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神の座をかけたバトルロワイヤル ~俺が世界を救う英雄になるまで~  作者: さつき


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第3話 謎の美少年

「死ねええええええええええええええええええええええ!!!」


 大きな鎌を持ってきた男が、ヨルドに真っ先に近づいてきた。

 ヨルドが、その鎌を剣で受け止めると、背後から別の男がヨルドを殺そうと狙ってくる。


(くそっ。戦いにくい。これなら逃げ出した方がいいか)


 人が少ない方に走り必死で攻撃を躱していると、近くにいた男が「ぐはああ」と叫びながら崩れ落ちた。


「え?」


(いったい何が起きたんだ?)


 目を凝らしていると、次から次へと男たちが倒されていく。


(誰かが俺の加勢をしているのか?何のために?)


 訳がわからないが、この機会にヨルドも目の前のナイフで襲ってきた男を切り捨てた。

 そして、あっという間に全ての盗賊が倒れると、1人の少年が近づいてきた。彼は、先ほどヨルドを助けてくれた男である。


 まるで死後の楽園のように美しい男だ。少し癖のある金髪が彼の頭から肩にかけて流れ落ちている。髪の色は透き通るようなプラチナブランドであるが、毛先だけは徐々に鮮やかな紫色にグラデーションされている。広くて形のいいオデコ、すっとしたくっきりとした鼻筋、目を開けたらぱさぱさとした音が鳴りそうなくらい長いまつ毛……。夜明け前の空を閉じ込められたようなアメジストの瞳が輝いている。目は、少し吊り上がり気味で冷たそうな印象である。黒いシャツに黒いズボンというシンプルな恰好が、彼のカッコよさを更に引き出している。彼は、右手に白銀色に光る剣を持っていた。

 剣の柄には、アメジストの宝石が埋め込まれている。


 ヨルドは、男にジロジロと値踏みされるようにジッと観察された。そして、彼は、獲物を見つけた悪魔のようにゾクリとする笑みを浮かべた。


「お前は誰だ?どうして俺を助けた?」

「俺の名前は、エリュジオン。たまたま盗賊を見つけてお前を助けただけだ」


 上質なシルクを思わせるように滑らかで、少し冷たい感じがする温度感のない声だ。


(うさんくさい男だ。こんな時間に1人で出歩くなんておかしい。そして、盗賊を倒す理由もわからない。こいつも真鏡を持っていて俺から奪うつもりなんじゃないか)


「どうしてこんな夜中に1人で出歩いている?」

「ただの散歩だ」


 エリュジオンは、ひょうひょうとそう答えたが、そんなこと信じられなかった。


「嘘だ!」

「お前だって1人でいるだろう」

「何が目的だ?」


 すると至近距離に来て「ヨルドは、俺の目的が真鏡だと聞けば安心するのか」と試すように聞かれた。


「っ……」


(やはりこいつは、真鏡を持っている。そして、俺から奪うために近づいたに違いない)


 ヨルドは、慌ててエリュジオンから遠ざかった。その様子を彼は、不気味な笑みを浮かべながら眺めていた。


 エリュジオンは、人差し指をクルクルと回しながら「こういうのはどうだろうか」と提案してきた。


「俺とヨルドは、全ての真鏡を集めるまで協力し合おう。そして、全ての真鏡を集め終わったら、俺達で奪い合おう。そういう話なら、信頼できるだろう」

「……」


 先ほどの盗賊相手に戦う姿を見る限り、自分とエリュジオンでは、明らかに彼の方が、実力が上だ。今、エリュジオンと戦えば、殺されるだろう。

 しかし、エリュジオンの提案を飲めば、二人で協力して真鏡を集めることができる。そして、その時までに強くなっていれば、最後に真鏡を手にするチャンスを得られる。

 ヨルドにとっては、メリットしかない提案だ。しかし、なぜエリュジオンがすぐに自分を殺して真鏡を奪わないのかわからなかった。


「何で俺に協力する?」

「真鏡は、戦争の火種にすらなる。協力者は必要だ」

「いいだろう。全ての真鏡を集めるまで協力し合おう」

「よろしく、ヨルド」


 エリュジオンが伸ばした手のひらを握りしめた。


 エリュジオンも白い馬に乗ってここに来たらしい。ヨルドも馬に怪我がないか確認し終えると、二人で西側へと馬を走らせた。


(こいつはどこから来たのだろう。何が目的だ?)


