外伝② さらに別の転生者の場合③
はい、③です!何とか書けました!
そう言えばフルメタの最終巻、ようやく読み終えました!素晴らしいですね、そして賀東さんはやっぱり凄い!あと緋弾のアリアの最新刊も、来月は境界線上のホライゾンとISの新刊が出るとか……
めっちゃ趣味の事ばかり書いてしまいましたけど、頑張って書きました。今回の話も皆さんが楽しく読んで頂けるように頑張りました。それではどうぞ宜しくお願いします!
゛クラリス家のハル・クラリス=コンチェスは既に亡くなっておりこの世に存在しない。よって、そちらにいるハルと名乗る人物はクラリス家とは一切関係無い人物であり、当家には関わりは無い。"
クラリス家の正式な返答内容。要するに、僕はもうハル・クラリス=コンチェスでは無い。ならば僕は誰なのか?僕はハルでは無いのか?この世に存在しない人物、存在してはいけない人物。
「ハル君……」
ハルとは一体誰なんだ?ハルは僕ではないのか?今ここにいる僕は一体何者なんだ?
「ハル?」
「……はは、僕はハルじゃ無いんだ……ハルじゃ……無いんだ……僕は誰なの?ねえマリーさん、シャロン、ハル・クラリス=コンチェスはもう死んでいなくなってるんだってよ。おかしいよね。僕は生きてるのに……でもクラリス家には僕の居場所は無いんだって。」
僕の中にあった何かが失われて行く。クラリス家の屋敷で過ごした日々が、生活が、全て頭の中に流れては消えて行く。母様から生まれた日の記憶も、兄様達と遊んだ記憶も、父様から学んだ記憶も、召使い達にお世話してもらった記憶も、セリアと一緒に観た海の景色の記憶も。
「ハハハ、僕って……僕は……ぼ……」
足が、体中に力が入らない。立っていられない、それに体の内面から何かが沸き上がってくる。抑えきられない、胃から食堂を通り、喉を伝って何かが逆流する。駄目だ、吐き出しちゃ駄目だ、全てが、僕の生きてきた全てが吐き出される気がする。絶対に吐き出しちゃ駄目だ。吐き出したら……
「…う……!!!!!!!!!」
「ハル!しっかりして!」
……駄目だ、今吐き出してしまったら何もかもが失くなる。そんな事になったら僕は、僕は僕でいられなくなる!でも口からは何かが吐き出される。吐いちゃ駄目なのに、駄目だって思うのに体が言う事をきかない。辛い、胃から伝って来る物が出るのが辛い。辛い、吐く度に息が出来ずに咳き込むのが辛い、辛い……
<Side Another>
ハルの家から伝書が届いた。丁度、お昼寝の時間で私とシスターとハルしか起きていなかったので、シスターが伝書を受け取り、それを読んだ。
ハルの家は大貴族らしく、家の方が心配しているかも、と言う事でハルがシスターにお願いして伝書を出した。私達は帰る場所はここだけど、ハルにはハルの帰る場所がある。それはとても良い事であると同時に、いつかは別れなければいけない事に子供達やシスターも寂しさがあったと思う。もちろん私も皆と同じように寂しく思った。
「でも、ハル君には家族がいますからね。シャロンにとっての私みたいな人がいるのですよ。寂しいですけど我慢しなければなりませんよ。」
シスターはそう言うけど、本当は一緒にいたいんだと思う。私より一個下とは言っても体は大きいし、男の子が手伝ってくれるのは大きい、何よりも一緒にいて楽しいはずなのだから。
シスターが伝書を読み終え、ハルが自分にそれを読ませて欲しいと言った時、シスターは難しい顔をした。まるで見せたく無いような、ハルに伝書を渡したくなさそうな複雑な顔をしていた。私はそれがここに来てハルがいなくなるのが嫌なのかなって思った。ハルがこれからの事もあるから、と言って無理やりシスターの手から無理やり取って読もうとした時、いつも凛々しく、優しい表情のシスターが悲しそうな、泣きそうな顔を表に出した。私はその顔を見て、それまでのハルがいなくなる事が嫌なのではなく、伝書の内容をハルに見せたくないのだと確信した。
