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神の座をかけたバトルロワイヤル ~俺が世界を救う英雄になるまで~  作者: さつき


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第27話 フルレティ

 夜11時になると、ロドリゲスとタンタが衛兵を引き連れて、やってきた。ヨルドを含めて、ノルマを達成できなかったものだけその場に集められて、鞭打ちが始まった。

 ヨルドは、今まで一度も鞭打ちを経験したことがなかった。

 剥き出しになった背中に、容赦のない激しい鞭が打たれていく。


「っ……。うぐっ……」


 歯を食いしばりながら、痛みに耐える。一回鞭を打たれるたびに、まるで焼きごてを押し当てられるように激しい痛みが全身を駆け抜けた。気を緩めると、涙が流れそうだ。

 周囲からも、泣き声や悲鳴が次々に聞こえてくる。

(大丈夫。こんな痛み、耐えられる。妹を失った痛みに比べたら、大したことない。また、目の前で誰も守れず死ぬのを見るよりも、ずっといい)

 そう言い聞かせながら、必死でこらえ続けた。



 100回の鞭打ちが終わったヨルド達は、ゴミのようにその場に置いて行かれた。辺りは、力尽きて倒れるものばかりだった。

(うっ。背中がヒリヒリする。ちょっと動いただけでも、激痛が走る。こりゃあ、起き上がるのもしんどいな。早く帰って休まないと明日がしんどいのに……)

 何とか立ち上がろうとした時、「……大丈夫ですか」と上からツンとした声が降ってきた。

 顔をあげると、何とザドキエルがいた。驚いたことに、彼はヨルドをバカにするような笑みを張り付けていなかった。

「お前、何しに来たんだよ」

「見てわからないんですか。バカですね。あなたが部屋まで帰るのを手伝いにきたに決まっているじゃないですか」

「はああああああ!?」

 ヨルドは、思わず大声をあげてしまった。

(ザドキエルが、俺を助けるなんて気持ち悪いな。嫁を虐めることを唯一の生きがいとする意地悪な姑みたいな奴だったのに……)

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

(彼は、何か変なものでも食べたのだろうか。ああ、そうか。これが、人類の進化というやつか……。人類は、突然服を着始めたり、文字を使い始めたり進化してきたもんな……)

 ヨルドが、感動しながら天を仰いていると、ザドキエルが「どうしたんですか」と聞いてきた。


「俺は、今、人類の進化に感動しているんだ。涙が出てきそうだよ」

「ものすごく失礼ですね!!」


 ザドキエルが、キッとヨルドを睨みつけた。


「ありがとう、ザドキエル。お前って意外といい奴だったんだな」

「一言余計です。ほら、早く行きますよ」


 ザドキエルは、力をなくしているヨルドの腕を自分の肩にまわさせ、ゆっくりと立ち上がった。


「うぐっ……」


 歩き始めると、針で刺されるような激痛が走った。思わず顔を歪めてしまう。ザドキエルは、そんなヨルドに気を遣うように、ゆっくりと歩いて行った。



 ヨルドとザドキエルが寝室に戻ると、泣きながらマシューにまた謝られた。「気にしないで」と言っていると、周囲の人間が女神でも降臨したかのように、ざわざわし始めた。


「フルレティが来るぞ」

「俺たちの女神‼」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼」

「フルレティちゃああああああああああああああああああああああああああああああんんんんんん。会いたかったよおおおおおおおおお!生きる喜び!」


 まるで祭りでも始まるからのようだ。


「フルレティって誰かわかる?」


 ヨルドは、近くにいたスヴェンにそう聞いた。


「ロドリゲスの娘だ」

「げっ」


(ロドリゲスの娘だって!?ロドリゲスに似て、ヤバい奴が登場するんじゃないのか。腕とか折られたら、どうしよう……。あいつの娘がまともに育つわけがない。妖怪みたいなとんでもない女が現れるんじゃないか。どうして、みんなこんなに嬉しそうにしているんだ?)

 ヨルドが恐怖で震えていると、入口の方から「こんばんは」と暖炉みたいに優しく温かい声が響き渡った。

 振り返ると、そこには、1人の小柄な美少女がいた。

 癖のないセミロングのハニーブロンドの髪は、ツヤツヤとしている。オレンジ色のガーネットみたいにキラキラとした瞳は、星屑みたいにきらめいている。肌は、雪のように白く、頬はほんのり桜色に色づいている。顔立ちは、人形のように整っているが、飾り気の少ない薄水色のドレスを着ている。

「うおおおおおおお。フルレティちゃん、今日もかわいいね」

「俺たちの天使いいいいいいいいいいいいい」

「来てくれてありがとうおおおおおおおおおおおおおおおお」


(な、何なんだ、この光景。まるで、雌ゴリラに遭遇した雄ゴリラの大群みたいだ)


 ヨルドは、まじまじとフルレティを見つめる。

 この子がロドリゲスの娘なのか……。予想に反して、天使のような見た目をしているじゃないか……。


 そして、彼女の後ろには、黒髪に黒曜石のような黒い目をした青年が腕組みをしながら、壁に寄りかかっていた。彼は、右目だけ髪の毛が長くて隠されていて、左目は髪の毛が横に流れるような珍しい髪型をしていた。目つきは、鷹のように鋭く、周囲にいる人間を射殺すようにみていた。軽そうな黒い服を着ているが、彼は護衛なのだろうか……。鎧とか着ていなくて大丈夫なのだろうか。壁に寄りかかるなんて、護衛なのにリラックスしたような態度だな。


「大丈夫ですか。こんなに怪我をして痛そうに。今、薬をつけますね」


 フルレティは、ドレスが汚れるのも構わず、鞭打ちされて傷ができている男の前にしゃがみこんだ。


「うううう、ありがとう。俺、今まで生きていてよかった。あなたが、天使に見えます」


 声をかけられた緑の髪の男は、滝のような涙を流し始めた。


「大変!あなたも大けがをしていますね。すぐに手当てをします」


 フルレティは、赤髪の男の傍にも駆け寄った。


「こんなの放っておけば治ります」

「そんなわけにはいきません。感染症にでもなったら、大変です。すぐに消毒して包帯を巻きます」

「ありがとうございます」


 フルレティは、次々と手際よく手当てをしていく。

 そして、ヨルドの近くに来た時、彼の怪我に気がついて、目を丸くした。


「まあ、大変。あなたもひどい怪我だわ。あなたは……初めて見ますね。私は、フルレティです。あなたの名前は、何ですか」

「俺は、ヨルドです」

「ヨルドさんですね。すぐに手当てをします」

「ありがとうございます」


 フルレティは、小さな手を懸命に動かし、冷たい薬を塗り、優しく包帯をまいてくれた。


「ここでの生活は、辛いと思いますが、頑張ってください」


 フルレティは、天使のような笑顔を浮かべた。

(か、かわいい。なんていい子なんだ)


「は、はい」


 思わずヨルドの頬が赤くなってしまった。王族として多くの人に優しくされてきたが、何の打算もなく初対面の人に、ここまで優しくされたのは、初めてのことだった。

 全てのけが人を治療したフルレティは、「おやすみなさい、皆さん」と天使みたいに柔らかくほほ笑んだ後に、去っていった。


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