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中学三年生②-1

第九話の1です。書くのに夢中になっていたらご飯を食べるのを忘れていた。一日一食!良いダイエットになりますね。めっちゃ眠い、でもゲゲゲの女房見なければ!ということで第九話の1です。今回も読んで頂けると幸いです。ではどうぞ宜しくお願いします。

「次のライブは学校の文化祭になると思います。良かったら来てくださいね!それじゃあ次の曲行きます。」

慣れと言うのは怖い物で、観客数が100人越えを達成すると、半分のお客さんの数でも少なく感じてしまう。それでも私達はお客さんの多い少ない関係無く精一杯演奏しようと皆が心に誓っている。驕る事が一番だめなのだ。自惚れる事も駄目だ。

「ありがとうございました!」

最後の曲が終わり、私達はステージを後にした。ライブを一回やると私は汗だくになる。一曲一曲を常に持てる力を出し切るために精一杯行うからだ。物理的な力を入れてドラムを叩いてる訳ではない。

「お疲れ。」

水の入ったペットボトルを差し出し、真美が私の前に立った。

「お疲れ。増田さんもお疲れ。」

「お疲れ~真美さんお疲れ~。」

増田さんに挨拶をして、私は水を飲んだ。ライブ後の水は凄く美味しい。楽屋の端に移動し、荷物を置いて一度外へでる事にした。楽屋を出て、ホールを横切り、階段を昇り外へ出た。

 時期的に、外も十分暑いのだが、中のこもった熱気に比べたらまだまだ涼しいので、夜風を浴びて涼しんだ。

「お疲れ様、中々良くなってきたんじゃないか?」

「お疲れ様です。来てたんですか?」

師匠に良くなってきたと言われ、嬉しくなった。師匠が私を褒める事はあまり無い。褒めてくれる時は相当良い時だけだ。

「馬鹿、お前のドラムじゃねぇよ。バンドだよ。お前はまだまだだ。全然俺レベルには成っていないよ。たかが六曲くらいでへばってるようじゃ話にならねェ。もっと力を抜ける所は抜かせ。あと体力をつけろ。」

「ですよね~。」

やはり、師匠は私個人を褒めてはくれなかった。でも、バンド自体を褒めてくれたことは素直に嬉しかった。そして、さり気無く私個人の問題点を話し、対処方法を教えてくれるので本当に尊敬出来る。

「お前らがその気なら俺がレーベルに声かけてやるけどどうする?ま~声かかってそうだけどな。」

「直接は来てないですけど、そんな話があるってオーナーさんが。でも、正直まだまだレコーディングするレベルじゃないかと思うんですけどね。」

「う~ん。そりゃメジャーで長くやってる奴らや上手い業界のやつらに比べたらまだまだだけどよ。お前らの実力ってお前が悲観するほど低いってわけじゃないからな。お前個人に限って言えば、若いやつらに比べたら技術はお前の方が全然上だ。真美ちゃんだって若いスタジオミュージシャンレベルはある。増田ちゃんなんて、あの子ピアノすげーだろ?普通ならクラシックでプロ目指してるんじゃないか?」

確かに、私はそこまでのレベルじゃないと思うけれど真美と増田さんは凄い。師匠がここまで褒めるのも頷ける。

「そもそもだな、俺が三年も教えてるんだ。それでアマチュアレベルしか成長出来ない奴を俺は教えねぇ~。見込みがあるやつだけにしか見てやらねぇんだ。その点は誇ってもいいぞ。」

「ありがたいですね。」

「お前はもっと嬉しそうにしろよ!」

頭を力任せに撫でられ、少し痛いが師匠の言葉は物凄く嬉しい。

「でだ。」

師匠は私の頭から手を離し、煙草に火を付けて話し始めた。

「お前らもそろそろどうするか考えろ。レコード会社と契約して商業目的にするのか、それとも趣味の延長線上で行うのか。俺の見立てではお前らのバンドは上に行く力を持っている。集客性もある。売れるかどうかは運次第ではあるが、お前らがその気ならメジャーでもインディーズでも話を持ちかけてやる。それでだ、取り敢えずデモ作ってみない?ドラム録りならいつもの所で出来るし、持ってなかったらMTRも借してやる。」

