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45話

 フラシオンが三つ子を孕んでいる。

 ブリルーノは、その事実を知ると、フラシオンと挨拶を交わした後は会話を早々に切り上げ、パザンプと二人きりの状態にしてもらった。


「プリパル伯爵。どういう積もりなのか、話を聞かせてもらおうか?」


 ブリルーノの明確でない疑問の言葉に対して、パザンプは分かっていると頷いて返した。


「双子ならまだしも、三つ子となると、母体への影響が怖いですからな」

「それもあるが、継承権の問題もある。双子でも、最初に出てきた子を継承権一位とするか、後に生まれた子に継承権一位を渡すかは、各貴族家で意見が分かれているところだ。三つ子を無事に生んだ後、継承権をどうつけるのかを考えてあるんだろうな?」


 ブリルーノは、この国における真実を語っている。

 時期を開けて生まれる兄弟姉妹の場合では、先に生まれた子に上位の継承権を渡すことが当たり前ではある。

 しかし一度の出産で二人以上の赤子を産んだ場合になると、色々と複雑なことになる。

 多くの貴族家では、通常の兄弟と同じように、先に生まれた子に上位の継承権を渡すことにしている。

 しかし貴族家の武ばった気風が強い家では、後に出てきた子に継承権の上位を与えることがある。先に出てきた子は他の子から腹の外に蹴り出された敗者である、という考えで。

 それ以外にも、見た目でより元気そうな方の子に上位の継承権を与えたり、髪の色の差で上位下位を決めたり、後の成長を見て継承権の順位付けをしたりと、様々なやり方をする家もある。

 そうした様々な方法があるため、ブリルーノはパザンプに対して、プリパル伯爵家ではどういう裁定を下すのかを問いかけたわけである。

 

「その点につきましては、問題ありません。なにせ我が家には、一人しか残らないことになっておりますので」


 不穏な言葉に、ブリルーノは眉を寄せる。


「一人だけ? もしや時代錯誤にも、他の二人の子は殺すとか言う気じゃないだろうな?」


 ブリルーノが軽く殺気を込めて質問すると、パザンプは慌てた様子で首を横に振ってみせてきた。


「いえいえ、そうではありません。養子として、引き取り先が決まっているのです」

「養子だと? 親戚に子が居ない貴族家でもあるのか?」


 貴族は家を残すことが、至上命題である。

 それゆえに、子供が生まれなかった貴族家では、親戚から余っている子供を貰い受けて、自分の家を継がせることはある事だ。

 そういうことかと問いかければ、パザンプは再び首を横に振ってきた。


「いいえ。親戚筋ではありますが、ちゃんと跡取りが居る家に引き取られる予定でいます」

「……跡取りが既にいるのなら、なんのために渡す? 意味がないだろ?」

「いえいえ、意味はありますとも。第一王妃様の子と学友になれる年代の子を得られるのですから」


 嫌なことを聞いたと、ブリルーノは顔を顰める。


「生まれた自分の子を売ることで、他家に貸しを作るつもりなわけか。いや、子を渡す代わりに、資金援助なり職業斡旋なりしてもらう気でいるとかか?」

「非難は受け付けませんよ。この一発逆転の手段を講じるために、家格が釣り合って居ない多産の血筋の女性を妻に貰い受けたのですから」


 計画的に三つ子を作ったと知って、ますますブリルーノの眉の間には皺が刻まれた。


「あの奥方に、その話を伝えてあるのか?」

「もちろんですとも。現状の我が家では、一度に三人もの子は養えないことは、フラシオンとて承知しておりますので」


 ブリルーノが現在まで関わった妊婦たちは、自分が産んだ子を愛しむ人物ばかりだった。

 だから、同じ母親でも自分の子を売り渡すことに同意した存在に対して、たとえどんな理由があったとしても、ブリルーノは親切にしてやる気が失せた。


「いっそのこと三人とも売り払ったらどうだ。その方が、貸しを作る相手が一つ増えるだろう」

「そのことは考えました。ですが、フラシオンが一人は手元に残したいと譲らなかったので。それに、貴殿の派遣で第一王妃様に知られていると分かったからには、無理に取り上げては不評を買うことになりかねませんので」

「そうか。せいぜい高く売れるよう皮算用でもしているといい。こちらは与えられた任務の通り、三つ子を出産させることだけに集中することにするからな」

「一人欠けることなく、出産を完遂してください。ああ、もし母か子かという場面となった場合は、子を残す方を選んでいただきたい」

「子を売り払って他家に恩を売りつつ、死んだ妻の代わりにもっと良い家格の女性を手に入れる気か?」

「離婚ではなく死別であれば、こちらの瑕疵にはなりませんので、次の結婚も早くできるというものですので」

「……悪いが、出産にかこつけて殺すような真似はしないからな」

「分かっておりますとも。もし万が一、そんな事態が起きたらの話として、記憶に残しておいてくれるだけで十分です」


 ブリルーノは、家を残すためとはいえ見下げ果てた手段しか取れない無能めと心の中で唾棄しながら、表面上だけは無表情で通し、パザンプとの面会を終えることにした。


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― 新着の感想 ―
后の手先に聞かせていい話じゃないよね。この話を聞いた后がどんな印象を受けるか予測できないんじゃあ落ちぶれますわ。
見事な貴族っぷりだが何故度貧乏なんだろ。
う〜わ!貴族〜ぅ!! 何割か愛情があるといいね〜…
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