高校一年生③ー2
祝、十万PV!!!!!!
本当に沢山の方々に読んで頂き誠にありがとうございます!多くの方々からお気に入り登録や、評価、ご感想を頂きまして、本当にありがとうございます!初めてのSSでこんなに多くの方々に読んで頂ける事になりました事を非常に嬉しく思います。
では、今回も皆さんが楽しんで読んで頂けたのならば至極光栄です。では宜しくお願いします!
「そして、気がついた。私は君に恋していると。」
歩みを止め、手を伸ばさずとも触れる事の出来る距離で千佳先輩は私に言う。聞き間違いであれば良いものの、この近さで聞き間違えるほど私の耳は遠く無い。私は精神異常者であり、ただの妄想か?とネガティブに考えてみても間違い無く妄想では無い。
要するまでも無く、千佳先輩は私の事を好きだと言っているのだ。
「先輩、僕は」
私が言い終える前に、千佳先輩は人差し指を私の口の前に置き
「ああ、言わなくても良い。新堂の言わんとする事は解っている。あの二人のことだろう?あの二人は心底君に惚れ込んでいる、普段の言動からも皆が解る事だろう。そして、君もあの二人に好意をい抱いている。そうだろう?」
私が言おうと思っていた事を述べた。私の口元から人差し指を離し、苦笑いを浮かべながら
「解っている、解っているさ。彼女たちが君に好意を抱いている事も、君が彼女たちに好意を抱いている事も。全くもって君たちの間に誰かが割って入る事なんて無理だと思わせてくれるよ。だがね。」
そう言った。私は千佳先輩の逆説の言葉を聞き、常々思っている事を言われるのではないかと思った矢先に
「最終的に選ばなければならないのは一人だ。日本は一夫多妻制では無いからね。二人が君の事を好きでも、君が二人の事を同じくらい好きでも選ばれるのは一人だ。その時残った一人はどうなるのだろうね?」
言われてしまった。決して間違いは言っていない、むしろ正論だ。私がずるずると一人を決めれずにここまで来てしまったのがいけないのだ。二人の女性から私に好意を持っている事を告白されながら。全くもって返す言葉が見つからない。
「それにもしもだ、もしも一人を決めた所で君達のバンドも今まで通りにはならないのではないか?少しの蟠りから始まり、それは徐々に大きくなりバンドは方向性を見失う。そうなってしまうのではないか?」
……バンド内恋愛でそれまで良い方向へ向かっていたバンドがいとも簡単に崩れていく事はよくある。私もそうなってしまったバンドを沢山見てきた。歯車が悪い方へと進めば進むほど多方面にも広がって行く。三人の関係、それは直接バンドの方へと繋がる可能性は無いと言い切れない。
「聡明な君なら解るはずだ。バンドの事を思うならば君は他の女の子と恋をしていくべきだと思う。恋愛絡みの解散なんて数多くあるんだ。君はあのバンドにどれくらい力を注いでいるかなんて見れば解る。それをこんな事で台無しにたくないだろ?」
と、言いながら千佳先輩の顔が近づいてくる。彼女の放つ有無を言わせない迫力にのみ込まれ、正常な判断ができなくなる。実年齢では私より一回りも少ない彼女に圧倒されているのが解る。少しずつ、少しずつ、まるで悪魔の囁きを聴き入れ魅了されたかのように私は考える事を放棄してしまいそうになる。
千佳先輩が顔を近づけてくる、数ミリ前へ顔を傾けるだけで唇が重なり合う。私は彼女に魅了されているのか?
