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高校一年生④-1

 ああ、この調子で本当に年内あと三つも投稿出来るのかな……でも書いちゃったんだから実行しなければ……

 どうも、またまた遅れながらも書き上げました。忙しい事は良い事なのだろうけど考えものです。やらなければならない事を全然終わらせれないで何をしているのだか……

 と、愚痴っぽくなりましたが、26話目です。今回も皆さんが楽しく読んで頂ければ幸いでございます。では、どうぞよろしくお願いいたします。

「Power!power! Happens every day!」

部室に入るや否や、部屋中に響き渡る大音量のBGMが私の耳に入ってきた。部屋に置いてあるCDコンポをミキサー、パワーアンプを通して二本のスピーカーから流れる音は、家のミニコンポのスピーカーやヘッドフォン出力では決して体感する事の出来ない音質を与えてくれる。まあ、ただうるさいだけ、と言われればそれまでなのだが。

 と、そのような事を考えていると、

「お、やっときたな!そんなにあいつの話って長かったのか?」

私が部室の扉を開けた事に気が付いたのか、CDコンポのヴォリュームを絞り、私に問いかけた。

「うん。色々とね。」

小倉の問いに答えながら、私は部室内に入り、カバンをドラムセットの近くに置いた。

 小倉の言葉から察すると、私が来るよりだいぶ前に来ていたのにも関わらず、部室内は全くと言っていいほど暖まっていない。むしろ、外よりも寒いのでは無いだろうか?

「……寒くないの?」

「だからこんなに厚着してるんだろ!」

「……暖房つけたら良かったじゃん。」

「あ……」

まるで忘れて……いや、この場合本当に忘れていたのだろう。小倉は直ぐ様に、エアコンの位置まで向かうと、エアコンのスイッチを入れた。

「いや……ね?俺の前に誰かいたような気がしたから~……ね?」

だから暖房が入っていたと思っていたと……なるほど。小倉らしいと言えばそれまでなのだが、

「普通はそういうの全て切ってから退室するでしょ……」

溜め息まじりに小倉にそう言うのだが、小倉も小倉で言い訳の一つでも、と思いとっさに口に出したのだろう。アハハ、と苦笑いを続けていた。

「それで……今日は何でまた突然部室なの?今日は何も無いからよかったけど。」

「あ、ちょっとギターでも教えてもらいたいな~と思いまして……」

「絶対それだけじゃないでしょ?」

「あ、やっぱ解る?」

確かに小倉は向上心が有り、様々な人に教えを請う事は多いのだが、私に限って言えばおまけ要素が強い。何か聞きたい事、相談したい事がある、それらを聞き終えるとついでにギターも教えて!と、言うのだ。ギターの事はだいたい二の次。今みたいに、ギターを教えて欲しい、と先に言う事はほぼ無いに等しい。

 だから今回も他の事がメインだろう、と思いながらドラムスローンに腰を降ろし、小倉が言葉を発するのを待った。しかし、なかなか言いだそうとしない。むしろ、私が何か聞くのを待っている節がある。

 ……仕方が無い。

「それで……どうしたの?」

「いや……ね?俺ってぶっちゃけた話、俺って周りの人達と比べたら下手なのかな~って思ってさ。」

「何か言われたの?」

「少しな。良はどう思う?」

笑いながら私に尋ねるのでは無く、神妙な面立ちである。誰かしらに気に病む事でも言われたのだろうか?それで私に尋ねようと思った。私が思うに、小倉は決して周りと比べて見劣りするようなギタリストでは無い。

「技術?全然あるじゃん。むしろ部内だったら上手いギタリストだと思うよ。」

「でも先輩達の中には滅茶苦茶凄いソロ弾く人もいるじゃん?それでも俺は上手い方なのか?」

余程、今までに積み重ねてきた自信を打ち砕くほどに強く言われたのだろうか?