ハルが伝書を読んでいる間、シスターは酷く狼狽しているように見えた。そろそろ読み終えてもいい頃なのに、ハルは一向に伝書から目を離さない、何回も、何回も読み直しているように見えた。目の動きが止まっても、暫く伝書から目を離さなかった。その時間がとても長く感じた。いつまでたってもハルは顔を下にしたまま、伝書を手に持ったままだった。私は堪らず、ハルの名前を呼んだ。ハルの様子を探るように、か細い声で。続いてシスターも名前を呼んだが、その声は私以上に細く、小さい声で、私よりもハルの様子を伺うような、心配しているように聞こえた。するとハルは肩を小さく揺らしながら、
「……はは、僕はハルじゃ無いんだ……ハルじゃ……無いんだ……僕は誰なの?ねえマリーさん、シャロン、ハル・クラリス=コンチェスはもう死んでいなくなってるんだってよ。おかしいよね。僕は生きてるのに……でもクラリス家には僕の居場所は無いんだって。」
最初は呟きながら、そして、私達の方を見ると自分はハルじゃ無いと言った。嘲るように笑い、目が血走り、狂気じみた表情を浮かべながら静かに喋った。私はそんなハルに、何も言えずに、ただただ唖然とするしか出来なかった。
でもこのままじゃハルが壊れていく、大事な弟があの時みたいにまた失われる!そんな事は絶対に嫌だ!そう思いハルに何か言おうとした時、
「…う……!!!!!!!!!!!!!」
ハルは苦しみだし、その場に膝を着くと同時に口を手で押さえ下を向いた。
「ハル君!」
シスターが慌ててハルの元に駆け寄る。その間にハルは手で押えきれないほど口から物を吐いた。シスターがハルの背中をさすり、必死に呼び掛けながら介抱する。また、また私は弟を失ってしまうの?苦しんでいる弟を見殺しにしちゃうの?
「いや……」
嫌だ、そんなの嫌だ、弟が、ハルが死んじゃうなんて嫌だ、そんなの絶対に嫌だ。嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!何で?どうしてハルが苦しまなくちゃいけないの?どうして私達ばかりこんな思いをしなくちゃいけないの?どうして?ねぇ、神様どうして?私、ちゃんと毎日お祈りしてるよ?なのに何でハルはこんなに苦しんでいるの?ねぇ、どうして?どうしてなの神様?どうして私の弟はいつもこんな目に遭わなくちゃいけないの?ねぇどうして……どうして!!!!!!!
「シャロン!!!!」
シスターの怒声で私はハッと我に返った。シスターの方を向くと、ハルの背中をさすりながら私の目を見て
「急いで水を汲んで来て!それとベットの準備を!ハル君は必ず助かります、だからしっかりして!!」
「は、はい!」
私は急いで水を汲みに井戸へ向かった。ハルが死ぬ訳では無い、今は精神に負荷が荷重に掛かっている状態だ。部屋を出る時にチラッと見た時ハルは気を失っているようだった。ならばハルが次に目覚めるまできちんと整えてあげてそれからハルの心を直していけば良い。ハルはまだ死んでいないんだ、私に出来る事はこれからまだまだある。今ここで愚図愚図している場合じゃないんだ。
ハルの身体を綺麗にし、着替を行った後私とシスターでハルをベットに寝かせた。段々呼吸も安定していき、どうにか一段落着いたみたい。ただ、ハルが目覚めた時にどんな行動をするか解らない。その時に側にいて、落ち着かせる事が最も重要で、私が最も頑張らなければならない事。
「シャロン、ありがとうございます。」
「いえ、私も気が動転してしまいシスターに迷惑を掛けましたから。」
室内の空気は異様なまでに暗い。幸いにもちっちゃい子達はお昼寝の時間だったからこの事を知っているのは私とシスターだけだ。あの子達には何とか有耶無耶にしておける。ハルのさっきみたいな様子を見せたく無い。
「シャロン……貴方も辛かったのですよね?それなのに怒鳴ってしまってごめんなさい。」