「崩れ去る前に、私と一緒にいたほうがよくないか?君達のバンドはもう趣味では無い。ビジネスなんだ。君と二人はビジネス上の関係にしておいて……私が君の愛人になれば何も問題無い。そう、何も問題なんて無いんだよ。」
頭の中に彼女の囁きが響き渡る。私が二人と恋愛関係を結ぶことを破棄する事でバンドはビジネスとして成り立つ。互いに成果を求めるだけに動き、そこに余分な感情等一切要らない。ビジネスと実生活を切り離せば全て上手く行くのだと。
……本当にそうなのか?本当にそれでバンドは成り立つのか?バンドを優先するがために二人への気持ちを押し隠して千佳先輩を選ぶ事が成功へと繋がる?それで良いのか?二人は納得してくれるのか?ここ数日仲良くなっただけの先輩と私が結ばれる事を二人は心から祝福してくれるのか?バンドはより良い方向へと導かれるのか?……もし私がどちらかを選択する事で二人の関係はいともたやすく崩れ去ってしまうのだろうか?……否、彼女たちの友情を甘く見てはいけない。そんじょそこらの友達を謳っている奴らとは違うはずだ。それに、事の中心、癌は私にある。私自信が上手く行えば良いのだ。
そう……だから……私は……甘い考えかも知れないけど……
私は顔を背け、千佳先輩から離れた。先程までのまるで濃い霧の中をさ迷っていた感覚は失くなり、クリアな感覚に頭の中がなる。
「すみません先輩、それでも僕は先輩の気持ちに答えられません。」
私の問いに千佳先輩は驚きを隠せないようだった。まるで初めてフラれたかのような、今までにこのたぐいで落ちなかった男はいないと言わんばかりに。
「先輩、貴方の言う事は決して間違ってはいないと思います。バンドの事を考えるのならばバンド内恋愛は避けるべきなのかもしれません。ええ、そちらの方が良い方向へ向かう可能性の方が大きいかもしれません。ですが、僕は彼女たち以外を選ぶという選択肢は無いんです。先輩は凄く魅力的だと思います。でも、僕にとって先輩は彼女たちに遠く及ばない。外見とかじゃないですよ。そして、彼女たちはどちらかが僕と結ばれる事で関係が崩れる程、彼女たちの絆は僕らが思うほどに深い。だから例え何があったとしても、僕は二人は最後には笑っていると思うんです。まあ、僕が愛想つかされるという事ももちろんあるでしょうけどね。」
窓の隙間から教室内に風が吹き入れ、秋の夜風が私の身体に吹きつける。何を揺れる事があろうか、恐れる事があろうか。彼女たちの事を不安がるよりも、私自信の事の方が今も、これからも不安な事が多いだろうに。
私の言葉を信じられないとでも言いたげに千佳先輩は私を見ている。恐らく千佳先輩は、彼女は軽い気持ちだったのかもしれない。今回たまたまバンドを一緒に組んで何か私に惹かれる所があったのかもしれない。それを見て、私と付き合いたいと思ったのだろう。それが自然だ。否定等一切しない。彼女たちだってそうだったのかもしれない。ただ違う所は彼女たちと千佳先輩との思いの強さだけなのだから。
「そうか。いやはや君達の思いの深さを見誤っていたよ。そこまでだったとはね。そして君自信にも誤算だったよ。君みたいな人はさっきみたいに言えば確実に落とせると思っていたのだけどね。」
「正直、先輩の揺さぶりは理にかなっていた分タチが悪かったですよ。頭の回転も速いようですし、今までに落としてきた男の数は多いんじゃないですか?」
「そうだね。そして断られたのは君が初めてだ。」
自嘲気味に笑いながら千佳先輩は答えた。ただでさえルックスが良いのだ。そして他人に自分のペースに引きこませない手腕とかもし出す雰囲気は同年代の子達と比べるのがおこがましい位に抜きん出ている。
「ハハハ、ますます君に惹かれてしまったよ。遊び半分な所があったのだけれど、本気になろうじゃないか。」
「え?」
「だから」
千佳先輩は私のネクタイを引き、強引に自分の顔に寄せた。
「本気で君に恋したという事だよ。こうなったらバンドがどうのだとかそういう事で君を物にしようとは思わない。そうだな、私が君を求めるように、君が私を求めるようにしてみせよう。廊下で盗み聞きしている二人よりも君が私を求めるようになるくらいにね。」
そう言う千佳先輩の顔はもはやただの高校生が出せるようなオーラでは無かった。何なんだこの少女は?本当に油断していると主導権を持って行かれる!
「と、言う事でだ」
握っているネクタイを徐に引き取り、千佳先輩は私の元から離れていった。
「ちょ、先輩!それ」
「今日の記念に貰っていくよ。それじゃあまた今度。」
私のネクタイをブレザーのポケットに入れると、千佳先輩は教室を出て行った。残されたのは呆然としている私のみだった。千佳先輩が教室から離れていく足音が廊下中に響き渡る。何とも波乱に満ちた文化祭だった……床に座るとどっと疲れが込み上げてきた。
「……あ」
そう言えば私は皆で話していた所を呼び出されたのだった。携帯を開き時間を見ると呼び出されてから40分も経っていた。体感時間は凄く早く感じたのだが、実際はそれほどの時間が過ぎていたのだ。
もう皆帰ってしまったのかもしれないが、取り敢えず元の場所に戻らなければならない。荷物もそこにおいているのだから帰るにしても一度そこに行かなければならない。
「……よいっしょっと!」
若者らしくない言葉を使いながら私は立ち上がり、教室の窓を閉めてドアを開けた。月の明かりが照らされているように時間ももう遅い。これ以上遅くなると家に帰った後が面倒くさい。(主に加奈だが)急いで帰らなければ。
階段の方へ向かおうと方向転換した時
「……」
目に入ったのは見知った二人組だった。
「……」
二人は満面の笑みで私を見ている。私も笑顔を返し、反対方向を向き走り去ろうと一歩踏み出すのだが、
「待ちな!」
「待ってください。」
それぞれ別々の肩を二人同時に掴まれ、私はその場を立ち去る事が物理的に無理になってしまった。
「ちょっと話聞かせてくれるよね?」
「良くん、私も聞きたいな。」
決して振り返ってはいけない。振り返ると今以上の地獄が待っているのだろうから……掴まれている肩口に指が徐々に食い込んでいく。いくら二人いようと女子と男子では体格に差がでてしまう。本来ならば振りほどけるのだが……
今は振りほどこうと腕を上げる事すらままならない。というか物凄く痛い。二人とも何処にそんな力があるのだ?
