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67話

 ブリルーノは、リストにある貴族家の訪問の続きを行うことにした。


 ウパルト子爵家では、ノブローナからの紹介とあってか、とても恐縮した様子で迎えを受けることになった。

 診察する相手である夫人も恐縮しきり。ブリルーノが診察した胎児の成長具合から出産は冬中になりそうだと伝えると、医者にもそう言われたのだと顔色を暗くした。

 診察結果を受けて、当主は悲壮な顔で、ノブローナに期待されているからには三ヶ月以内に出産させるなどという、戯言を口にしてきた。

 ブリルーノは当主を落ち着かせ、出産に関して質問や意見があれば知らせてこいと伝えてから、屋敷を後にした。


 ティモーゾ子爵家に到着し、その夫人と面会して診断すると、まさに今日明日中には出産が始まるという具合だった。

 それをブリルーノが伝えた瞬間、その情報が切っ掛けとなったかのように、夫人に破水が起こった。

 ブリルーノが魔法を使ったからだと当主が怒り出し、逆にブリルーノは出産が始まったのは自然なことで自分の所為じゃないと弁明した。

 その言い合いの結果、夫人の出産をブリルーノが手伝うことで決着が起こり、助産活動をすることに。

 ブリルーノと駆けつけた産婆の手腕によって半日かけて出産が終わり、無事に元気な女の子が産声を上げた。

 赤子が無事に産まれたことで当主はコロリと態度を変えて、ブリルーノとノブローナへの賛辞を並べてきた。

 ブリルーノは、その言葉を聞き流しつつ屋敷を辞し、予定外に時間がかかってしまったと、暗くなった空を眺めつつ帰宅した。


 日が開けて、残りの貴族家への訪問を再開。

 アンクレイデン男爵家は、子沢山貧乏な家で、すでに五人の子供が屋敷の中に住んでいた。

 夫人の腹の中には、六人目となる子もちゃんと存在した。

 それだけ出産を熟した夫婦だからか、感触で出産時期もわかっているようで、冬になる前には出産が始まると言い切ってきた。

 ブリルーノも、魔力視診断で同じ結果を導き出した。


 スヴェツシ男爵家に来たところ、ブリルーノはややこしい話に巻き込まれた。

 妊娠している人物は、男爵家当主の夫人ではなく、当主の愛人だった。

 当主は「王妃の子と同年代になれるのだから」と、愛人との子を認知することを決定事項のように口にした。

 夫人は「血統卑しい女が産んだ子を貴族として認めるなんて!」と、認知することを許さないと怒る。

 ブリルーノは、夫婦喧嘩を他所に、愛人の腹を魔力視で確認し、胎児がいることを確認した。

 ただ、その胎児の大きさは、三ヶ月以内に産まれるかは微妙な大きさだった。

 ブリルーノは、いつ生まれるかは曖昧にしつつ、夫婦の間で話が決着着いたら教えてくれと事付けて、屋敷から去ることにした。


 キオリト男爵家では、当主が喜色の笑みで、夫人が色味を失った顔色で出迎えてくれた。

 二人の顔色の対比の理由は、ブリルーノが魔力視診断をしたことで、判明した。

 夫人の腹は妊娠を知らせる膨らみがあるにもかかわらず、胎内には胎児の魔力は見て取れなかったのだ。

 ブリルーノは、二人の許可をとってから、夫人の腹に手を触れて診察した。

 軽く手を押し込むと、膨れた腹の中に、胎児がいることがわかる抵抗を感じ取った。

 胎児は存在するのに、魔力は見えない。

 この結果と、夫婦の表情の違いを踏まえ、ブリルーノはこう現状を推察した。

 キオリト男爵家当主は、夫人の妊娠を知ってはいるが、胎児が胎内で死んでしまっていることを知らない。

 逆に夫人は、胎児が死んでしまったことを、自身の体調変化などで理解していのだと。

 ブリルーノは、どうするべきかを考え、これも任務上の義務だと判断して、当主が信頼する医者を呼ぶように伝えた。

 ブリルーノの要請に、当主の顔色が青いものに変わった。そして当主が呼んだ医者の診断――胎児が正常に成長していないことを伝えられて、その顔色は蒼白となった。