「難しい速弾きとか出来る事は確かに凄いと思う。先輩達の中にはそういうのが出来る人もいるからね。でも、リズム面で小倉程きちっと出来てる人って部内じゃいよ。」

「いや、でもさ。やっぱソロが目立つ訳じゃん?ギターって。」

……なるほど。小倉の言いたい事は良く解る。

「一番大事なのはソロだけを華麗に弾く事じゃないよ。ギターはリズム、バッキングこそが重要なんだ。それをきちんと出来ていない人は例えソロだけ技術があってもやってる人達は上手い、と決して思わないよ。だから僕は小倉が部で他の人より劣っているギタリストだとは全然思わない。」

私もかつて同じ事を考え速弾きばかりを延々と練習していた。ただそれは今の小倉と違い、リズム面がまったくもって未熟な時に行ってしまった。部屋で一人でレコードに合わせて弾く場合はそれで良かったのかも知れない。繰り返し同じ曲を聴きコピーするのだから、自分の頭の中にレコードで演奏されているリズム、構成を完璧に把握している。そしてレコードと同時進行で曲を弾く。だが、バンドで行う時にはそう上手くいく訳が無い。その時々により、合わせつつ、自分のリズムでグルーブを作って行かなければならない。それらはしかりとリズム面を鍛え、周りの音を聴かなければ到底不可能である。それらが出来ない場合どうなるか、と言うと自分一人が勝手に演奏を行いバンドがバラバラになってしまう。周りの音を聴き、それに合わせる。最低限この事が出来なければお話にならない。リズム隊、となれば話は別になってくるのだが。

 そして、ソロが上手い=楽器が上手いと言う事も必ずしも当てはまる訳では無い。かつての私のようにソロ、リードばかりを鍛錬してその他が疎かになっている者はしかりと観ている人には下手である、としか言われない。よくて指が速く動くんだね、くらいだ。曲の全てがソロでは無い、リズム面、ギターはバッキングの方が曲の占める割合は大きいのだ。プログレ等は全てがソロ、リードに思うかもしれないが、リズム面ありきで成り立っている。それを疎かにしてきた者が出来る代物では無い。

 私の言った事に小倉は理解を示してくれたのか、先ほどより表情が一段と明るくなった。

「そ、そうか……?お前からそこまで言われると俺もちょっと自信が出てきたな~。」

少し照れ笑いをしながら小倉は私に言った。

「だからと言って奢らないでね。僕が見てきた人達の中で……と比べちゃうと酷だけどね。」

「お前の基準はプロじゃねえか!!!!」

「そうだったね……それじゃあ、脱アマチュアレベルを目指して頑張ろう!」

私の問いに大声で返す小倉を見て、私は自然と笑みを浮かべ、そう答えた。そんな私を見て、小倉は絶対見返してやると返し、私に笑みを向ける。

「そうなったら特訓だ!よし、今日はとことん弾くから覚悟しろよ!!!」

「なんだよ、それ?意味が解らないよ。」

「俺の特訓にお前が付き合うって事だよ!!!」

ギターを取り出し、アンプに繋いで、小倉は開放弦を鳴らす。私が来る前に電源を入れて真空管を温めておいたのか、準備は整えておいたみたいだ。

「取り敢えず、僕が言っておいた事はやってるのかな?」

「当たり前だぜ!」

それから二時間程、私は小倉に様々な事を教えた。その間、何人か部員が来ては私達の様子を眺めていたのだが、それらに一切気づく様子も無しに、小倉は集中して取り組んでいた。彼の呑み込みの速さ、上達の速度が速いのはセンスや才能の他に、この集中力にあるのだと私は感じた。

 私が部室を後にする時も、まだ残り、独りで練習をしたいと言ったので、私は独りで帰る事にした。




 




 



