外伝② さらに別の転生者の場合②
と言う事で外伝②の②です。結構間際らしいですね。そういえば、夏祭りに行った時にカップルが物凄く目につきました。同年代の友達もほとんど異性と付き合い、皆カップルで夏祭りに向かいます。ああ、良いな。私もいつかはカップルで夏祭りを、防波堤で一緒に花火を・・・・・・と思う気持ちよりもカップル爆死しろって気持ちの方が大きかったです。人として最低だと感じて泣きながらたこ焼きを食べていました。
まあ、それだけなんですが・・・・・・と、言う訳で今回も宜しくお願いします!皆さんが楽しく読んで頂けたのならば幸いです。
ああ、また僕は死ぬのか。
前世で自ら死んだんだ、その罰当たりなのかも知れない。あの悪い環境を抜け出すために死んだ事、環境を変えようとしなかった事、逃げ出した僕への報いなのか?ならば何故この家に生まれたのだろうか?記憶を残し、時代は違うと言えど望んでも手に入らない境遇に生まれて。
水面に背を向け少しずつ落ちていく、自分の体がスローモーションのように落ちているかのように感じる。この高さから落ちたら死ぬだろうな、運良く生きていたとしても五体満足では生きれないんだろうな、そのように頭の中で考えられる程、ゆっくりと、少しずつ落ちているように体感していた。下を見るともう少しで水面に着く。セリアや召使いたちは大丈夫だったのだろうか?今更彼女たちの心配をする僕は人思いじゃないのかも知れない。
ゆっくりと、ゆっくりと体は落ていき、ついに水面に僕の体は接触した。その瞬間、今までの遅い体感速度からいつも通りの速度に戻った気がした。背中から伝わる物凄い衝撃に、痛みを感じる前に、僕の意識は手放す事を選択した。
音が聴こえる、繊細な音色で澄み切るような音が。こっちに来てから聴いた事のある楽器の音色だ。なんだったっけ?その音が徐々に鮮明に聴こえるように感じた時、僕は目を開けた。体を起こそうとした時、
「・・・・・・・っ!!!!!」
体中に痛みが走り、僕は起きあがるのを止めた。そうだった、僕は崖から落ちたのだった。でも、痛みがあると言う事はここは天国では無い。どうやら僕は生きのびる事が出来たみたいだ。何故生きれたのかは解らないが。目線を足元に向けてみようと頭を起こす。多少痛みを感じるが、先程のように激痛を伴なう事は無かったので無理やり頭を起こした。体の上にシーツが被せられ、その膨れ上がりを見るとどうやら五体満足のようだ。手足が動くかどうかは現状では試しようが無いが。そう思っている間にも何かの音色は聴こえてくる。室内に響き渡るその音は空気感を持ち、エコーがかかっているかのように聴こえる。
「ああ、この音はオルガンか。」
教会に行けば修道士が礼拝のために演奏しているのを、稀にただ弾いているだけを目撃していた。そのオルガンに似た音色。音量、体に響く音色は違うのだが、これは間違いなくオルガンの音である。だが僕の家にオルガンは無い。昔に比べて小型化され、貴族の、僕の家のような身分なら持つ事は可能なのだが、楽器を演奏する事は父の考えにそぐわないらしく、置かれていないはずだ。首だけを回し、辺りを見渡すと、この部屋は自分の知らない部屋である事が見受けられた。僕の家にこんな質素で狭い部屋は召使いたち用である。間違っても僕がそのような場所で寝かされる事は無い。ならば、あれから僕は誰かに拾われたのだろうか?