シスターは私に申し訳なさそうに謝った。私の事は小さい頃から知っている、ここで生活した事も、ここに来る事になった経緯も。だから謝っているのだろうけど、
「いえ、シスターが謝る事じゃないですよ。ちょっとシェーンと重なっちゃいまして……もう何年も前なんですけどね。ハルって、シェーンと同い年だったから余計に……だから本当は誰より早くハルの元に駆けつけなくちゃならなかったんです。」
私はシスターに精一杯の笑顔を向けて言った。そう、本当ならば動転している場合じゃなかった、シスターよりも早くにハルの元に駆けつけて介抱しなければならなかった。私がお姉ちゃんなんだから。
「シャロン……」
シスターは私に近寄ると、私を抱き寄せた。シスターの胸の間に私の顔がうずくまるように、優しく、優しく頭を撫でられながら。最初は驚いた。だって私はここにいる子達よりもお姉さんで、一番しっかりしなければならないんだ。それが、小さい頃のようにこうされるなんて。でも段々と心が落ち着いてくる、シスターの温もりが伝わる、慈悲深く、全ての者を包むこむような。マリア様がもし今この世界にいらっしゃったのならばそれは、それはシスターなのでは無いだろうか?
「シスター……シスター!!!!!!」
シスターに抱きしめられ続け、何かが肩から降りたように感じた時、私は叫ばずにはいられなかった。胸の中で叫びながら、シスターと叫んでいると、私の中から悲しみが外に溢れでた。いっぱいいっぱい涙が溢れた、いっぱいいっぱい悲しさが込み上げては外に出て行くように感じた。
「主よ、どうかこの子達にご加護を……」
私はシスターにしがみつきながら、気が済むまで泣いた。
<Side Another2>
「シスター!!!!!!!!」
シャロンが私の胸で悲しみを吐き出している。シャロンの辛さ、悲しさは私以上でしょう。小さい頃に戦争で家族と弟を無くして、行く宛の無かったこの子を拾った経緯を考えれば、シャロンにとって家族を失うのはどれほど辛い事か、家族が傷つく事がどれほど辛い事か。シャロンにとってハル君は本当の弟、シェーン君と重なったのも無理の無い事です。歳が同じだけでは無かったのでしょう、どこかハル君はシェーン君と似ていたに違いありません。シャロンがハル君に顔を真っ赤にしながらお姉ちゃんと言われた時、シャロンの顔はいつもより輝き、笑っているように見えました。
ここ暫く、シャロンがこんなに泣いている姿を私は見たことがありません。誰よりも私の手助けをしてくれて、子供達の面倒を見て、しっかりと皆のお姉ちゃんの役割をするシャロンの泣き顔を。しっかりしようと、誰よりも強くあろうとするシャロンは、今日の様な事がまた起きたのらきっと今のように誰よりも悩みを、悲しみを胸に抱え込もうとするでしょう。それではいつかシャロン自信が壊れてしまいます。そうならないように、私が修道院にいた時、悩みを、悲しい事をシスターに伝え心が軽くなったように、シャロンにとって私が本当のシスターと思えるようにならなければなりません。
「主よ、どうかこの子達にご加護を……」
この子達はいっぱい辛い思いをしています。主よ、私達を見てくださっているのならばどうか、どうかこの子達に祝福を、ご加護をお与え下さい。この子達に幸せが訪れるように、この先笑って暮らせるように。主よ、どうかこの子達にご加護を……
今回も読んで頂きありがとうございます!
前書きとあとがきに結構好き勝手書いてますけど皆さん読んでいらっしゃるのですかね?結構気になります。
さて、この外伝、ど~んよりと暗い感じで始まり、明るくなったと思いきやはたまた暗くなる、なんて事でしょう!間違いなく精神的ダメージは大きいはずです!まあ、こんな感じで書き続けてたら良の方をどう書けばいいんだ!と感じてしまったり。
それではいつものごとく感想をお待ちしております!
では、今回も読んで頂き誠にありがとうございます!