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外伝 別の転生者の場合①

本編の良とは違う場合の転生者を書いてみました。物語の場所は本編と同じ舞台なのですが、今後、両者が関わるとかそういうのは全然考えていません。私の気まぐれで関わりが出来るかもしれませんが。

それではこちらの方も読んで頂ければ嬉しいです。

 時々不思議な夢を見る。自分の知らない所で、自分の知らない人達がいる夢だ。そこで俺はその人達と親しそうに話している。

 知らないはずなのに昔から知っているように話をしていて、俺の知らない話題で盛り上がり、俺自身もその話題について面白おかしく話している。

 これは夢なのか?それとも誰かの記憶なのか?








「じゃあ行ってくる。」

 俺は家を出て駅に向かう。朝だと言うのに日差しは強く、外は暑かった。まだ朝だからそれほど湿度も気温も高くないが、昼近くになるにつれて両方とも上がってくるのでそう楽観視は出来ない。衣替えの準備期間だと言うのに、この暑さは異常だ。年々、上がってくる気温に初夏と言う言葉と季節が無くなったのではないかと思う。


「それじゃあここの問題を、え~っと誰にしようかな。」

 授業を受けている間、俺は夢の事を考えていた。小さい頃からよく見る夢、それは普通の夢の内容とは違い、まるで俺自身が経験してきたかのような夢だった。正夢とは違う。現実においてその場面に出くわした事は一回も無い。そして、夢から目が覚めると決まって目から涙が流れていた。小さい頃は気にしていなかったし、あくびでもでたのだろうと思っていたけど最近は違う。何故だか悲しいのだ。あのような何でも無い、ごく当たり前にある事の夢なのに、それを見ると悲しみが私の心に残る。

「おい、聞いてるのか佐藤!」

「は、はい!」

 先生に怒鳴られて慌てて俺は返事をした。考えすぎていたために気が付かなかった。




「タク、お前最近ぼ~っとしてるけどどうしたの?」

 授業が終わり、教室を出ようとしたら正也が話しかけてきた。

「いや、特に何も無いんだけどな。ちょっと考え事をしてた。」

「なんだ、好きな奴でも出来たのか?このクラスは可愛い子多いしな。増田さんとか真美ちゃんとかさ。」

 正也の話を聞いて名前の挙がった二人を見てみる。増田さんは少しおとなし目の美少女だ。品の良さが伝わってくる。家ではお父様、お母様とでも読んでいるのだろう。もう一人の真美さんは活発的で元気がある子だ。二人とも正反対のタイプの美少女と言えるだろう。

「でもさ、あの二人って絶対あいつの事好きだろ?」

「あ~良ね。あれは勝てないわ。」

 正也もお手上げだと言わんばかりに両手を挙げた。勉強は出来て、運動もそこそこ、ルックスも良いと来たら周りの女は黙って無いだろう。話では小学校の最後の時にバンド演奏をしたとか。物凄く上手なドラムを披露したのだから小学校から同じ奴はあいつに惚れてもおかしく無い。かたや、俺なんて平凡だ。無理して中学受験をしてここに入った時は自分が天才かもと思ったが、そんな事は決して無かった。井の中の蛙は狭い日本の中でさえ大海を知ったのだ。

「でも可愛いよな~ちくしょう!俺もなんか楽器やろうかな。」

「はいはい、頑張れよ。」


 放課後、する事も無いが、家に帰っても誰もいない。そして最悪な事に家の鍵を忘れてしまったためにどこかで時間を潰すしか無い。そんな時は決まって屋上に俺は行く。

 この学校は屋上が開放されているために多くの生徒が利用している。放課後は部活があるために、昼休み程人がいないので快適だ。

「今日は誰もいない、ね~。」

 屋上に着いてみると珍しく人がいなかった。近くのベンチに腰を掛けグラウンドを見る。色んな運動部が汗を流して部活に励んでいる。そんな人達を見て何が面白いのかと思ってしまう。彼らは青春してました、という事だけを楽しみにしているのだろうか。俺には全く解らない気持ちだった。むしろそういう人達は見ていて不愉快になる。