 すぐ前を走る少年に対する疑問が沸々と沸き上がる。


(そういえば、俺は自分の名前を名乗っただろうか)


 ヨルドはそのことが不可解であったが、馬を走らせている時にしゃべるのは危険であるためエリュジオンに聞くことはなかった。




 ヨルドは、エリュジオンと共に真鏡が反応している西へと向かった。真鏡は、古代から栄えている都市であるロナンを示していた。

 二人は、昼頃ロナンにたどり着き、宿で休憩をした後、夜ご飯を食べることにした。店は混んでいて知らない人間と相席になった。

 じゃがいもと鶏肉の料理を食べていると、宿から近くの店で食事をしていると、妙な噂が聞こえてきた。


「なあ、真鏡があるらしいぞ」


 思わずドキリとして、胸下の真鏡を服の上から触る。


(俺が真鏡を持っていることがどうしてわかったんだ?いや、別の真鏡か)


 さり気なく、声の聞こえてきた方を見ると、剥げたおじさんとひょろひょろの男が見えた。

 ひょろひょろの男が「どこにあるんだ?」と問いかけると、剝げたおじさんの方が「それがフォローノだって」と教えた。


「フォローノ?それじゃあ、いけねぇな」


 ひょろひょろの男は、ため息をついたあと、ビールをごくごくと飲んだ。


「行けないわけじゃないだろう。亡霊の噂なんて、真鏡を守る嘘かもしれねーぞ。俺たち二人で行ってみないか」

「やめとけ。俺の友人の知り合いも、10年前にフォローノに行ったっきりで、帰ってこなかったんだ。きっと今頃、骸骨になっているに違いない」

「でも、真鏡を国王に持っていけば1億ラリア手に入るらしいぜ。完成させなくてもいい。欠片を持っていくだけで1億ラリアだ!!こんなうまい話は、他にない」

「騎士団の奴らだって行っているだろう。そんな奴ら相手じゃ、俺たちみたいなのが勝てるわけない」

「……そうだな。やっぱり、俺たちは辞めておいた方がいいよな。どうせ無理だよな……。ああ。一億ラリア……」


 二人は、そうため息をついて無言でご飯を食べだした。


(フォローノに真鏡があるのか!でも、あの二人の様子から考えると、そうとう大変な場所なのか……。 そして、ロナンの国王もゲームが始まっていることに気がついているらしい。もう国王は、他の真鏡も手に入れているのか?ああ、くそ。国を相手にするとなると、相当やっかいだぞ……)


 考えだして手が止まる。すると、相席をしていた前の座席の茶髪の男性が「真鏡のことを考えているの?」と話しかけてきた。どうやら、男もさっきの会話が聞こえていたらしい。


「そうなんです。フォローノってどんな場所ですか」

「あそこは、昔の王族の墓さ。ノマリア帝国時代のものかな……。でも、辞めておいた方がいい。亡霊が出るって噂だ。フォローノには、近づくな。そういう言い伝えが昔からあるし、実際、フォローノから帰ってこられた人間は、ここ100年近くいないらしい」


 亡霊が出るか……。本当だろうか。それとも、魔獣とかが住み着いているのだろうか。


「じゃあ、真鏡がそこにあるっていう噂はどこから流れたんですか」

「ああ。それは、王様だよ。リアム王が、フォローノにある真鏡を持ってきたら、1億ラリア支払うとお触れを出したんだ」


(一億ラリアだと!?そんな金あったら、余裕で一生遊んで暮らせるどころか、城が買えるレベルだぞ。ロナンの王様は、本気で真鏡を狙っているのか)


 しかし、真鏡を全て集めれば神になれる。欠片を手にしたところでもって帰る保証はない。


「……大金だな」


 どうやって国王は、真鏡がフォローノにあることを知ったんだ?誰か真鏡を持っている人間が王様に告げた?その人間は、フォローノに行ったのだろうか……。


「そりゃあ、神になれる欠片だもんな。俺だって、喉から手が出るほど欲しいよ。でも、悪いことは言わない。フォローノは、行かない方がいい」


 男は、心配そうにヨルドを見つめた。


「ああ。フォローノなんて絶対に行かないよ」


 ヨルドは、そう自信満々に答えた。



 その日の夜は、曇り空であったため、真鏡の反応を確かめることはできなかった。

 翌日、ヨルドは、エリュジオンと共にフォローノに向かった。当然、昨日の男と交わした言葉は、守る気は全くなかった。

 フォローノに近づいて行くと、徐々に全容が見えてきた。巨大なピラミッドに正方形の建物がくっついたような形をしている。建物の壁は、石でできていて、ノマリア帝国の奴隷たちにより作られたものらしい。何ていう迫力だろうか。これほど大きくて迫力のある建物は初めて見た。


「本当にあんなところに真鏡なんてあるのかよ」


 エリュジオンは、疑っている気持ちの方が強いみたいだ


「わからない。どっちみちロナンは、広すぎる。手がかりが少しでもあるところに行った方がいい」

「でも、亡霊が出るらしい。そんなのが出たら、どうやって勝つつもりだ?」


 エリュジオンの亡霊という言葉に、ヨルドの心臓の鼓動が大きく跳ねた。実は、お化けとかは少し苦手であった。


「ぼ、亡霊なんて出るわけない」

「怖いのか?」


 エリュジオンは、怖がるヨルドを面白そうに見てくる。


「そ、そ、そんなわけないだろう」

「どうする?ここで引き返す?」


 エリュジオンは、引き返す気なんてなさそうなのに、腕組みをしながら、ニタニタ笑いながら、試すようにヨルドを見ていた。


「行くに決まっているだろう」

「さすがヨルドだ。早く行こう」


 そう言うと、馴れ馴れしく肩を組みながら歩き出した。


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