表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/50

18話

 宮廷魔法師の待機任務を引き継いでからすぐに、ブリルーノは国王からの命令――実際はノブローナの要請だろう――で、とある貴族家に出向することとなった。

 ご丁寧なことに、その貴族家からの馬車が王城までやってきて、ブリルーノを送迎してくれる好待遇だ。

 馬車が向かう先は、アミーコジ公爵家の王都屋敷である。


(アミーコジ公爵家は、数代前に王子が婿入りして一代公爵家に昇爵し、その後に打ち立てた功績で永代公爵家になったのだったか)


 貴族家にとっては、王子の婿入りと永代公爵家認定は、これ以上ないサクセスストーリーだ。

 だからアミーコジ公爵家は、ブリルーノのような貴族としての意識が薄い人間でも話を耳にしているぐらいに、とても有名な貴族家だ。

 そして現代でも、その栄達の過去から親王家派という立ち位置であるため、王家にとってみれば親族の中でも親しい親戚という間柄といえた。


(要するに、俺様の助産師仕事に箔を付けるためにお願いだとノブローナ妃が言えば、すんなりと通りそうな間柄ってことだな)


 ブリルーノは溜息を吐き出しながら、思考を逆転させる。


(アミーコジ公爵家が俺の助産師仕事を嫌がってくれれば、後に続く貴族家は出て来なくなるに違いない)


 自分に否がない形で、相手側からの拒否をもぎ取る。

 ブリルーノがその方策に頭を使っていると、馬車が停止した。

 ブリルーノが思考の海から意識を引き上げて窓の外を見ると、大きな鉄柵に囲まれた屋敷が目に入った。

 どうやら、もうアミーコジ公爵家に着いていたらしい。

 馬車は、鉄柵の一部にある両開きの扉が開くのを待ってから、敷地内へと侵入していく。

 邸宅内も綺麗に整えられていて、門から屋敷の正面玄関へ続く道の左右には、季節の花が咲き乱れる庭園が広がっていた。

 流石は公爵家だなと感じ入っている間に、正面玄関前へ到着。すぐに馬車の扉が開かれた。

 ブリルーノが馬車のタラップを踏んで下りると、使用人たちが頭を下げた状態で出迎えてくれていた。

 その使用人たちの列の間を進む形で、ブリルーノは玄関前へと進んでいく。そしてブリルーノが玄関前に到着した直後に、すぐに扉が使用人の手によって開かれた。

 扉の先では、ブリルーノより歳が一回り上の男性と、ブリルーノと同年代に見える腹の部分が大きく膨れたドレス姿の女性が立って待っていた。

 男性の方は大柄で鍛えられた肉体を持っているが、顔立ちは決していいとは言えない巌のような無骨なもの。

 女性の方は、健康そうではあるものの痩身な見た目をしていて、顔立ちも十人が十人美女と認める綺麗なもの。

 互いに真反対な見た目だが、それがむしろしっくりくるような、不思議な見た目の夫婦だった。

 ブリルーノは招かれた側ではあるが、自身の出身家は公爵家よりも低位であることと、宮廷魔法師筆頭の身分でも公爵家より劣ることを考えて、自分の方から膝を曲げて挨拶することにした。


「国王の要請を受け、参上いたしました。宮廷魔法師筆頭、ブリルーノ・アファーブロです」

「貴殿が件の筆頭殿か。我が名は、アロガンタ・エタナ・アミーコジ。栄えある永代公爵位を敬称した者である。そして傍らにいるのが」

「フィエーリア・エタナ・アミーコジでございますわ。ノブローナ王妃様からのご紹介。大変に頼りに感じておりますのよ」


 アロガンタの声は緊張しているようなのに、フィエーリアの方は状況を受け入れて泰然とした感じの声だった。


(見た目とは裏腹に、アロガンタ公は小心で、フィエーリア様の方が肝が太いのかもしれんな)


 ブリルーノはそう判断を下すと、早速自身の仕事について切り出すことにした。


「どのような手順で助産活動をするのかについて、話し合いたいと思っているのだが。どこか、話すのに良い場所はないだろうか」


 宮廷魔法師筆頭としての普段の態度で告げると、アロガンタは慌てた様子で、フィエーリアは落ち着いた様子で言葉を返してきた。


「あっと、普段の面会は二階の執務室で行うのだが」

「わたくしも同席したいので、一回の談話室で良いのではありませんの?」

「そうだな。うん、そうしよう」


 フィエーリアの言い分が採用されると、先に使用人が動いて談話室を整えに向かった。

 使用人の仕事が終わる時間を稼ぐためか、アミーコジ公爵夫婦はゆっくりとした足取りで、ブリルーノと他愛ない会話をしながら移動していく。

 ブリルーノは会話を続けながら、アミーコジ公爵夫婦の様子を見る。

 アロガンタは自身の腕をフィエーリアに捕まらせつつ、ときおり心配そうな目をフィエーリアに向けて転ばないか注意しているようだった。

 一方でフィエーリアは、夫の気配りが分かっているのか、一切自分の歩行を心配していない様子でいる。


(夫婦仲は良さそうだな。そういえば、フィエーリア夫人は、何番目の妻なのだろうか?)


 アロガンタの年齢から考えると、フィエーリアの年齢より上の夫人が他に居ても変ではない。

 だが、アロガンタの女性慣れしていない姿と、二人の仲睦まじい姿を見ると、フィエーリアが唯一の妻である可能性もある。

 そこら辺も聞く必要があるなと思いながら、ブリルーノは談話室へと案内されるがまま入っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
洞察力も抜群にあるかあ マジでこの人なんでも出来そうだなあ
色々推察もできるし天職と見紛うぐらいほぼ完璧にこなせてしまうんだろうなあ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