「あら、ようやく目を覚ましたのですね。」
声が聴こえた方を向いた先にいたのは、修道服を身に纏とい、手に布巾とボウルを持っていた若い女性だった。
「僕はハルと言います。失礼ながら貴方のお名前を。それにここはどこですか?」
「私はマリーと言います。ここはですね、小さな教会なんですけど、身寄りの無い子供達を預かって育ててもいるんですよ。だからハル君を海辺から運んでくれたのもここの子供達なんです。」
マリーさんは僕の問いに笑みを浮かべながら丁寧に答えてくれた。身寄りの無い子供、それは恐らく捨て子や戦争孤児なのだろう。貧しい家庭だと子供を育てるはおろか、自分達の食い扶持だけで精一杯という所も少なく無い。そんな家庭では子供を捨てるという事は在り来りである。それ以外にもつい最近までこの国は隣国と戦争をしていた。近代のように大多数の質量兵器、多数の戦死者を出す事はなくても、いつだって戦争の被害を被るのは民である。なるべく戦地は市街では無く、平原等広い場所を使われるのだが、運悪く農民等が巻き込まれる場合がある。逃走兵等により村を焼かれる、壊滅させられるという事も珍しく無い。幸いにもこの国は負けていないのだから敗戦国ではないので国民は酷い扱いにはならかったが、相手国側はどのような事をされているのか考えたくもない。
「そうなのですか。その子達に僕はお礼をしなければなりませんね・・・・・・っ!!」
寝たままで受け答えするのは失礼に値すると思い体を起こそうとするのだが、体中の痛みに顔が歪む。それを案じてか、マリーさんは優しく、
「体を動かさない方が宜しいですよ。貴方の体は重症なのですから。お医者様にお見せした時に一月は安静にしていなさいと言われましたのよ。貴方が運ばれてからまだ半月程しか経っていません。決して無理をしてはなりませんよ。」
僕に言い、ベットに歩み寄ると手にしていた物を机の上に置いた。マリーさんの言葉通りだと、僕はあれから半月ほど眠っていた事になる。その間看病や身の回りの世話をして下さった事を考えると感謝してもしきれない。
「半月もお世話になっていたのですか?それは誠に申し訳ございません。このご恩は必ず返させてください。」
「いいのですよ。何があったのか存じ上げませんが、神様が貴方を救ってくださったのです。ならば私が貴方を看病する事は決まっている事なのです。感謝をするのなら神様に感謝しなくてはなりませんね。」
胸の前で十字を切り、マリーさんは両手を合わせて祈った。その姿は修道女に相応しく、堂々としていた。その様子を見ていたら廊下から足音が近づいてくるのが聴こえた。足音がすぐそこまで聴こえると、勢い良くドアが開かれ、
「シスター!!!あと少しでお祈りの時間ですよ!!!急いで下さい!!!」
黒髪を肩くらいまで伸ばし、マリーさんと同じような修道服を見に纏った活発そうな少女が入ってきた。走ってきたのか肩を上下に揺らし、息を乱しながら。
「シャロン・・・・・・何回言えばいいのですか?少しは淑女としての嗜みを・・・・・・それにこの部屋には患者がいるのですよ?」
「でもシスター!!」
「でもじゃありません。ハルさんのお身体に差し支えたらどうするのですか?元気があるのは良い事ですけど時と場所を考えなさい。」
優しく諭すように言っているつもりなのだろうが、それが余計に怖く感じる。人によっては起こった時は怒鳴るよりも静かに喋る方が怖い人がいる。マリーさんはまさにそちらのほうだろう。シャロンと呼ばれた少女も段々と顔の色が青くなっていくのが目に見えて解る。
「シ、シスター・・・・・・・」
「シャロン、私はもう少ししたら行きます。必ず時間には間に合いますから安心してください。さあお行きなさい。皆をしっかりとまとめるのですよ?」
マリーさんは彼女に歩み寄ると目線を同じにして言った。先程までの優しさの中に怖さがある物言いでは無く、全面的に優しさのみが伝わる。彼女もそれが伝わったのか、表情が明るくなった。
「はい!」
「それじゃあ部屋を出る前にハルさんに一言謝るのですよ?」
「はいシスター。騒いでしまってごめんなさい。」
優雅さが少し欠けるものの、誠意のこもっている事は伝わる。僕は気を悪くする所か、全然きにしていないのだからそこまでしてもらう事は無い。
「全然大丈夫ですから。早く礼拝所に行って子供達の所に行ってあげてください。」
「ありがとう!」
彼女は元気よく頷くと駆け足で部屋を去って行った。
「ああ!もうあの子は・・・・・・お見苦しい所をお見せしましたね。」
「いいえ。元気があるのは良い事ですよ。なんだか年寄りくさい物言いになっちゃいましたね。」
「私もハルさんもまだまだこれからの人ですよ。ハルさんはシャロンと同じ位の歳に見えますよ?」
ほほ笑みを浮かべながらマリーさんは答えた。マリーさんの歳が非常に気になるところだが、女性に歳を聞くのは失礼な行為だ。それに、何気なく聞いて怖い事にでもなったら、
「ハルさん?もしかして私は若く無いなんて思っていませんか?」
「い、いいえ!そんな事は」