 その当主を他所に、死んだ胎児が腹にいると体に害が出ると、緊急手術をする運びになった。

 ここでブリルーノは、腹を裂いて子を取り出す練習ができると判断し、医者を横に立ち会わせた状態での魔法行使を行うことにした。

 魔法で夫人の腹を切り裂き、子宮から体温はあっても鼓動のない小さな胎児を摘出し、へその緒と胎盤も剥離切除してから、回復魔法でその傷を全て治した。

 摘出した死した胎児は、医者の意見から、当主と夫人に確認させることになった。

 残念な結果ではあるが妊娠中で起こり得ることだと、医者は語った。、

 当主と夫人は、自分たちの子の死を急に知らせられてショックを受けたようすだったが、少し時間を置くと仕方がないことだと受け入れられるようになったようだ。

 ブリルーノは、二人に慰めの言葉をかけてから、次の診察へ向かうことにした。


 ヴィスロチ男爵家で、ブリルーノは面会したヴィスロチ男爵家当主から耳打ちを受けた。

 なんでも、妊娠したのは未婚の子女で、しかも種の提供主は彼女の婚約者ではないという。

 この隠された醜聞を、ノブローナがどう聞きつけたかのか。

 しかしヴィスロチ男爵は、王妃に知られているのならと、あらぬ方向に考えを飛躍させた。

 ノブローナから周囲に話が漏れる前に、子女の胎児を殺してなかったことにしようと。

 その胎児を殺す手伝いを、ブリルーノにやって欲しいとまでお願いしてきた。

 ブリルーノは、もちろん拒否した。

 ブリルーノが受けた任務は助産活動であって、胎児を殺す指示は受けていないからだ。

 しかし同時に、ブリルーノは件の子女と胎児を守ってやる気もない。

 貴族の子女が婚姻前に密通を犯すなど言語道断だ。

 その相手が婚約者なら弁明はできただろうが、それ以外の男と子をなしたとなれば殺されても文句が言えない蛮行でしかない。

 だからブリルーノは自分ができる最大の譲歩として、ブリルーノが去った後でなら、ヴィスロチ男爵家で何が起ころうと感知しないことにし、また後日に訪問して妊娠者が居るかいないかを確かめることにした。

 もっとも再び訪れることはないだろうと、半ば予想しながら。


 モルマッカ騎士爵家は、平民と大差ない門構えの家で暮らしていた。

 ブリルーノが用向きを教えると、王妃様の計らいとはと感動し、祖父や子供たちの家族一同での歓迎を受けた。

 家族という衆人環視の中で、ブリルーノは妊婦の腹を魔力視で診断した。

 問題なく胎児は育っていて、一ヶ月以内に産まれそうな感じだった。

 ブリルーノは予感としt、次の助産活動はこの家になりそうだなと感じた。

 家を去ってから、ブリルーノはリストにある最後の家に目を向ける。


「さて、最後はルーグネック辺境伯家か」


 辺境伯というだけあって、王都に屋敷は構えていても、そこに当主夫婦は存在しないことを、ブリルーノは知っていた。

 しかし確認のため、ルーグネック辺境伯家の王都屋敷に訪れて妊婦の有無を聞いてみた。

 応対してくれた家令によると、当主夫人は妊娠しているが国の端に位置する領地に住んでいるという。

 ノブローナは知っていてリストに名前を乗せているだろうから、ブリルーノはその領地まで向かわないといけないようだ。


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― 新着の感想 ―
情報量が……情報量が多い…… それぞれに膨らませると1エピソードできそうだからなぁ、ダイジェストもやむを得ずか。 ……うっかり書籍化したら、ここらへんを詳しく書き込むんじゃろか。
色々と回るとそれだけ色々な状況が待ってますねー そして次なる目的地は結構な距離の出張になりそうで 筆頭をそんなに遠くに行かせていいもんかねえ?
更新ありがとうございます。 主人公の、仕事そのものは不服だけどきっちり熟す真面目さが好きです。
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