「何でそこまでしてくれるんですか?師匠がコネとかそういうの嫌いなの俺知ってますよ?」

そう言うと師匠はニヤリと笑い、

「言っただろ?俺にバンドをもう一度したいって思わせるバンドはここ数年いなかったんだ。お前らは他のやつらとは違うんだよ。」







 翌日、準備室に二人を呼んだ私は、

「って事で、デモ作ってみる気があるなら作れるけど・・・・・・どうする?」

真美と増田さんに、先程の師匠の事を伝えた。

「良いじゃん!作ろうよ!上手く行ったら私達デビュー出来るんでしょ?作るしかないでしょ?」

「私も作ってもいいと思う。それに、本気で皆がデビューしたいならするべきだと思う。」

真美も増田さんも作る事に賛同した。

「それじゃあ取り敢えず、デモは作るって事でいい?数曲だけだから文化祭前にはつくり終えれると思う。文化祭の時にCDを配布してみよう。」

「「やったあ!!!」」

真美と増田さんはハイタッチをして喜びあった。そして、私は先程の増田さんの言葉が引っかかり、真美を呼ぶと、準備室を出て階段の下に移動し、話を始めた。

「真美には悪いけど、増田さんがもしも僕たちのためにデビューしたいって言うなら、僕はデモを作るだけで留まらせるよ。」

私の言葉に真美は困惑し、

「どういう意味?」

「増田さんが自らの気持ちでこのバンドで上に行きたいって気持ちが無いんだったら、僕はこのバンドでどこかと契約する事には同意しないって事。」

「何で?真美だって本気でバンドに打ち込んでるじゃん!だったら、」

真美が反論する気持ちも解らなくもない。

「バンドに打ち込むだけだったら趣味で出来る。真美は元からプロ志向だったし、僕もなれるならなりたい。でも増田さんは違うだろ?彼女は元々バンドをやるためにピアノをしている訳じゃない。もしかしたらピアニストになりたいのかも知れない。そんな夢を、僕たちのために潰すことだけは絶対に出来ない。」

「そうだね。でも、まっちゃんが本心で上に行きたいって言ったら?」

不安そうな顔で真美は私を見る。私は真美に笑顔を見せ、

「その時は皆で目指すだけだよ。」

そう言った。





 真美との話合いを終え、準備室に向うために、階段を昇ろうとした時、

「良くん、私がデビューしたく無いって思ってるの?」

階段の真ん中に増田さんが立っていた。

「私がピアノのコンクールで三位に入ったから?だからプロのピアニスト目指してるって思った?」

増田さんは吐き捨てるように言った。

「ふざけないで!私のことは私が決める!そんな勝手な事しないで!」

えらい見幕で私の前までくると、右手で私のほほを叩き、階段を駆け昇って行った。私はそれを見送る事しか出来なかった。またやってしまった。自分の意見だけで、相手を理解したつもりになって、

「ちょっと良、追いかけなくていいの?」

「・・・・・・」

言葉を返せないでいる私を見て、

「あ~~~もう、私行くからね。」

真美は駆け足で階段を登っていった。

 今の増田さんになんて声をかければいいのだろう?私が悪かった、増田さんの気持ちを考えないで、でも、増田さんはピアノが大好きなはずだ。コンクールの時もあんなに楽しそうに弾いていた。その気持ちは嘘じゃないはず。ならピアニストになりたいって考えがあっても・・・

「どうしたんだお前、こんな所で難しい顔して。」

顔を上げると佐藤が階段から降りてきた。

「いや、ちょっと・・・」

「どうした、ついにあの女どもにフラれたか?」

「そんな感じかな・・・・・・」

声に覇気が無いのが私にも解った。その様子を見て、佐藤は

「話なら聞くぜ、屋上にでも行くか?」

と声をかけてくれ、私と佐藤は屋上に向かった。


 屋上に出ると風が強く吹いていた。午前中は晴れていたのに、曇り空な所を見ると、まるで今の私の心模様を現しているようだった。

「それで、どうしたよ?」

「うん、増田さんを傷つけたみたいだ・・・」

私は佐藤に先程起きたことを話した。そして、私が思う、増田さんの気持ちを。

「なるほどな。つまりお前はあの子がコンクールで楽しそうにピアノを弾いてる所を見てそう思ったのか?まあ小さい頃からピアノを弾いててそれならそう思わなくもないわな。」

