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インタープリターはネゴシエーター  作者: 双鶴


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12/12

エピローグ

会場が静まり返ったあと、ひかりはひとり控室に戻った。

マイクを外し、スーツの襟を整える。

窓の外には、夕暮れの光が差し込んでいた。


彼女は、通訳者として最後の現場を終えた。

けれど、訳すべき言葉はまだ、胸の奥に残っていた。


(私は、何度も訳してきた。

何度も訳さなかった。

何度も、訳せなかった。

でも、今日だけは——自分の言葉を訳した)


机の上には、古いメモ帳が置かれていた。

そこには、かつて先輩に言われた言葉が書かれていた。


「通訳は、小宰相であれ。

言葉を整え、場を守り、誰かの心を壊さない者であれ」


ひかりは、その言葉を指でなぞりながら、静かに目を閉じた。


(私は、通訳者だった。

言葉の橋を架ける者ではなく、

空気の谷を埋める者だった)


そして、彼女は立ち上がった。

誰にも見送られず、誰にも告げず。

ただ、静かに部屋を出ていった。


その背中には、訳された言葉も、訳されなかった沈黙も、すべてが宿っていた。


そして、誰もが知らないうちに、

彼女の訳は、世界のどこかで誰かを守っていた。


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