「い、いやね?最近帰りが遅くなってるから両親も加奈も凄く心配しているみたいだから今日はこれで……」
「じゃあ良の家に行けばいいんだね?そうだね、加奈ちゃんも立ちあって話しなきゃいけないもんね。」
「そうですね。幸いにも今日は真美さん私の家に泊まる事になってましたから。私も両親に良くんの家に泊まると言えば喜んで承諾すると思いますし。」
「そうだね。何で千佳先輩が誰かのネクタイをポケットからはみ出させていたのかとか、何で良のネクタイが無いのとか、何で上着がそんなに気崩れているのかとかね。」
真美の言葉に違和感を感じ、胸元を見てみるとシャツのボタンが上から三つも取れていた。そして、不自然にはだけていた……いつの間に千佳先輩はこのような事を……
「いや、待って!これは!」
「「言い訳は家に帰ってから!!!」」
……本当に今年の文化祭は波乱に満ちている。今の私の状況は幸なのか?不幸なのか?ああ、家に帰ってからもこの空気が続くのかと思うと頭が痛くなる……
<Side Another>
「バンドをやっているとモテる」
こんな言葉が世に出回っているが、俺自身は決してそんな事は無かったぜ!畜生!何で俺はモテないのか?顔だって悪くない(と思いたい)だろうし、身長だって低くは無い。頭だって良いはずだ!そりゃ学内じゃあまり良い成績では無いけど、この学校は元々超進学校なんだし!ギターだって、小学校や中学校の時と比べたら格段に上手くなったと思うのに何で俺はモテないんだ?
……だが、バンドをやってモテる奴がいるのも事実だ。いい例が新堂良だろう。事実、小学校最後の出し物のバンドをやってから周りの見る目が変わった。そりゃ、あいつは見た目もそこそこ良いだろうし、学業も運動面も悪くは無い。だが、そんなやつうちの学校では珍しくない。上には上がいる。良より成績が良い奴は……そんな多く無いけど運動なんてあいつより凄いやつなんて沢山いる。小学生なんて皆運動が出来る奴に惚れてしまうのさ。だからあまり良は目立たなかったのかもしれない。元々元気で活発な奴じゃないし、どちらかというと大人びている奴だ。中学生になると周りの女子もそれまでの価値観から違う物へと移行し、大人びている奴が人気が出るようになった。それでいてバンドやっててめちゃくちゃドラム上手いんだからモテないはずが無い。ドラムだけじゃなくギターまで上手いときたもんだ!それに性格も悪くない。糞!あいつは完璧超人かよ!でも良が言うには妹の加奈ちゃんこそが本当の天才であって、自分は努力の人間だ、と言っている。……まあ、言いたい事は解るけどな。
要するに!決してバンドをやっているからモテる訳では無いのだ!モテる奴は何やってもモテる、それがたまたまバンドだっただけなのだ!
俺だって最初はモテたいが為にバンドを始めたさ。それでギターなんだからモテない訳が無いだろう?だってギターはヴォーカルと同じくらい目立つんだから。技術だってそんなに悪くないはずなのに何で俺はモテないのかね……滅茶苦茶練習して上手くなってきたから憧れの千佳先輩を誘ってバンドを組める事になったのに、千佳先輩は俺よりも良の方を見てしまう。今回の選曲の美味しい所は全部俺が弾いているのに良を見る……アハハ、何か目から塩水が流れてきてるぞ?おかしいな……外で真美さんと増田、良と話していたはずなのに良がどこかへ行くと二人ともその後を追っかけるし……俺一人で寂しい思いするのも何だから今日は友達に撮ってもらったライブのビデオを見て一人で悲しく過ごそうかな。あ~あ、世の中のカップル皆滅んだらいいのに。
「匠、最近寒くなってきたね……」
「……ちゃんと暖かくしろよ。」
……本当に……カップルなんて滅んだらいいよ……
と、その前に部室に行って機材取りに行かないと。先輩たちまだいるのかな?ま、関係無いけど~。
今回も読んで頂き誠にありがとうございました!
え~と、いきなり言い訳から入ります。感想の方では書いたのですが、最近実生活のほうが何かと忙しく全然書く暇がありませんでした。楽しみにしてくださっている方々には申し訳無いです……
それで、今回約二ヶ月ぶりの更新も非常に少ない文章量で本当に申し訳ないです。出来る事ならば年内に後最低でも四つは投稿したいと思っています。
前書きの方にも書かせていただいたのですが、本当に多くの方々にこの作品を読んで頂きとても嬉しく思っています。私自身ももっと頑張ってより良い作品にして行きたい!と思っていますのでどうか暖かいまなざしで見守ってください。
では最後に、今回も読んで頂き誠にありがとうございました!感想等ありましたら気軽にどうぞ!泣いて喜びます!