屋上のベンチに座り、空を見上げながら佐藤が言った。

「まあ俺には才能ある奴の事なんて解らないけど、ピアノ楽しそうに弾いてる奴は全員ピアニストになりたがるかね~?」

「でも増田さんは非凡なんだ。普通の人とは違う。そういう夢を持ってる可能性があるなら「お前さ」」

話の途中に佐藤が入ってきた事に驚き、私は佐藤の方を向いた。佐藤は仏頂面のまま、

「才能あるやつは普通のやつの考えを持ってないとでも思ってんのか?中にはただピアノ弾くだけで楽しいやつがいるかも知れないだろ?ピアニストにならなくてもピアノは弾けるんだからよ。ピアノが弾けて、一緒にいるだけで楽しい連中と音楽が出来て、自分たちの曲を聞いて貰える。あいつにとってピアニストになって、独りでピアノ弾くよりもこっちの方がやりたいんじゃねぇのか?」

そう言った。確かにそうかも知れない。増田さんはただピアノが弾くだけで楽しいのかも知れない、そして真美、僕と一緒に演奏が出来る事、もしかしたら端からピアニストなんて眼中になかったとしたら。その事に気づいたとき、私は居ても立ってもいられなくなった。

「佐藤、ありがとな。あの時と逆になったな。」

「これで借りは返したぜ。」

私は立ち上がり、

「亜里沙さんによろしくと伝えておいてくれ。」

「了解。」

佐藤に一声かけると屋上を出て、全速力で準備室に向かった。まだ残っていてくれ、頼む。



 準備室のドアを勢い良く開けると、中には真美と増田さんがいた。私の方を向いた増田さんの目には涙が流れていた。私は肩で息をし、ドアを閉めると中に入った。

「良!」

「ごめん、ちょっと遅れた。」

私は真美の避難の声を制し、増田さんに向かって

「バンド、続けないか?これからも、この先もずっと。」

肩を上下に大きく揺らし、口で呼吸し、私は増田さんに言った。増田さんは満面の笑みを私に向けて、

「当たり前です!」

と言い、私に抱きついた。



「良そんな事考えてたんだ?」

「真美には喋ったはずだけど?」

それから私たちは、師匠からMTRを借りるために師匠の家に向かった。

「良くんは考えすぎなんです。私はピアニストになる考えなんて微塵も無かったんですよ?大好きな音楽を大好きな人と一緒に出来るだけで幸せです。それでお金がもらえるなら、それだけをして行きたいですよ。」

「・・・なんか、そう直接言われると恥ずかしいよ・・・」

直接的な物言いに、少しだけ照れていると、私の顔を覗き込み、

「それくらいしないと良くんは気づきませんから。」

ほほ笑みながら増田さんは私に言った。その仕草に思わず胸が高鳴る。

「も~まっちゃんはそういう事するからずるいんだよ!良の顔、真っ赤だもん!」

真美に言われて顔が赤くなっているのが解った。増田さんのこういう仕草は正直に言ってきつい。

「大成功です!一歩リードですね!」

増田さんは私の腕を掴み、身を寄せた。増田さんの大きな胸が私の腕を挟む状況になり、

「ま、増田さん・・・胸が・・・」

「当ててるんですよ!」

ほんのりと薄く桜色した頬を私の肩に寄せて、小さく呟いた。それをみた真美が急いで増田さんを私から引き離し、

「このおっぱいお化け~~~~~!!!!もげろ!乳もげろ!!」

と、増田さんの胸を鷲掴みした。近くにいると色んな意味で体が持たないので、私は二人の前を歩いた。




「お、きたな真美ちゃん、増田ちゃん、その他一名。」

「お呼びで無いとでも?」

「お前古いの知ってるな~。」

師匠の家にお邪魔すると、最近は恒例のやり取りをして、私達は中に入った。師匠の家はそれなりの広さを持つ一軒家で、地下に自宅スタジオがある。たまに、師匠が仕事帰りじゃなく、家にいる時はここで個人レッスンを受けている。