 駅に向い歩いている途中、ポケットの中の携帯電話にマナモードにしておいたバイブレーションが鳴った。取り出し、画面をみると、着信相手は江利子からだった。

「もしもし?」

「もしもし、良くん?今電話大丈夫かな?」

「大丈夫だよ。」

どこかで歩みを止め、電話をしようと思ったのだが、場所が無かったので、いささか不謹慎ではあるが私は歩きながら電話を続ける事にした。

「あのね、私達のシングル、マスターアップしたって!だから年内にお店に並ぶ事になるんだって!」

江利子は電話口から興奮気味に言う。そうか、ついにマスターが終わったのか。

「本当に!?やったね。これで後はアルバムの方もマスターが終われば……」

「年明けの最初のライブで私達のシングルを観に来てくれた人達に直接手渡せるね!何とか間に合って良かったよ~。」

面と向かって話している訳では無いのに江利子が心から喜んでいるのが伝わる。私だけじゃ無い。皆、思いを込めて作ったのだ。これが喜ばずにいられる訳が無い。

「それでね、良くん……って真美さん!ちょっと……まだ私が……ああ!!!!!…………もしもし?良?」

何やら電話口が騒がしいと思っていた所、先ほどまで話していた江利子では無く、真美が話しかけてきた事を考えると、無理やり奪ったようだ。

「……真美?」

「正解。それでね、明日なんだけど。本当は何も無いはずなんだけど、音源貰えるみたいだから、皆で事務所に行こう?」

「良いよ。じゃあ、学校終わってから行こうか。」

「うん、ってまっちゃん!ちょ、こら、ひゃん!……い、一回切るね!」

有無を言わさず、真美は電話を切った。取り敢えず、携帯電話を閉まりポケットの中に入れる。向こうで江利子が何か真美の体にちょっかいをかけたのだろう。最近はちょっかいと言えるレベルじゃ無くなってはきているが……その度に前かがみになる男子が多くなるのだから少しは控えてもらいたいものだ。一度、廊下でとある男子何人かが、

「えりまみは俺のジャスティス。」

「ああ、胸が熱くなるな……」

「三次元にこんなパラダイスがあるなんてな。」

と前かがみになりながら話しているのを見てしまった。解らなくもないのだが……

 

 そこまで話し込んでいた訳でもないのに、気が付いたらもうすぐで駅に着く所まで来ていた。駅に向かい歩く人達にまぎれ、私も歩いて行った。



「今日は何にも無かったんだから、早く帰ってくるって言ってたよね?」

玄関の扉を開け、部屋に向かう途中に後ろからご立腹そうな声の加奈が話しかけてきた。最近の加奈は怒るにしても凄みが出てきているので困る。加奈の上に立つような人は現れるのだろうか?

「い、いや~……ちょっとね?」

「こっちを見て喋りなさい。」

「はい!!」

慌てて振り返ると、壁に寄りかかりながら腕を組んでいる加奈がこちらをじ~っと見ていた。

 怖い、今の加奈はとてつもなく怖い。

「今日の朝、私、お兄ちゃんとどんな会話したっけ?」

「今日の朝は……」

加奈に言われて、何を話したか思いだそうとしていると、一つの事が頭の中に過る。今日の朝、私が学校に行こうと、玄関に向かった時、加奈は「今日って学校終わってから何かあるの~?」と聞かれたものだから、何も無いと答えたはずだ。それから……「じゃあ、買い物行きたいから付き合ってよ!」……ああ。思いだしてきた。今日の朝、私は加奈と一緒に買い物に行く約束をしたのだ。それなのに今日の放課後の事を思い出してみよう。うむ、小倉と一緒にいたではないか。言い訳を考えた所で聡明な我が妹の事だ、バレルに違いない。ならば行う事は一つ。

「加奈。」

「なに?」

こういう時は私が出来る最大限の笑みを持ってして、イメージするは某エ○ァのOP最後らへんのシ○ジ君のように無邪気で、無垢の無い笑み。その顔で、




「忘れてた。ごめん!」




言うや否や、私は思いっきり加奈に右頬を引っ叩かれた。斜め横から的確に顎を含む右頬全体を、体重を乗せ、手のひらで押し出すように。

「馬鹿!!!」

叩き終えると、私にそう言い放ち、部屋へ向い走り去って行った。走り去る加奈を見ながら呆気に取られていると、

「あらら~、加奈が不機嫌だった理由はこれだったのね~。」

母が仁王立ちをしながら私を見降ろしている事に気が付いた。

「良、あなたにとっては忘れてしまった、ですむ話だけれど。加奈にとってはそうでもないのよ?」

「それって……?」

「さてさて、先週まで加奈はどこに行ってたのかな~?」

「!」

そうか、加奈は先週までウィーンに行っていたのだ。そして、私は一昨日までレコーディングなり、何なりで家に帰るのは遅くなっていた。加奈とはここ暫くゆっくりと話す時間も無かった。

