表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/48

17話

 国王の命令で、ブリルーノは魔法で貴族の婦人の出産を手助けすることになった。

 その最初の仕事を誰に行うかについては、会談の中で決まることはなかった。

 ブリルーノにしてみれば、最初からやる気がない案件だし、特に親しい貴族家もないので、自分で選ぶ意味がない。

 逆にノブローナ王妃やラゴレフケトラス国王側からすると、出産手伝いとはいえど貴族家に貸しを作れるチャンスだ。そしてノブローナの方が、婦人の妊娠状況に詳しい。

 以上のことから、基本的にノブローナがどの貴族家にブリルーノを派遣するか決めることで、とりあえずの方針は固まった。


「俺様が貴族家に出張するとするとだ」


 ブリルーノは、ノブローナとの会談場所から宮廷魔法師の詰め所に戻ると、軽く嘆息してからその中に入った。


「おかえりー」


 と気楽に声をかけてきたのは、同僚のケレーゴ。

 声をかけてはこないものの、視線を向けてはくる、他四人の宮廷魔法師たち。

 そんな彼ら彼女らが喜ぶであろう情報を伝えることに対して、ブリルーノ再び嘆息する。


「はぁ。俺様に出張命令が出ることが予定されている。つまり、王城での待機任務は、ここにいる俺様以外の誰かが担うことになる」


 ブリルーノの宣言に、ケレーゴを含めた五人の 宮廷魔法師たちが色めき立つ。

 それもそうだろう。

 今までブリルーノが宮廷魔法師筆頭としいて担っていた役目は、王城の詰め所で日がな一日待機しているという楽なもの。

 待機任務中は、王城の図書室にある本が読み放題だし、部屋の中で使える魔法だけに限られはするが魔法の練習はし放題。

 宮廷魔法師に下される他の任務は、盗賊や魔物や他国の侵略軍の相手ばかり。

 それを考えれば、王城での待機任務なんて、天国な職場に違いなかった。


(そんな職場を手放さないといけないなんてな……)


 ブリルーノにとって痛恨事ではあるが、王命が下ってしまったからには、引継ぎは行わなければならない。

 そんなブリルーノの苦悩を知ってか知らずか、ケレーゴが質問してきた。


「でもさ、王城で待機する仕事って、宮廷魔法師筆頭の役目だったよね。ブリルーノがダメになったのなら、次の実力者が担うべきなんじゃないの?」


 ケレーゴの言い分は道理を得ているものだった。

 この道理について、ブリルーノも把握している。


「俺様の次の実力者となると、他国との戦争に駆り出されているアイツだが、その戦争から引き戻せると思うか? 俺がその戦場にいくわけじゃないんだぞ? お前らの誰が、アイツの穴埋めができるのか?」

「あー、ということは、その戦争が終わるか休戦するまで、城の待機任務には就けないわけだ」

「他の長期出張の面々についても、同じことが言える。もっとも、その長期任務が終わったら、その終わった者が待機任務に入るだろうけどな」


 つまるところ、次に王城の待機任務に就く宮廷魔法師は、長期出張組が帰ってくるまでの繋ぎでしかない。

 無論、宮廷魔法師に選ばれるだけの実力者なので、短期出張組と括られている、この五人の宮廷魔法師もそれなりに強い魔法使いである。

 場繋ぎ程度の役目であれば、誰であっても熟すことは可能に違いない。


「誰に待機任務が言い渡されるかは、国王の仕事だからな。お前らは期待して待っているといい」


 喜びを見せる面々とは逆に、ブリルーノは気落ちした様子で借りていた本をまとめ始める。城での待機任務が終わるからには、借りていた本を図書室に返す必要があるからだ。

 一抱えほどの木箱の中に、本を傷つけないよう気を付けて収納していく。

 やがて、木箱の中からはみ出て山となった本を前に、ブリルーノは指を一振りさせた。

 

「浮遊しろ」


 魔法が行使され、本が山積みになった木箱が、ふわりとブリルーノの腰元まで浮かび上がった。


「それでは片付けに行く。誰か俺様に会いに来たら、基本的には追い返せ。追い返せない相手なら、図書室へ誘導しろ」


 ブリルーノは事付けを残すと、浮遊させた木箱を軽く押して廊下を進んで図書室へ。

 図書室に到着すると、年配の司書に借りていた本を返却した。


「借りた本は、速やかに返却してくれないと困りますよ」

「魔法の研究に必要だったんだ。それにまだ使い終わってはいないから、返却する気はなかったんだ」

「お役目を言い渡されて、本が読めなくなったとか?」

「俺様に関する噂を耳にしているのか?」

「いいえ。歴代の宮廷魔法師筆頭様たちも、以前に同じ理由で本を返却なさいましたので。もちろん、どんな任務を言い渡されたのかは知りません」


 事情を把握していなくても、過去の出来事から類推することは可能だろうと、ブリルーノは納得した。


「これで本は全て返却したな? 俺様が返し忘れている本はないな?」

「少々お待ちを。はい、確認しました。これらの本で、全て返却されました」


 帳面から確認してくれて、ブリルーノは安心した。

 これで用事は終わったので図書室から出ようとして、その足を止めて司書に向き直った。


「済まない、新たに本を探したい。立ち読みするので、貸出作業は必要ない」

「どんな本を探すのですか?」

「そうだな。内臓の一部に強化魔法をかける研究の資料。家畜を育てるのに役立つ魔法書。医療用の魔法による事故例の記載がある本だ」

「相変わらず、幅広い分野に興味をお持ちですね。目的に沿った本がある場所とその題名を、メモに書いて渡しますね」


 司書は、図書室の開架資料も見ずに、破ったメモ調の紙にさらさらと文字を書き、それを手渡してきた。

 ブリルーノが求めたのは三種類の本だったが、メモ帳に書かれた本の題名は七冊もあった。


「いささか本が多いようだが?」

「お求めになられた内容そのままの本はなかったので、似たような記述があるものを選びました。本の内容を流し読みで確認して、求めていたものでなかったのなら、お知らせください。また別の本をお伝えいたしますから」

「そうか。だが助かった」


 ブリルーノは礼を言うと、まずはお勧めされた七つの本に目を通してみることにした。

 するとブリルーノが期待していた以上の記述ばかりだったので、司書に礼を言いに行ってから、時間が許す限り本の内容に目を通すことにしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
最低限痛覚を誤魔化す魔法の使用で出産時の妊婦さんの体力回復出来ることとかをレポートにまとめておくべきなんじゃ
今ごろ、5人はジャンケンしてるな〜W
代わりが出来る魔術師の育成をした方がいい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