「あら良くん、いらっしゃい。他の子は初めてね。」

「お邪魔してます。」

師匠の奥さんが奥の方から出てきた。その歳の割には若く、美人な人だが、奥さんとしても優秀らしく、師匠は尻に敷かれているらしい。

「いいえ、ゆっくりして行ってね。それにしても良くん、また一段と良い男になって。今度お姉さんと一緒に遊ばない?」

「お姉さんって歳かよ。」

そう言って笑う師匠に、奥さんは近くまで寄ると

「ゲフッ!」

「何か言ったかしら?」

腰の入った見事な突きを師匠のみぞおちに入れた。たまらず足がもつれ、床に膝がついた師匠は、

「何でも無いです・・・」

と言うのが精一杯だった。奥さんは空手三段らしく、若い頃は隠していたとか、何とか。






 地下のスタジオに行くと、既にMTRが箱に詰められている状態だった。わざわざ私達のために準備していてくれたようだ。師匠は何を思ったのか突然、

「良、ちょっと時間あるか?二時間位。」

と私に聞いてきた。

「二時間ですか、僕は大丈夫ですが、真美と増田さんは?」

師匠の問いを私は真美と増田さんにも聞いた。

「私は大丈夫です。」

「私も。」

二人共、時間に余裕があるみたいだ。

「じゃあ、一曲だけ一発録りしてみるか。デモだから良いだろ?」

「え、宜しいんですか?」

「調度、録ってたからな。それに嬢ちゃん達も楽器持ってるようだし。悪い真美ちゃん、ベーアン、アンペグしかないんだけどいいか?」

「全然オッケーです。むしろ良い位。」

「じゃあ録るか、特別にお前には俺のドラム叩かせてやる。」

師匠の持つドラムセットを叩かせて貰える事になり私は心が踊った。何回か聴かせてもらった事があるが、音が全然違う。プロが選ぶ、最高のドラムと師匠の持つ腕で、私には到底出すことの出来ない嗜好の音を聴かせてくれた。

 師匠は、箱に入っていないMTRにシールドをつなぎ、外されていたスタンドにマイクを付けて、シールドを接続し、ドラムの準備が出来た。

 私は、ドラムセットの方に移動すると、入念にストレッチを行い、スローンに座り軽く音を確認して、準備が整った。

「クリック音聴かなきゃ行けないからヘッドフォン付けておけ。」

言われるままに、私は側に置いてあったヘッドフォンを付け、メトロノームのBPMを設定した。

「いつでもオッケーです。」

「はいよ、んじゃ始めてくれ。」

メトロノームのテンポを聴きながら、私はドラムを叩き始めた。



 二時間後、全てのパートを一発録りし、師匠がパソコンで編集したのをスピーカーから流した。私達の演奏は思う以上にまともに聴こえ、少しばかり自信が付いた。

「ま~一発録りって事もあったが、デモとしては上等だろ。しかしこれが中学生の演奏か?若い奴らがスタジオで録ったみたいじゃねえか。」

忘れていたが、中学生の演奏として聴いたならば全然問題ないだろう。

「案外上手く行ったね。」

「そうですね。」

真美と増田さんも、出来が良いと感じたのか、顔が綻んでいた。師匠は曲を聴き終えると、真面目な顔で指で額を押さえ、しばらくして、

「嬢ちゃん達は先に帰ってくれ。ドラム録り全てするから時間かかる。上にいるカミさんに車で送らせるから気を付けて帰れ。」

と二人に言った。

「「は、はい・・・」」

二人は、チャランポランなエロ親父の印象しかない師匠の仕事モードを初めて見て、狐につままれたような顔をしていた。そして、私に軽く手をふった後、師匠に礼をして、この場を去った。

「良、ちょっと真面目に行くから覚悟しろよ。」

それから二時間、私は師匠に駄目出しを食らい続けながら二曲録音した。






「悪いな、遅くなっちまって。心配しなくても良の両親にはかみさんに連絡入れるように言っといた。」

「ありがとうございます。」

師匠の車に乗せてもらい、私は家へ向かった。ドラムの音源の入ったCDとMTR、58、コンデンサーマイク、ヴォーカル録音用のポップガード、キャノンケーブル、とほぼ一式を借りてしまった。

