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神の座をかけたバトルロワイヤル ~俺が世界を救う英雄になるまで~  作者: さつき


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第31話 謝罪

 ヨルドがリオンと話してから、4日ほど過ぎた。相変わらず仕事はきついが、リオンの計画は順調そうで、もうすぐ衛兵を通じて外部から武器も届くらしい。

 激しい雨音がして夜中に目を覚ますと、スヴェンが起きて座りながら壁にもたれかかっている様子が見えた。彼は、眠ることを諦めた様子で格子の向こうの星をぼんやりと見ていた。


「眠れないのか?」

「……どうやらそうみたいだ」

「どうして?」

「悲しい出来事があったんだ。それで……嫌なことを思い出した」

「何があったんだ?」

「……上手く言えない」


 スヴェンは、夜に溺れているように暗く沈んだ声でそう返した。

 彼をよく観察していると、彼の左手首に刃物で切られたような跡があることに気がついた。

 これは……リストカットの跡だろうか。スヴェンは、死のうとしていたのだろうか。そう考えると、背筋がゾッとした。何て話しかけようか悩んでいると、またスヴェンから話しかけてきた。


「ねぇ、あんたは夢とかあるの?」

「小さい頃から、シルヴェストみたいな英雄になることが夢だった。それで、大勢の人を救いたかった。でも、今は……妹を助けたい。それが一番強い思いだ。スヴェンは、ここを出たら何がしたい?」


 彼に激しい欲や夢があればいい。そうすれば、今の彼は死のうなんて考えないだろう。


「……俺は、旅に出たい」

「旅?」


 スヴェンは、飢えたような青い瞳で窓の外を見ていた。


「いろんなところに旅に行くのが好きだったんだ。知らない場所のご飯を食べたり、文化や歴史に触れたりすることが好きなんだ。美しい景色を見るとワクワクした。自然の中を一人きりで歩くことも好きだった。小さい子から憧れていた光景が目の前に広がった時、感動のあまり、全身に鳥肌が立った。世界中を回って、ありとあらゆるものを見てみたいんだ」


 どうしてだろう。彼は、夢について語っているのに、その声色は暗かった。もう彼は、今言ったことが叶わないと諦めているのだろうか……。


「ルートピアは、行ったことはある?」


 故郷を思い出したヨルドは、そう尋ねた。


「まだないよ」

「いつか行ってみて欲しい。緑が豊かな美しい国だ。小麦の産地で、ピザやパンが美味しい。

バラルド地方は、小麦だけじゃなくて、牛や豚も多いし、ワインの産地でもある。リディアの丘から見える光景は、すごく綺麗なんだ。特に夕日の時間は、鳥肌が立つほど絶景だ」


 故郷の話をしていたら、帰りたくなってきた。帰っても……居場所もないし、おかえりと言ってくれる家族もいないのに……。

 でも、いつか帰りたい。今は、真鏡を手にしてモニカを蘇らせたいけれど、あの場所へ堂々と帰りたい。今まで、王になりたいと望んだことはなかったけれども、もしも、ルートピアの国民が虐げられていたら、命を懸けて国を守りたい。

 ヨルドの話を聞いたスヴェンは、悲しそうな顔をしながら、小さく首を振った。


「どうせ出られないよ。俺は、死ぬまでここで過ごすんだ」


 スヴェンの声は、夜みたいだ。暗く冷たく、温かさがない。彼は、もう何年も長い夜のような牢獄と絶望に閉じ込められていたのかもしれない。


「人生、何が起きるかわからないよ」


 もうすぐリオンが革命を起こす。そうしたら、全てが変わるだろう。スヴェンにも、その話をしてあげたいが、ヨルドが勝手にバラすことは、気が引ける。


「……俺は、ここで死ぬと思う。もう夢は、とっくの昔に諦めたんだ」


 スヴェンは、誰かのことを思い出すように、ゆっくりと目を閉じた。そして、長い溜息をつきながら、再び目を開いた。


「スヴェン……」

「ごめん……。ごめんな、ヨルド」


 なぜかスヴェンは、ヨルドに謝ってきた。どうして彼が、ヨルドに謝るのかわからなかった。自分が諦めていることに対して謝っているのだろうか。これ以上、この話をしたくないということだろうか……。


 ヨルドは、何をしゃべったらいいかわからなくなり、ぼんやりと窓の外を眺めた。鉄格子の窓からは、巨大な壁が見えた。その壁に、今にも押しつぶされそうな気分になった。


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