「人生って何だろうな~。」

















「それで、今日はどこ行くの?」

「決まってるだろ、こんな晴れた日は海に行くしかないだろ?」

 男がそう言うと、車にサーフボードを乗せた。女はまたかと言う顔をして車に乗り込み、男が乗るのを待っていた。

「ね~、速くしてよ?」

「ちょっと待ってろって、今すぐ乗るから。」

 荷物を全て詰み込んだ後、男は車に乗り込みエンジンを掛けて車を動かした。

「毎日海に行って飽きないの?」

 女は少しうんざりしながら男に話しかける。

「バカ、毎日海に行ってサーフが出来るなんて最高だろ?大学生って素晴らしいな!来年からはこんな事出来ないよ。」

「私達も社会人になるからね~。早い物だよね、もう最後の学生生活だよ?」

「だから思い出をいっぱい残そうぜ!」

 車を運転しながら男は女に喋る。先ほどのうんざりした顔から笑顔で頷き、男を見ている。男の方も女と一緒にいるのが嬉しいのか笑顔になっている。車を運転して二人は海を目指した。









「ねえ、君!そろそろ屋上閉まっちゃうよ?」

 聞きなれない女性の声で俺は目を覚ました。目の前に見た事の無い女性がいる。制服を着ている所から教師じゃない、スカーフの色から一学年上の先輩だと解った。どうやら俺は寝てしまっていたようだ。少しだが、また夢を見た。今回は女と二人で海に行く話、彼女なのだろう。

「あ、起きたね。もうそろそろ屋上閉まっちゃうよ。寝てたから悪いと思ったけど・・・・・・って君、何か怖い夢でも見たの?」

「え?」

 目を擦ると涙が出ていた。あの夢だから涙が出たのだろうか。そう思っていると、目の前の女性が俺を抱きしめ、頭を撫で始めた。

「え、ちょ・・・ちょっと・・・」

「大丈夫、大丈夫だから。落ち着いてね。」

 この状況でどうやって落ち着けと言うのだろうか?寝起きに知らない女性に抱きつかれて頭を撫でられるという事に。顔に胸が当たっている。生まれて初めて女性から抱きしめられ、胸が顔に当たっていると言う状況に俺はパニックに陥った。



「アハハ、じゃあ怖い夢を見て泣いてたんじゃなかったんだね。」

 少し照れつつ、笑いながら女性が喋る。

「ごめんね、うちの弟さ、こうしたら落ち着くから。」

「俺はあなたの弟じゃない。」

 そうだね~と言い、女性は振り返った。あれから、俺はこの女性に離してもらい、訳を話して屋上を後にした。

「私亜里抄、桐島亜里抄って言うの。見ての通り二年生。君は名前なんて言うの?」

「佐藤匠。」

「匠君ね。私、放課後は毎日屋上にいるから良かったら話そう?」

 亜里抄が俺の方を見てそう話す。要するに話し相手になってほしいのだろう。

「そこまで暇じゃない。」

「じゃあ暇な時!暇な時でいいから!ね?」

「わ、わかった。暇な時だけなら。」

 物凄い勢いで喋りかけてきたために俺は嫌だと言えなかった。

「それじゃ、毎日待ってるからね?じゃあね~!」

 亜里抄は俺とは別の方向に走って行った。変な夢を見た後に、変な先輩に付きまとわれてと今日は散々な一日だった。これからもこのような日々が続くのだろうか?亜里抄の方は解らないが夢の方は続くのだろう。そう思ったら、自然と溜め息が出た。

読んで頂きありがとうございました。転生物で私が書きたかった事の一つです。記憶を完全に引き継ぐのでは無く、全く引き継がず、かと言って記憶を完全に消去した訳ではなく、何かしらによって思い出していく、見る事が出来る話。そんな話を書いてみたいと思ってました。転生をしたら記憶、経験が引き継がれて全てが上手く行く。そんな転生においての成功者じゃなく、転生をしたが全くと言って良いほど転生の恩赦を受けない人の物語を書いてみました。題名が題名なので良い結果をもたらす例を良として、匠は良い結果も悪い結果も得なかった例、もう一つ悪い結果を得る例を考えています。それではまた次回も頑張って書きたいと思います。

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