「お前、決意したな?」

「はい。行ける所まで行く覚悟を決めました。」

そうか、と言い、師匠はそのまま、車を運転し続けた。

「どうする?声かけとくか?」

「いえ、焦らず、自分たちの力で声かけてもらえるように頑張りますよ。師匠のためにもね。」

「馬鹿が、ガキが生いいやがって・・・・・・でも、悪くねぇな。」

車は私達家族が住んでいるマンションの前に着いた。道具を持ち、降りる際に

「いつか、フェスでも何でもいいけどお前らと俺が受け持つバンドが対バン出来たらいいな。」

師匠は笑いながら言った。私は右手の指を全て広げ、師匠の前に出し、

「五年以内、それまでに師匠と対バンしますよ。絶対に。」

「ハッ、そん時まで必死こいて練習しろ。情けね~演奏見せたら承知しねぇぞ?」

「師匠こそ、歳のせいにしないでくださいよ?」

私と師匠は互いに笑い、そしてその場を去った。








 翌日、部室を使い録音を行った。昔のMTRと違い、今のMTRはHDやらCDやらSDやらとカセットじゃない。しかも、MTRだけでCDが出来るのだから技術の進歩は凄いものだ。性能も素晴らしく、内蔵アンプシュミレーターもいい音を出してくれるので、アマチュアに重宝される理由が解る。しかし、準備室にある本物のアンペグのSVTを使った方がさすがに良いため、ベースはDIを通して録音した。そしてキーボード、ヴォーカル、コーラスを録音して、出来上がったマスターCDを皆で聴いてみた。

「なんか、感動モノだね。」

「本当です。これが私達の第一歩なんですね。」

「うん。これが僕たちの新しい第一歩だ。」

私たちは出来上がったCDを聴いて、これを様々な人に聞いてもらえると思うと胸がはずんだ。それから皆で記念の写真を撮り、その日は解散した。

 次の日、真美がジャケットのデザイン、歌詞カードをPCで創り上げて、CDに印刷を施し、記念すべき一枚が完成した。そして、マスターCDからダビング、ジャケット入れ、を施し、108枚のデモCDが完成した。100枚はライブの度に無料で配り、残りの8枚のデモCDは、

「あ、小倉。デモCD出来たからあげるよ。」

「マジで?やった~~!!」

一枚は小倉に、

「佐藤、デモCD出来たから亜里沙さんに渡しといて。」

「俺の分は?」

「しょうがないな。一枚一万円だ。」

とのやり取りをして、佐藤と亜里沙さんに一枚ずつ、

「師匠、出来ました!」

「何でジャケットに真美ちゃんと増田ちゃんいないの?」

師匠に一枚、そして、私達の分の三枚、残り一枚は準備室に置いておく事にした。これで後は文化祭に向けるだけだった。











 文化祭当日、今年の開催式のバンド出演は後輩のバンドを出す事に決まった。去年までは私達が先輩に依頼されて出ていたので、今回は私達の学年で出るバンドを決めた。出演するバンドは二年生のバンドで、一年生の頃から組んでいて、学内の全てのライブを見ていた。バンドとしての成長が著しかったので、今年は、このバンドを出すことに決定した。

「良さん。こんな広いホールでやるの初めてなんでめっちゃ緊張してるんですけど・・・」

「大丈夫だよ。楽しんで!楽しめたらそれでいいんだから。ミスしたらどうしようとか思わないで思いっきり演奏を楽しんで!」

後輩たちのバンドはとても楽しそうに行い、会場も多いに盛り上がった。こういう所が音楽の素晴らしい所だと私は思う。








 午後にライブがあるというのに、私は午前中からずっと露店の手伝いをしていた。露店の近くを亜里沙さんと一緒に歩いている佐藤を見て、

「佐藤・・・亜里沙さんと一緒にいたいのは解るけど、店の方も手伝ってよ。」

と言った。佐藤は嫌そうな顔をして、

「別にいいだろ。」

と言い放ち、その場を去っていった。こんな暑い中に火を使う身にもなって欲しいものだ。



 その後も、私は露店を手伝い続けた。露店の売れ行きが好調のため、忙しく、刻一刻と時間が過ぎていった。料理を作るのに夢中なあまり、私は時計を見るのをすっかり忘れてしまっていた。そのため、

