第22話 リートス
ヨルドが目を開けると、なぜか真っ白の空間にいた。
さっきまで、ハゲントスの部屋にいたはずだ。けれども、一瞬でどこかにトリップしたのだろうか。それとも、力尽きて気絶をしたのだろうか。
白い空間の中央には、茶髪のマッシュルームカットをしている利口そうな少年がいる。年は12歳くらいだろうか。今までこんな少年は、見たことがない気がする。まるでビー玉のように丸い茶色の瞳をしている。その瞳には、輝きが全く感じられなかった。彼は、つまらなそうな顔で、1人でチェスをしている。
俺の存在に気がつくと、「やあ」と、チェスをしていた手をやめて、ゆっくりと近づいてきた。
「君は誰だ?ここは、どこだ?」
「僕は、リートス。君が持っていた剣さ」
リートスは、ニコリともしないで無機質な声で淡々と説明した。
「は?どういう意味だ?」
わけがわからない。俺の剣?
「僕は、もともと魔術師だった。だけど、魂が剣の中に閉じ込められた魔剣になったんだよ」
人間が剣になるのか?魔剣って全部、魔術師からできているのか。
そう考えだして、全身の毛が逆立ちそうなほどゾッとした。
「人間から、剣ができるのか……」
「そうだよ。ただ僕の肉体はもう死んでいるんだ」
「君を人間に戻してやりたいけれど、どうすればいいんだ?」
「戻る方法はない。僕はここで……待っているだけだ」
「何を?」
「あいつが来るのを待っているんだ。それだけだ」
「あいつって誰のことだ?」
「……いずれわかる」
「俺も剣に吸い込まれてしまったのか?どうやったら、もとの世界に帰れる?早く帰らないと……」
「安心して。もうディアネロは死んだ。僕は、いつでも君を戻すことができる。ここは、異空間。現実世界だとここにいる時間は、1秒にも満たない」
「リートスが……俺をここに呼んだのか」
「そう。持ち主と話をしてみたくてね。フィオリとだって話したこともある。彼に頼み事をしたけれど、断られてしまったんだ」
「何を頼んだ?」
「……とある人を殺して欲しいと頼んだ」
「誰だ?」
「時が来たら教えるよ。僕は……あいつに殺されたんだ」
「教えてもらわないと、殺すことができないだろう」
「……長い話になるんだ。いつか話そう。君が真鏡を追うなら、いずれ彼と出会うだろう。そうだ。あいつは、絶対に真鏡を狙うに違いない。残念、そろそろ時間だ」
白い空間が、少しずつ黒く塗りつぶされていく。時間になると、ここから追い出されるということだろうか。もう少しリートスについて知りたいのに……。
「待ってくれ。他に何か知っている情報とかないのか?」
「ああ、そうだ。君がチェルノボグなら、エリュジオンに気をつけた方がいい」
エリュジオン!彼を、完全に信用しているわけではないが、こうやって警告されると恐ろしいものがある。
「彼について何か知っているのか」
「彼の父親は……。あ、残念、もう時間だ」
リートスが何か言いかけた時、白色の空間が歪んでいく。
「リートス!教えてくれ‼」
必死に呼びかけるが返事はない。
そして、気がついたら、青空が見えた。建物を構成していた石が、俺たちを避けるように崩れていき、フォローノは崩壊していった。




