07:僅かな安息
あけまして(≧∇≦)
おめでとうございます
読者サマ全員に幸せな一年が訪れますように。
07:僅かな安息
朝。
あの日から…恋人になりましたぁ!
わーわーひゅーひゅー…いっつもアツアツ!一緒に登下校してるぜ!なーんてことはなく。
私たちは下駄箱で偶然会っちゃっただけなんだからっ!
「ねーねーののっち!」
「いいかげんその呼び方やめたら?彼氏なら…まぁ彼氏なら…だけどね」
「じゃあ……樹様?」
「……まっまぁそれでもいいけれどねっべ、別に名前でよばねぇと殺すぞ★なんておもって無いんだからね!」
「ええええ!思ってたの!?てか殺したら本末転倒な気が……ごめんなさい…樹」
てんてー人を殺したいって思うと体から滲み出ちゃうんですねw
「思ってないって言ってるのに…まぁ呼びたいならいい」
「「ツンツンデレデレ症候群」」
クラスメイトが何か言ってるけれど聞いちゃいけない気がする。
ちらり。と緋之宮の方を見る。
視線が合う。
「お、おはよう」
「…ん」
なんだろ。あの日以来私には無表情をきめこんでいる(クラスメイトにも)。
でも私のポケットには“羽”が入っている。
一見鳥と同じかな。と思えるソレはでもやはりきらきらと輝いている。
「所詮…異形は異形。何の力ももたない…メモリーを消すことさえも…」
その声は周りの雑音のせいで誰にも聞かれることなく消えた。
*
「…好きだ…」
「私もよ…ダーリン」
ぶちゅ。
目の前には[完]の文字。
黒いスクリーンに白い文字で余計眼に痛い。
私たちはいま映画館にいる。
恋人が来る率98パーセント(勝手統計)。
良く言うとらぶらぶカップル。
悪く言うと行き先が見つからなかった新米カップル。
「はぁぁぁ~面白くなかった」
「どんな映画にもハズレッてあるよね…うん」
私たちの2時間30分を返せーと夕日に向かって叫びたくなる。
日曜日。
私たちはデートをしようということになった。
なったはいいが…翼ははやくシタい…といいだしましたね、はい。
こんのっ色ぼけ猫がっ!
と思いましたね。うん。
てなわけでずるずると遊園地→映画館ときて…そろそろ辺りも暗くなり始めました。
帰りましょーってことで私たちは私の家に続く道を急いでいるわけです。
「樹。もういっちゃうの?」
「なっなによ?」
いきなりの展開に少々いえかなり戸惑っていますわたくし野々宮 樹。
「帰したくない」
「明日会えるじゃない」
「ヤダ…ヤダヤダヤダ」
駄々っ子のようにヤダ。を繰り返す。
「もうっわかったから…キスくらいな…っ!ちょ…―――…は、ぁ」
「樹って強引なのが好きなの?」
キス、された?
「甘い。樹だから?それとも俺としたから?」
そこっ!真顔でそういう発言をするなっ!
「ななななな、あんたねぇ!」
「何?恋人なんだから当たり前でしょ?」
「それはっそうだけど…」
これは、恋なのだろうか?
「樹」
でもやっぱり顔を見つめられると胸がドキドキして…
「つば…んっ」
「ぷはぁ。やっと樹パワーが補給完了♪」
「なんだかどなる気も失せてきた…でもっ私負けず嫌いなのよねっと」
ぶちゅーーーーー。
「っ!」
「どうよ?」
「さいこーです。姫様」
ふふん。どうよ?
「じゃ。ばいばい」
「…樹はさびしくないの?」
「?なんていった?よく聞こえない…」
「―――なんでもない…ばいばい」
なんだか怒って見えるのは気のせい?
まっ。いっか?
いいのか?
そう思いながらも私は家に入る。
「ただいまー」
誰もいないのに…。
私には両親がいない。なので伯母夫婦に養ってもらっている。
そして今は旅行中。
『ごめんね。樹。私たちこれからロンドンの友達の結婚式に出なきゃいけないの、しばらく帰ってこないけれど…大丈夫?』
『ええ。私のことは気にせずにゆっくりしてきてください』
つい先日の出来事である。
伯母夫婦は海外から来た旅行客を中心にホテルを営んでいる。
大きくはないけれどそれが逆にそれぞれへのお客様に丁寧な対応ができていることで評判なのだ。
だから伯母夫婦には海外の友人が多い。
昔から忙しいので、もう慣れた。
「でも時々…痛い」
シン。と静まり返った家はあまり好きではない。
昔、遠い記憶が蘇ってしまうから。
―――樹は本当にいい子ねぇ。おかーさん安心だわ。
―――本当だな。樹は真っ直ぐに、そう。樹のように育ってくれたな。
あそこにいつもお父さんがコーヒーを飲みながら座っていた。
あそこでいつもお母さんが本を読んでいた。
満ち足りた生活だった。
あの日までは。
「さようなら。昔の生活。こんにちは。今の私。」