「良!あんた何やってるの!十分後にライブだよ!」

「嘘!もうそんな時間?」

時計を見ると本当に出演時間まで後十分しか無かった。私は急いで料理を作るのを別の人と代わり、エプロンと三角筋を脱いで音楽室へ向かった。

「良くん、今から見に行くからね!」

「ありがとう!」

「今回もいいライブ見せてくれよ!」

「まかせとけ!」

音楽室へ向かう途中、すれ違う人達の声援を受けながら私は走った。無我夢中で走った。私にとってこのバンドでライブをする事は何よりも大切で、何よりも楽しい。

 準備室のドアを開け、私のスネアとペダル、スティックを三セット持ち、私は音楽室へ向かった。

「良くん、もう準備始まっちゃうよ!」

「いい気になって露店ばっかり手伝うからそうなるんだよ。」

二人が私が走ってくるのを見ると、それぞれが口々に言った。私が音楽室の前に着いたとき、調度前のバンドが終わり、彼らが出てきた。

「温めておいたぜ!」

小倉が汗だくになりながら私達へ言った。

「ありがとう。」

私は小倉に感謝の意を表すと、中に入っていった。音楽室の中は物凄い熱気で、入っただけで汗が流れた。ドラムの方へ向かい、スネアとペダルをセットし、予備のスティックをバスドラの上に置いて、セッティングを開始した。タムをワンタムにして、フロアタム、ライド、ハイハット、クラッシュ、スプラッシュ、チャイナ、それぞれを自分の叩きやすい位置にセットし、全ての音を確認してから、私は準備室へ向かった。











「お、やっと来た!」


「良くんはいっつも最後ですね!」


「ドラムだから仕方ないんだよ。」


「ハハハ、そういう事にしとく、まっちゃん?」


「駄目です、許しません!罰として、後夜祭は私と二人っきりで準備室に「まっちゃん!」嘘です!皆でですよね!」


「お、BGMが変わったよ。そろそろ行きます?」


「行きましょう!」


「中学生最後の文化祭ライブを楽しもうぜ!」


「「お~。」」


「おいおい、何かハリがないな。」


「良くんがいつもより気合が少ないからです!もっと気合入れてください!」


「まっちゃんが真面目なこと喋った!」


「いつも真面目です!」


「最近は発情期だったからな~このエロ!」


「ま、真美さんだって!」


「・・・そろそろいい?それじゃあ、皆、思いっきり楽しもうぜ!!!!」


「「おーーーーーーー!!!!!!!」」








 








 私達は準備室のドアを開け、大歓声に包まれながらそれぞれの楽器の元へ向かった。真美がベースを背負いEの音を出し、増田さんがキーボードでEのコードを鳴らし、私がカウントを行い、曲がスタートした。


















「え~次で最後の曲になります。でもその前に一つ告知を。私達、デモCDを作りました!わ~~~!ありがとうございます。それでですね、三曲入ってます!無料です!ライブ後に配布するんでちょっと待ってね。真美も私も着替えたいから・・・・・・凄い汗だくでちょっとね・・・・・・と、言う事で取り敢えず余るの覚悟して100枚も刷っちゃいました!全部良の自腹です!だから良いんです(笑)良はそれくらいしないと駄目です!あ、話長くなっちゃいましたね。それじゃあ、最後の曲です。皆で楽しんでいきましょー!聴いて楽しんじゃえ!バディ!!!!」






 読んで頂きありがとうございました!

 書いてて、めっちゃ最終回っぽくなりました。あ~終わっちゃうのかな~って。ところがどっこい!まだ続きます!まだ書いてない内容があります。そのためにもう少しだけお付き合いください。泣いて喜びます。

 この、良達のバンドって実は名前考えていないんですよ。だから名前が出てこない訳で・・・良達の曲を考えようとしても・・・私キーボード弾けないので再現できません・・・普通の3ピースで考えればよかったかな~

 ということで、今回も読んでいただき誠にありがとうございます!次も頑張って書き上げたいです!

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