「気が付いたかな~?あの子は良と一緒にいれなくてとても寂しそうにしてたんだからね。だから朝は凄く喜んでいたのにね……あんなに喜んでいた加奈は本当に久しぶりなんだから。」

「そうだったのか……」

「そうだったのか……じゃないでしょ!今すぐ部屋に行って加奈と話してきなさい!ついでに散歩でもしてらっしゃい。ここら辺だったら危なくないでしょ。それに、何かあったら良が命がけで守ってくれるだろうしね~。」

「ありがとう、母さん。ついでにどこかで一緒にご飯でも食べてくるよ。」

「そうしなさい。というか、夕飯の準備してなかったのよね~。」

と、笑いながら母はリビングへと向かって行った。まあ、二人で外食すると思っていたのだから夕飯を作っていなかったのだろう。

 部屋に向かいドアを開けようとするのだが、中から鍵がかけられていた。

「加奈、僕が悪かったから。開けてくれない?」

中に向けてそう言うのだが、加奈は返事をしてくれない。

「本当に悪かった……それでさ。今からだと店とかで買い物とかは出来ないけど……ちょっと一緒に歩きまわらないかい?久しぶりに加奈とも話したいし。」

そう言い、暫くすると鍵が開く音がした。ドアを開くと、加奈がふてくされた顔をしながら下を向いていた。

「……ごめん、加奈。じゃあ、ちょっと散歩でもしようか。」

部屋に鞄を置き、私は加奈を促しながら外へ向かった。玄関で靴を履き、ドアを開けようとする前にリビングの方をちらっと覗くと、母が目で頑張れ、と合図をしていた。

「それじゃあ、母さん。ちょっと出かけてくるね。」

「あんまり遅くならないようにね~。」

「解ってるよ。」




 住宅街の路地を照らす街灯と、月の光を明りにしながら私と加奈は歩く。繁華街では仕事帰りのサラリーマンが騒ぐのに良い時間なのだが、元々閑静な住宅街だけあって辺りは静かだった。駅に向かって歩けば、帰路についている人々とすれ違う事もあるのだが、反対側を歩いているので人と出会う事も少ない。

「こうして、二人で歩くのも久しぶりだね。」

声を出す度に、息が白く吹き出る。こんな寒い日は星が綺麗なはずなのだが、夜空に輝く星は一つも無かった。

「お互いに、昔と違って忙しいからね。だからこそ……今日は楽しみにしていたのに……」

「本当にごめん。」

私が顔を向けても、加奈は反対側に顔を向けながら歩いている。

「もしかして、最近告られた先輩と一緒にいたんじゃないでしょうね?」

「違うよ、小倉と二人で部室にいたんだよ。」

「本当に?」

疑いの目を持って、私の方に顔を向けて加奈はこちらを見た。

「本当だって。あ、やっと僕の方見てくれたね。」

「!、まあ、ちょっと一人でカーッとなりすぎたかな~って……でもお兄ちゃんが悪いんだからね!」

よく加奈を見ると、余所行き用に洋服もお洒落をしている事に今気が付いた。そして、うっすらとだが化粧もしているようだった。最近の女の子は小学生の時から化粧を嗜むのだから、やっていても何ら不思議では無い。

