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第28話 賞賛

 フルレティが去ってからも、彼女を賞賛する声は鳴りやまなかった。


「天使過ぎる」

「ロドリゲスの娘とは、思えない」

「嫁にしたい」

「あんないい子は、他にいない。俺は、ここでの生活でフルレティに会うことだけが、唯一の楽しみだ」

「俺も」

「リヒャルトは、絶対にフルレティのこと好きだよな。いつも、俺たちがフルレティとしゃべっていると不機嫌そうだし」


 リヒャルトって、さっきフルレティの背後にいた護衛のような男なのだろうか。まあ、あんなかわいくて、性格がいい子とずっと一緒にいたら、好きになって当然だろうな。


「わかりやすいよな。嫉妬心むき出しで」

「仕方ないだろう。フルレティを好きになって当然だって。自分のドレスや、宝石を打って、みんなの食料や、薬を買ってきているらしいぞ。本当に天使だよな」

「くそっ。フルレティといつも一緒にいるリヒャルトが羨ましい。俺もフルレティと、もっと一緒に過ごしたい。ここにいると、彼女と会うことしか楽しみがないし」


 彼女は、まるで月みたいだ。真っ暗い牢獄を明るく照らしてくれる。どれほど多くの人間が、彼女に救われてきたのだろうか。


「彼女はどうしてこんなところにくるんだ?」


 ヨルドは、近くにいたスヴェンに聞いてみた。


「……ロドリゲスによって、傷つけられた人間を救いたくて来るらしい」


 スヴェンは、ぼんやりと遠くの月を見ながら淡々とそう答えた。彼は、他の人達と違ってフルレティには大して興味がないのかもしれない。

 それにしても、フルレティは、なんていい子だろうか。世の中に、そんなに性格がいい人間が存在していたなんて!!


「でも、ロドリゲスがそんなことを知ったらどう思う?彼女は、大丈夫なのか?」

「……バレないようにこっそりと来ているらしい」

 

 それを聞いたヨルドは、フルレティのことが心配でたまらなくなった。


(バレたら、めちゃくちゃ怒られそうだな……。俺たちのために、危険を冒してくれているのか。いい子だけど、ロドリゲスにひどい目に合わされないか心配だ)


「でも、ロドリゲスの娘を人質にしてここから逃げようとする人はいないのか」

「前にいた。リヒャルトにすぐ殺されたけど」

「リヒャルトって、フルレティの背後にいた護衛のような男のこと?」


 そう聞くと、スヴェンは小さくうなずいだ。


「ああ。あいつは、フルレティの専属護衛で、フルレティが来るときはいるも一緒にいる」

「護衛は、1人で大丈夫か?」

「あいつは、強いから、大丈夫だ」


 だけど、リヒャルトの格好は軽装で護衛らしくなかった。


「でも、護衛だけど、武器を持っているように見えなかったけれど」

「リヒャルトの強さが気になるなら、試しに襲い掛かってみたらいい。次の瞬間、あんたは、死んでいるはずだ」


 そ、そんなに強いのか。

 ヨルドの背中に、冷たい汗が流れ落ちた。



   *                 *


 今夜こそは、他の真鏡の位置を確認したい。確認するのは、トイレの個室などがいいだろう。そう思ったヨルドは、夜、寝る前にトイレの個室に行った。

 ズボンを降ろして、座り込んだ途端、ヨルドが入ったトイレの個室の入口から、バアアアンと何かが破壊されるような大きな音がした。


 次の瞬間、ヨルドの入っていたトイレのドアがバーンと開いて、金茶の髪の男が現れた。

男は、ヨルドの心臓に弓矢を向けている。彼が弓矢から指を離せば、自分は死ぬだろう。


(え?これは、予想外だ。トレイの鍵が壊され、侵入されるとかありなの?これで死んじゃうの?えええええええええええええええええええ⁉そんなことってあるううううううう⁉)


 パニック状態になりそうになりながら、自分がどうするべきか必死で考える。


「動くな。動いたら、殺す。お前、真鏡を持っているだろう」


 やっぱり真鏡目当てか。真鏡を奪われたら、口封じに殺されるかもしれない。

 ヨルドは、ズボンを履いておらず、武器は一つもない。それに対して、目の前の男は、弓矢で確実にヨルドの心臓を狙っている。この距離なら外さないだろう。



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