03:白色世界
03:白色世界
ゆらゆら。ゆらゆら。
「…ん」
どれくらいの時間がたったんだろう?
私は今どこにいる?
「あーあー」
声はでるけれど…なんだか、変。
私はどこかのベットの上で寝ていたようだった。
起き上がろうと体に力を込める。
「!?」
力を込めた瞬間、まるで体に電流でも走ったかのような鈍い痛みが走った。
おいおい…本当にここどこだよ?
明日数学小テストあるんだよ…今回は微妙に苦手だからやろうと思ってたのに目が覚めたら次の日でしたーとかいったらぶっ飛ばすぞ、ゴラァ?
「とにかくここから出よう!私ポジティブ!さいこー!」
傍から見たらイタイ光景である。
と、その時。
『忘れて。深い深い記憶の底に…』
『偽って。自分自身のメモリー…』
「あぁっふぁっああ!」
それはまるで……天使。
‘天使’
滑るように鼓膜に、全身に流れ込んでくる。
唄うように繰り返されるその言葉。
頭がっ煮えくりかえる!ぐちゃぐちゃにかき回されて溶けてしまう!
私のメモリーが死んでゆく…っ。駄目っ忘れては!消してはっいけない!
自分の重すぎて軽い 罪 を忘れてはっっ!
だってもう会えない!思い出せない!
「あああっ!い、やぁっ、嫌ぁぁぁ!」
なりふり構わず絶叫した。
我武者羅に…誰に向かってか分からないけれど…。
何時間?いや何日?
私は動かない体を懸命に動かそうと努力し、叫び、足掻いた。
あぁ。後に残るのは…何だろう?
* * *
「案外…強い」
彼は呟く。
「俺にかかわった全てのニンゲンのメモリーを削除したのに」
高いソプラノ。
「なぜ、こいつのメモリーは消えない?」
戸惑うように。心の底からの疑問だというように…。
そしてふっと瞳を閉じる。
しばしの沈黙。
彼は灰色の瞳で少女を射抜く。
いまだ足掻いている。
「あぁ。この娘…」
理解したというように、笑った。
「‘人生そんなに甘くないのよ神崎クン☆’の時の…そう、人生は甘くない」
そう言いながらも彼女の呪縛を解く。
思考の呪縛。
「ま。精々‘運命’の中で生きるがいいさ」
彼は楽しげに笑ってそう言った。
* * *
「あああぁっ!!……?」
絶えない激痛。
いつまでこんなコトが繰り返されるの?
そう思って次の激痛に堪えようと本能が筋肉を強張らせる。
でも私の身体にはなんの痛みもやって来なかった。
「…?」
終わっ、た?
でもまだ安心出来なくて……。恐る恐る身体を起こしてみる。毎朝、やっていたコトが偉大だということが分かる。
そして何処までも続く真っ白な世界に『あぁ。私には眩しすぎる』と目を細め、バフッとまた横たわる。
「ほぅ……」
私は僅かな安堵と共に眠りについた。
今回も読んでくださりありがとーございましたぁ。
またのお越しをお待ちしております?