 真っ白なスペースが、色鮮やかになっていく。

 ボクは書いてもらわなかった。少し変かもしれないけど、アルバムを見た時にみんなの声も思い出しそうだったから。


 担任の先生が壇上に立ち卒業証書を配る。紙が思うように丸められなくて、少し苦戦した。


 最後のホームルームが終了して、部室へと足を運ぶ。

 後輩や同期が集まっていて、遅いと怒られた。

 中庭へ行くと、良くわからないまま胴上げされた。みんな笑顔だったけど、恥ずかしいし怖かった。でも楽しい。


 一旦家に帰り、着替える。制服がもう着れないと思うと、不思議になる。高校生じゃない人が着てもコスプレになってしまうし。


 クラスの打ち上げの会場に向かう。みんなで焼き肉を食べるのだ。

 みんなで囲んだ最後の食事。テーブルはどこも盛り上がっている。そのせいかは知らないけど、肉が結構こげた。もったいない。


 食事を終えた後はボーリングに。

 夜も遅くなったし、2ゲームしか遊べないけどみんなはむしろやる気だった。もちろんボクも。


 1ゲーム目は百も届かない微妙なスコア。みんなはすごい記録を出しているのに。

 ボーリングはあまり来たことないけどピンがボールに当たる時の音や、みんなの笑い声はとても心地いい。


 奇跡は2ゲーム目に起きた。

 ボクはスペアやストライクを連発し、1ゲーム目の倍弱の成績を出した。みんなの目がボクのスコアを見て点になると口々に誉めてくれた。とても嬉しかった。一人が明日には死ぬんじゃないかとボクをおちょくるが、こんなにもみんなと笑い合えたのだから死んでもいいかなと頭をよぎる。


 2ゲーム目が終わって、ボクは都合上一人で帰ることになった。お金を幹事役に払う。


 やはり最後なのでこの場にいるみんなに挨拶をする。

 好きな人や、仲のいいやつ。あまり話したことのないクラスメイトにも。

 みんなボクに笑顔で頑張ってと言ってくれた。ボクはみんなにありがとうと言う。


 名残惜しいのを必死で我慢し一人でエレベーターに乗り、下の階を押す。


 静かな箱の中、一人になったのだと実感する。

 ボクはこの日始め涙を流した。






 別れる時何人かが、お前とは二度と会うことは無いと笑いながら言った。


 ボクもそう思う。


 だからこそ、今を大切にしたい。


 この想いを。この記憶を。この痛みを。


 心に刻み込む。忘れないように、見失わないように。


 さようなら……学校


 さようなら……先生


 さようなら……部員のみんな


 さようなら……クラスのみんな


 さようなら…………ボクの終わった青春


 さようなら、さようなら、さようなら…………



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― 新着の感想 ―
[一言] 文体のリズムがよかったです。自分の卒業アルバムのよせがきのページも真っ白ですw綺麗にまとめられていると思いました!
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