当たらずも遠からずな事を急に聞かれて僕の声はうわずってしまった。マリーさんを見るとさげずむような視線を僕に向けていた。その視線に狼狽えていると、
「もう、私はこう見えてもまだ23ですよ?でも主に身も心も捧げているので駄目ですよ?」
そう言うマリーさんは修道女と言うよりは歳相応の女性が垣間見え、僕は少しだけ心がときめいてしまった。
部屋に微かに聴こえる賛美歌の音色に耳を傾けながら窓の外を眺めていた。陽射しが部屋に入り、風が室内に流れてくる。その風の心地良さと綺麗な歌声を聴いていると心が洗われるようだった。
「セリアや皆は大丈夫なのかな・・・・・・」
僕だけが運悪く、ならばそれにこした事はない。不慮の事故で命を落とす事は無念過ぎる。それにいくら人はいつか死ぬと言っても出来る事ならば幸せに見守られながら死んで行ってほしい。
「早く動けるようになるまで回復しないとね。」
父様や母様の事も気がかりだ。半月も経っているのだからもう僕は亡くなっている人かも知れないけど、どうにかして二人に元気な姿を見せてあげたい。
礼拝が終わり、マリーさんが食事を持って部屋に入ってきた時、僕はクラリス家の事を話し、父様に僕の安否を伝えて欲しい旨を喋った。マリーさんは快く承諾して下さり、一番近くの修道院から伝書鳩を飛ばしてくれる事になった。
「本当にご迷惑をおかけしてすみません。」
「主に使える身としては当たり前ですよ。」
僕が目を覚ましてからさらに半月が経過した。身体の方もだいぶ良くなり、日常生活に支障がきたさないくらいに送れるようになるまで回復した。子供達の世話をしたり、文字や勉強を教え、マリーさんの手伝いをして日々を過ごしていた。
「ハル~!今日は何のお話してくれるの~!?」
「お話よりも僕達と一緒に遊ぼうよ~」
「遊ぼう!」
「先にシャルとアンとセシリーにお話をしなきゃいけないんだ。それから遊ぼうね。」
子供達も僕に懐いてくれたので、暇の無い日々だった。女の子達はお話や勉強事に興味を示してくれて、僕の話す内容は小さい子以外にも、シャロンやマリーさんまでも興味を抱いて聞いてくれる。男の子は体を動かす遊びが大好きなので、あまり一緒に遊んであげれないが、徐々に体が動いてくれるようになるにつれて様々な遊びを教えたり、一緒に行うようになった。
椅子に腰掛け、前世で読んだり、聞いたりした事のある物語を僕は女の子達に聞かせた。僕の話を聴いている時の女の子達の目はとても楽しそうで、喋っている僕の方が嬉しくなる。
「はい、と言う事でここまでだよ。続きは明日かな?ちゃんと皆がマリーさんのお手伝いを頑張ったら話すよ。」
「解った!私、シスターのお手伝いいっぱい頑張るよ!」
「私も!」
「私も頑張る!」
僕の言葉に元気よく返事をして、彼女達はマリーさんの元へ走っていった。こうして皆が手伝えばマリーさんも仕事の量が減り助かるだろう。それに、マリーさんは子供達と一緒にいるのが大好きな人だ。手伝ってくれるとなると喜ぶだろう。
「ハル、ちょっと洗濯物干すの手伝って!」
遠くからシャロンが声をかける。
「解った~。すぐ行くよ。」
椅子から立ち上がり、僕はシャロンの元へと向かった。今日も天気が良い。選択を干すのには最適な日和だろう。
洗濯物を干していると、
「ありがとねハル。ハルが来てから皆楽しそうだもん。」
シーツを木に干しながらシャロンが言った。
「ううん。僕も楽しいから。」
「私もハルのお話楽しみにしてるんだからね。」
「ありがとう、シャロン。」
「シャロンお姉ちゃんでしょ!?私の方が歳上なんだから!」
他愛も無い話をしながら僕とシャロンは洗濯物を干していった。実はシャロンは僕よりも一個上なのだ。それが解るやいなやシャロンは僕にお姉ちゃんと呼べと言うようになった。僕はこれまで姉を持った事が無かったのと、照れからお姉ちゃんとは言い辛くてあまり言わないようにしている。シャロンは呼んで欲しいのか呼び捨ての時は口ずっぱく僕に指摘してくる。でも、口では言えなくても僕の中でシャロンは姉的存在になっていったのが解った。
「シャ、」
「お姉ちゃん!」
「お、お姉ちゃん。」
「うん!な~に?」
「こういう生活って楽しいね。」
翌日、クラリス家からの伝書が届いた。
゛クラリス家のハル・クラリス=コンチェスは既に亡くなっておりこの世に存在しない。よって、そちらにいるハルと名乗る人物はクラリス家とは一切関係無い人物であり、当家には関わりは無い。"
読んで頂きありがとうございました!
ええ、結構急展開という形で作ってみました。どうなるかは・・・・・・どうなるんでしょうね?そう言えば、三万PV達成しました!本当に皆さんありがとうございます!一日だけ物凄くアクセス数が多かったので何でだろう?って思ったらここじゃない投稿サイトの捜索の方で名前が挙がってたみたいですね。正直、めっちゃ嬉しかったです!あのサイトを常日頃利用している自分にしたらめちゃくちゃ嬉しかったです!本当に皆さんありがとうございます。
と言うことで今回も読んで頂き誠にありがとうございました!