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神の座をかけたバトルロワイヤル ~俺が世界を救う英雄になるまで~  作者: さつき


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第32話 絶望

 次の日も、雨が降っていた。雨音は、ヨルド達がいる収容所に響き渡り、まるで空が泣いているようだった。

 激しい雨音で起きたヨルドは、窓の外から、ぼんやりと外を見ていた。

雨は、嫌いだった。父親が死んだ日を思い出すからだ。あの日、王都全体に響き渡った落雷と激しい雨音を昨日のことのように覚えている。嫌なことを思い出したヨルドは、右手が少し震えた。その震えを落ち着かせるように、ギュッと手を強く握りしめた。

 今日は、エリュジオンと会う予定の日だ。だけど、リオンはまだ決行しないみたいだし、俺は約束の時間に間に合わないだろう。


(エリュジオンは、俺を見捨てるか、ここに真鏡を奪いに来るか……。彼は、今頃、どうしているだろうか。真鏡を手に入れているといいけれど、危険な目にあっていないだろうか……)


 そんなことを考えていると、朝の鐘が鳴り響き、仕事の時間が始まった。今日も、また長い一日が始まる。朝から晩まで馬車馬のように働かせられるだろう。



 ヨルド達が整列していると、ロドリゲスが大勢の衛兵を引き連れてやってきた。しかし、その光景がいつもと少し違うことに気がついた。

 あれ?いつもよりも衛兵の数が多くないか。なぜかロドリゲスの隣に彼の腹心であるタンタもいない。ロドリゲスの雰囲気もいつもと違う。いつもは、バカにするような笑顔を浮かべていたが、まるで葬式に参加する参列者のように死んだような顔をしていた。彼がどうしてそんな顔をしているかわからなかったが、ヨルドの胸が妙にざわざわとした。


 皆の前に立ったロドリゲスは、1人1人の顔をじっくりと見つめた後に、ゆっくりと口を開いた。


「この中に裏切者がいることが発覚した」


 その言葉に、心臓をナイフで刺されたような気分になった。


(ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい。この状況は、ヤバい。俺たちは、ろくに武器も持っていないのに、敵から囲まれている)


 ちらりとリオンを見ると、彼は、今にも倒れそうなくらい青ざめている。このことは、リオンにも想定外だったのだろう。


(どうしてばれてしまったのか?どこまでばれている?)


「裏切者を処分したいが、誰が主犯か、どれほど仲間がいるかわからない」


 ロドリゲスの声が、辺りに響き渡るたび、心臓を握りつぶされるような恐怖を感じる。

 よかった。リオンのことは、ばれていないようだ。


(いったいどこまで、処分をくだすつもりだ?)


 ロドリゲスは、奴隷たちをもうすぐ処分される家畜を見るような目で見ている。


「そこで、この場にいる全員を処分することにした」


 え?

 今なんて言った?

 全員処分だなんて、そんなバカなことあるわけないよな?

 その言葉にロドリゲスの近くにいた茶髪の男が、前に出て反論しだした。


「ちょっと待ってください。俺は、裏切っていません。脱走しようとなんてしていません。俺は、死ぬまであなたに忠実です」


 男は、自分の胸に手を当て滝のような汗を流しながら、必死にそう告げる。


「しかし、それを証明する方法がない」


 ロドリゲスが右手をあげた。その途端、地面から土の手が伸びてきて彼を地中へと飲み込んでいった。


「うわあああああああああああああああああああああああああああああ‼誰か助けてくれえええええええ!!」


 そう叫ぶが、周囲のものは、恐怖で凍り付いたように動かない。

 どうする?ロドリゲスは、土の魔術が使える。剣もないと近づくことすらできない。ヨルドの隣にいるマシューもカタカタと震えていた。


「1匹残らず殺せ!」


 ロドリゲスがそう言った途端、衛兵が奴隷に襲い掛かってきた。


「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「嫌だ‼殺さないでくれ!」

「助けてくれ」


 衛兵は、ためらいもせず奴隷たちを次々と虫を殺すようにあっさりと殺していく。辺りは、パニック状態だ。みんなどこかへ逃げようとするが、逃げ場なんてどこにもない。


「うわあああああああああ‼助けてください、神様!俺が何をしたっていうんだ?」

「どうして?俺たちは、道具だろう。まだ働ける。使い道はあるだろう。なのに、どうしてこんな風に殺されないといけないんだ?」

「おい。入口ががら空きだぞ。早く逃げ……」


 そう言いかけた男が、ドアの間から見えた剣に刺されて、その場に崩れ落ちた。


「はい、残念~♪」


 入口から現れたのは、ニタニタとした下品な笑みを浮かべるタンタだった。


「あなた達は、全員死ぬ運命です。ひゃっはああああああああああー!!!」


 彼は、三日月のように目を細めながら、楽しそうに奴隷たちを殺していく。

 恐ろしい悪夢のような光景が広がっていた。

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