「加奈も、化粧とかする年頃になったんだね。」

そう言うと、加奈はひどく驚いている表情をした。その様子が何だかおかしく感じ、思わず笑ってしまった。

「おかしい?っていうか、よく気が付いたね。」

「いや、全然おかしくないよ。加奈が驚いてるからね、笑っちゃったんだ。だって、僕は加奈が生まれた時から一緒にいるんだよ?気付かない訳無いよ。」

「そ、そうだよね!お兄ちゃんとはずっと一緒だもんね!」

大分機嫌が良くなったのか、加奈の表情が和らいできた。そういう表情の方が加奈には似合っている。そう思っていると、

「お兄ちゃん、ちょっと寒いから……腕組んで歩いていい?」

「ん?寒いんだったらマフラー借すよ?」

と、言いマフラーを首から取ろうとした所、

「マフラーじゃ無く!私はお兄ちゃんと腕組みしたいの!」

私は強引に加奈と腕を組まされた。少々歩きづらいのだが、加奈の機嫌が悪くなるよりかは、と思いそのままにしておく事にした。

「もっと、こう……シャキッと背筋を伸ばして!これじゃあカップルに見えないよ!」

「カップルって……ここら辺で誰かに見られたとしても相変わらず仲の良い兄妹としか思われないでしょ……」

「それはそうだけど……」

しかし、こうして腕を組まれる事なんて昔はあり得なかったな、とふと思い出した。女っ気の無い人生を過ごしてきたのだから仕方の無い事だが。

 暫く他愛の無い話をしながら歩いていると、懐かしい場所が私の目に着いた。

「懐かしいな~。ここに来るなんて何年ぶりだろう。」

「あ、確かに。というか、こっちの方向に来る事自体があまり無いからね。」

そこは小学校に上がる前、それも数回しか来た事の無い公園だった。母と加奈と一緒に手をつなぎ来た場所。ブランコに乗って遊んだりした場所。この公園も、遊具の安全性を見直す、と言われほとんどが撤去されてしまった。残っているのはベンチとそこそこの敷地のみである。

「でも……私が覚えている物がこのベンチしかないのは悲しいな……」

ベンチの前まで来て、名残惜しそうに辺りを見回しながら加奈は言う。母がこのベンチに座り、私と加奈が遊ぶ姿を見ている姿が思い出される。そのベンチに、私と加奈は座った。

「あそこの木ってあんまり大きくなかったんだね。」

「そうだね、僕も加奈も大きくなったからそう思うんだろうね。」

人は月日を重ねる事に変化していく。そして、自身が変わる事には滅多に気が付かない。それに気が付かせてくれる数少ない要因の一つとして、昔訪れた場所へ行く事である。この敷地はこんなに狭かったっけ?この遊具はこんなに小さかったっけ?等、懐かしさがこみ上げてくると同時に、同じ物を見ているのにあの時の自分とは違う捉え方をしている事に気が付く。その時、自分は変わったのだなと思ってしまうのだろう。嫌でも人は変わっていく生き物である。それが良いのか、悪いのかは人それぞれだとは思うのだけれど。

 加奈も昔はもっと小さく、無邪気に走り回り、お兄ちゃんお兄ちゃんと言いながら私の後をついてきたものだな、と思ってしまう。まあ、今でも兄離れのしていない妹だとは思うが。

「私もそうだけど、お兄ちゃんもあの頃とは違って色んな事を経験してきたよね。まあ、お兄ちゃんはあの頃に行きつくまでにも凄い経験をしているけど。」

私の肩に頭を寄せながら加奈は言う。

「まあ、僕はね。バイト先から帰ろうと歩いていて、気が付いたら赤ちゃんなんだもん。ほんと、事実は小説より奇なりって話だよね。」

「でも、そのおかげで私はお兄ちゃんと出会えたんだから感謝しないと。あっちの家族には申し訳無い話だけどね。」

「まあ、そうだけど……僕も兄思いの良い妹が出来て良かったと思っているよ。加奈だけじゃない、父さんや母さん。真美や江利子、師匠や小倉とか色んな人達と出会う事が出来た。こんなに素晴らしい事って無いよ。」

本当に私は恵まれている。昔も今も、こうして誰かの愛情を感じて日々を過ごす事が出来るのだから。

「……まあ、沢山の人に出会う事は良いと思うけど……そろそろ女絡みの問題も片付けなくちゃいけないんじゃないの?」

「そ、それは……」

「いっそのこと、他の女の人全員に愛想でもつかされちゃえば?………」

加奈の言葉は、最後の方は声があまりにも小さくて聞こえなかったが、確かにこのままでは~とは思うのだが……。欲張りは身を滅ぼすのだからな……。

 ふと、顔を上げると夜空に一点の光が流れては落ちた。とっさの出来事のために何も考える事など出来なかったが、あれは間違いなく流れ星だったのだろう。生まれてから初めて見た。もちろん、前世でも見た事は無い。

