17:君がいい
無事京都研修から帰ってきましたぁ!
生八橋うめぇぇ(Д`*)
美味でした。しかーし麦茶は餡子が嫌いです!じゃぁなんで食ったといわれた方、おっしゃるとおりでございます……。
16:君がいい。
その日、連翔はいつまで経っても帰ってこなかった。
余りにも遅いもんだから、私はダルイ体を起こし、談話室へと足を運んだ。
――すると。
連翔は、談話室の緑色のソファーで丸くなって寝ていた。
「かわいい……」
つい、呟いてしまう。
連翔は一見、女の子と間違えられるほど綺麗なのだ。
本人は、“可愛いね”と言うと不貞腐れるけど本当に可愛くて、綺麗なのだ。
指先で目にかかった前髪を払う。
すると出てくるのは包帯で覆われた右目と閉じられている左目。
痛々しいはずなのに、なぜか芸術作品のようで……って!私何してんの!?
変態さんみたいじゃない!
独り悶々としていると、
「んっ、」
と、連翔の瞼が僅かに動き、唇から吐息が漏れ始めた。
――うわ、エロ。
女の私でさえそう思う。
どんだけな色気を醸し出しているのだろう?
「な、ん……で……」
ん?何をいっているんだろう?
よく分からない。
「お……れ、じゃ……」
うー。じれったい!
起こそう。本来の目的はそこにある。
ゆさゆさと身体をゆする。
「起きて―、もう夜ー昼寝、長いー」
ぐだぐだと、言い連ねながらゆすりまくる。
初め連翔は、眉を顰めて不快そうな顔をしていたが、だんだん覚醒してきたようだ。
「……誰……」
細く目を開けながら、連翔は言った。
「誰って……わたし、樹です」
どうやら寝ぼけているようだ。
「ちょっと、起きなさいよ」
いくら、気が長いと言っても、いい加減苛々してくるというものだ。
ぺちぺちと頬を叩く。
すると、手で払う仕草をした。
子供かお前は。
「寝ぼけてるでしょ? 連翔ーー」
私が呆れ半分、顔を覗き込むと……。
「うるさい……」
と言って……え?
唇に柔らかい感触。
――え、え?何?
「れん、しょ……」
「まだ……足りない?」
そういって嫌に整った顔を近づけてくる。
嫌、待て。
何が起こっている?
もしかして、連翔の素はこれ?
天然たらし?
……。
埒があかない……。
だから、私は顔に満面の笑みを張り付けて、
「起きようか?」
と優しく起こしてあげた。
* * *
次の日。
「おはよ~」
「お、おはよう」
私は、昨日の事を引きずるつもりはないけれど……。
あっちは、満々、みたいね。
「あ~、昨日の事だけど、……事故ってことでいいんじゃない?」
少し気まずいけれど、そういうしかない!
私の言葉を聞いて、連翔は吃驚した顔になっていたけれど、そのあと……、
「――彼氏いるって本当か?」
重々しく、問うた。
――来た。
絶対に聞かれると思っていた。
私にも良く分からない、彼氏“神崎 翼”のコト。
逢ったこともない。
触れたことすら、私の記憶にはない。
ただ、懐かしい、と言う感情だけ――…。
「そうだけど……私は逢ったことすらない……」
私がそう答えると、怪訝な顔をする。
当たり前か……。
「記憶を失う前の話だもの……覚えてるはずないでしょう」
「……!」
連翔は目を見開く。
「だからね……私は別に、連翔でも……」
私が言いかけたその瞬間、
「駄目だろ……!“翼”が哀れだ!」
普段穏和で怒鳴ったりしない彼が私に向かって――怒鳴った。
私は呆然としながらも、その言葉を受け止めた。