「お兄ちゃん、見た?」

「え?」

とっさに加奈の方を見ると、加奈は人差し指を上に向けて指した。なるほど、加奈も流れ星を見たのか。

「うん、でもとっさの出来事だったから願い事なんて出来なかったよ……」

「そっか!私はちゃんとしたもんね!願い事が叶うかも!」

「かなえば良いね。っと、ちょっと話しすぎたね。おなか空かない?どこかで食べようか。……駅前じゃないと無いよね……」

「ふふふ、もちろんお兄ちゃんの奢りでしょ?」

「当たり前。これでも給料貰ってるんだから。」

私と加奈は立ちあがり、公園を後にした。その際、加奈は何か呟いていたみたいだけど、私には聞こえなかった。何と言ったのか気になるが、聞かない事にした。それが流れ星に願った願いだったのならば加奈の願いは叶わなくなってしまうから。








「さて、どうだい?中々の出来だとは思うのだけれど。」

マスターが終わった二曲を聴き終えた所で、マネージャーの声が聞こえた。録音した時よりも何倍も良くなっていたように私は感じた。音のバランス、欲しい所で欲しい音が聞こえる辺りがまた良い。そこまでいじっていないようでここまで変わるのだからやはりプロの仕事は素晴らしい。

「凄いですね……私達の作品じゃないみたいです。」

「ハハハ、だって編集してくれたのはあの薫さんだからね。だから尚更良くなったんだよ。」

「へ~ってもしかして、ドラマーの薫さんですか!!!?」

「え、薫さん知ってるの?」

「僕のドラムの師匠です。13歳の時からお世話になってます。」

「そうなんだ~、だからOK出してくれたんだね。あの人、業界じゃ知る人ぞしる大物だからね~。中々仕事受け入れてくれないんだけど、君達のような新人バンドを受け持ってくれた理由が解ったよ。」

そうか、師匠が編集作業をしてくれたのか……やはり師匠は私が考える以上に凄い人物だったのだ……まあ、もしかしたらとは思ったのだが。

「何か改めてあのおっさんの凄さというか……ここ最近凄さしか伝わってこないよね……」

「ですね……初めてあった時の印象とは違いすぎて……」

普段というより、二人の前だとただの年齢相応の人になるからな、師匠は。

「ま、シングルも無事出来た事だし。後は年内にアルバム用のレコーディングを終わらせちゃおう。と言っても、後二曲だけだっけ?」

「そうですね。正確には二曲のうち一曲は歌だけですが。」

「じゃあ、話は早い。年明けからリハーサルを開始しちゃおう!そして、レコ発ツアーだ!」

マネージャーが意気込むのも解る。このまま予定通り進めば来年の三月にはライブが出来るのだ。既にホームページにはシングルの発売日と試聴用音源がアップしてある。年内にアルバムのレコが終われば年明けにも今企画しているツアーの詳細もアップされるだろう。

「よ~し頑張ろう!僕も君達のスケジュールがスムーズに行くように全力を持ってマネージメントするから!」

「「「はい!!!!」」」

マネージャーの言葉に、私達三人は声を合わせて勢いよく返事をした。このまま順調にいけば良い。 


 


 そして、早くライブをしたい。レコーディングして一つの作品として仕上げるのも良いが、やはりライブをしたい。私達が一番輝く時はライブなのだから。




 今回も読んで頂き誠にありがとうございました!


 最近、アニソンバンドの方の活動を再開しました。私はベースを行っているのですが、アニソンって中々ややこしく動くのでコピーするのが非常にめんどくさい時があります。そんな時はアドリブを行ってしまう悪い癖が発動してしまいます。どうしようも無いですね……下手糞なのに……

 それと、私はいまいちなろうのシステムを使いこなしていない気がします。これらも有効に活用していきたいな~と考えています。それよりももっと作品が良くなるように勉強をしなければならないですね……頑張ります!!

 そして、ここまで沢山の方々にこの作品を読んで頂き誠にありがとうございます。もっともっと頑張って皆さんの満足のいくような作品に仕上げたいです。

 では最後に、今回も読んで頂き誠にありがとうございました!感想等ありましたら気軽にどうぞ!泣いて喜びます!

 

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